厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
遺言書では、遺言者本人の意思を相続に反映させることができます。その遺言書の内容に従って各種の手続きをするのが「遺言執行者」です。
遺言内容実現のため、執行者には遺産の管理や必要な行為をする権利義務が定められています。
ここまで書くと、相続手続きのほとんどを遺言執行者ができそうに感じるかもしれません。相続手続きの中で一番時間がかかって厄介なのが「相続税の申告」ですが、これも遺言執行者ができるのでしょうか。
遺言執行者を指名する意味
遺言執行者は遺言内容を実現する人です。故人の意思である遺言に従い、各種の手続きをする権限が与えられます。
そのため、「必要範囲内」で相続人および受遺者の代理人として手続きをします。
遺言執行者を選任しておくことで、不動産登記の放置をなくす、他の相続人による財産処分を抑止するといった効果が出ます。
また、相続人が複数人いる場合、書類収集や署名押印などに手間がかかりますが、遺言執行者がいれば「相続人の代表」として動けるので、労力が大幅に軽減されるのです。
なお、遺言執行者は相続人やそれ以外の第三者、例えば被相続人の友人でも良いです。
遺言執行者の欠格事由に当たる「未成年者」もしくは「破産者」でなければ誰を指名しても構いません。
※未成年者は相続開始の時点で成人していれば大丈夫です。
遺言執行者でも相続税申告はできない
さて、本コラムの本題です。
遺言執行者には遺言内容実現のために、必要な範囲内で様々な権限が与えられると書きました。こう書くと、手続きのほとんどができそうですが、遺言執行者であっても相続税申告は他の相続人や受遺者の代理として行うことができません。
この理由としては、相続税申告が「相続人および受遺者の固有の義務」だからです。️執行者であっても、代理として手続きをする権限はないわけです。
相続税の申告期限は「相続開始を知った日(死亡日)の翌日から10ヶ月」となっています。この期限を過ぎれば、1日ごとに延滞税が加算されていくことになります。また、無申告として加算税が課せられる恐れもあります。
よって、遺産を受け取った方がご自身で期限内に手続きをするか、税理士に代行してもらわないといけません。
遺言執行者ができること
遺言執行者が主にできる手続きは、以下の通りです。
- 相続人へ執行者に就任した旨と遺言内容の通知
- 被相続人の戸籍調査による相続人の確定
- 相続財産の調査
- 相続財産目録の作成
- 遺言内容の実現(不動産の登記申請手続き・預貯金の解約・払戻手続き等々)
遺言執行者は遺言内容の実行に関する手続きをします。
そのため、前述した相続税の申告などはできないのです。
なお、以下の手続きは遺言執行者しかできません。
遺言書では非嫡出子の認知もできますが、その手続きをするのは遺言執行者だけです。認知された子供は実子と同様の扱いとなり、相続権を持つことになります。遺言執行者は就任後10日以内に認知届けの提出をします。
相続人の廃除とは、推定相続人の中に遺言者へ虐待・侮辱・著しい非行などをした人がいる場合に、相続人としての権利を剥奪することです。廃除となれば、一切の相続権を失います。
不動産など特定の財産を相続人以外に相続させる特定遺贈の実行は、遺言執行者のみができます。これは民法改正によって決まったルールです。例えば、特定遺贈財産が不動産であれば、執行者が法務局で相続登記をすることになります。
遺言執行者は専門家に任せた方が良いのか
執行者は誰を選んでも構いません。中には税理士などの専門家を執行者にするケースもあります。「執行者をわざわざ専門家に頼むなんて・・・」という方もいますが、専門家を選ぶのにはそれなりのメリットがあるのです。
まず、相続の専門家は経験があるため、執行者の業務をスムーズに進められます。相続は人生で何度もあることではないので、専門家と一般の方ではどうしても経験に差が出てしまいます。
不慣れな手続きには時間がかかるので、他の事項にも影響します。その点、専門家であればスピーディーかつ正確に作業を終えるため、不安もありません。
なお、相続税申告まで依頼したい場合は、税理士に依頼することでスムーズに手続きを進めることができます。(その場合、遺言執行者の業務とは別に税理士として相続税申告書の作成を依頼することになります。)
また、専門家が業務を請負うことで他の相続人に余計な気を使わせることもありません。
相続では遺言執行者に指定されなかった相続人が不満に思い、執行者に選ばれた相続人と確執が生まれることもあるからです。
専門家に頼むことでもちろん報酬はかかってしまいますが、手続きの煩わしさから解放される点や、他の相続人とのトラブルを避ける意味でも、メリットは多いのです。
報酬やサービスは事務所によって異なるので、幾つか相談して良い所を見つけると良いでしょう。
まとめ
遺言執行者であっても相続税申告は他の相続人や受遺者の代理として行うことができません。執行者であってもやれる業務は決まっているので注意が必要です。
遺言の内容を確実に実行してもらいたい場合や、相続で家族間の争いを避けたい場合は、遺言作成時には遺言執行者の選任を検討し、可能なら専門家を選任すると良いでしょう。
費用がかかりますが、専門家に頼むことで、相続手続きが円滑に進みます。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
行政書士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士との強いネットワークを活かして、あなたの相続の悩みをサポートいたします。
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厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
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配偶者や子供だけでなく、孫にも遺産を渡したいと思う方もいるでしょう。配偶者や子供がいる場合、法定相続人の順位を考えると、孫は相続人になれませんが、遺言書等いくつかの方法を使えば、遺産を相続させることは可能です。
ただし、孫が遺産を取得する場合は税金が多めにかかるということを踏まえておかねばなりません。
相続税には「孫や兄弟等に財産を相続させた場合、相続税が2割加算される」という取り決めがあるからです。
孫に相続させる方法
(1)遺言書で受遺者に指定する
法定相続人においては民法の中で優先順位(=相続順位)が定められています。
配偶者は必ず法定相続人になりますが、他の血縁者は以下の順位に従って法定相続人の権利を有することになります。
第2順位…両親(祖父母)
第3順位…兄弟姉妹(甥・姪)
つまり、相続順位を考えると、子供がいる場合、被相続人の孫は法定相続人にはなれず、遺産の取得権もないのです。
このように、相続権のない人に遺産を引き継がせるには、遺言書の作成が有効な手段となります。遺言書の中で受遺者を指定すれば、法定相続人でなくても財産を受け取ることが可能です。
遺言書では、不動産や預貯金などの特定の財産を渡すこと(特定遺贈)や、財産の何割かを渡すこと(包括遺贈)もできます。
ただし、遺言書で遺贈をする場合、他の相続人の遺留分権(法定相続人に最低限保障される遺産取得分)を侵害しないように注意しましょう。
(2)代襲相続
代襲相続とは相続権を持つ相続人が死亡等によって相続権を失っている場合、その相続人の子供が代わりに相続財産を取得する制度です。
相続開始時点で、被相続人の長男がすでに死亡していた場合、財産取得権は長男の子ども(被相続人にとって孫)が承継します。
代襲相続人の法定相続分は、被代襲相続人と同じです。元々の推定相続人が被相続人の妻・長男の二人で長男が亡くなっていたケースで見ると、代襲相続人の長男の子供(被相続人の孫)が受け取る相続財産分は2分の1のままです。
配偶者:1/2
子供 :1/2(代襲相続者も同じ1/2)
代襲相続の要件は本来の相続人が相続権を失っていることであり、「死亡」の他にも、「相続欠格や相続廃除」があった場合にも認められます。
なお、被代襲者になれるのは、被相続人の子供や兄弟姉妹の関係にあたる相続人です。配偶者や父母等の直系尊属が亡くなっていても代襲相続は起こらないのです。
そして、代襲者は被代襲者の子供や孫になります。被代襲者が被相続人の子供なら、代襲相続は何代にも渡って行えます。(ただし、兄弟姉妹が被代襲者の場合、代襲相続は兄弟姉妹の子供である被相続人の甥や姪の1世代までとなります。)
ちなみに相続放棄では代襲相続は起きません。相続放棄をすれば最初から相続権を持たなかったことになるので、代襲相続も生じないのです。相続権は次の順位の方に移ります。
(3)養子縁組
被相続人の子供は法定相続人の第一順位ですので、子供がいる場合は必ず相続人になります。
この時、子供には実子だけでなく養子も含まれます。そのため、養子縁組制度を利用して孫と養子縁組している場合、孫も「被相続人の子供」として相続権を取得します。
法定相続分も実子と同様の割合になります。例えば相続人が実子2人、孫が1人のケースで孫を養子にしていた場合、各相続人の法定相続分は3分の1ずつです。
孫が遺産を取得すると相続税が2割加算される
相続税には2割加算のルールがあります。この制度は、相続における遺産取得者が配偶者や一親等の血族(被相続人の子供・親)以外だった場合、相続税が2割増しになるというものです。
対象者と非対象者は以下の通りとなります。
- 対象者
- 孫・ひ孫
- 兄弟姉妹
- 甥・姪
- 子供の配偶者
- 内縁の夫や妻
- 遺贈によって財産を取得する人(受遺者)
- 非対象者
- 配偶者
- 子供
- 父母
- 養子(孫を養子にした場合を除く)
- 子供が亡くなっている場合の代襲相続人(=被相続人の孫)
- 親が亡くなっている場合の代襲相続人(=被相続人の祖父母)
上記の通り、孫が遺産を受け取る場合には2割加算の対象者です。孫は子供や配偶者などの他の法定相続人と比較して多めに相続税を払わないといけません。
どうしてこのように税負担が変わるのか。その理由は、「相続税額の負担調整」にあります。
相続税は、相続ごとに課税されます。被相続人の子供が遺産を受け取っても相続税はかかりますし、その子供が亡くなって孫が財産を相続した場合も同じです。
それを踏まえると、最初の相続で孫が遺産を取得すると、本来であれば二世代分の相続税がかかるはずのところを、一世代分の課税を免れることになります。(いわゆる、世代飛ばしです。)
税金を公平に負担する意味でも、孫への相続では相続税が多めに課税されるのです。
代襲相続の場合、2割加算にはならない
孫に相続させる場合、それが代襲相続なら2割加算の対象ではありません。
代襲相続は元々の相続人に非行があって相続欠格や相続廃除で相続資格を失った場合にも認められます。このケースで、被相続人の孫が代襲相続をしても2割加算の対象外となります。
養子にした場合の注意点
民法上は養子の数には制限はなく、何人でも養子にして構いません。ですが、相続税法上では、養子を相続人にカウントできる人数は決まっています。
相続税では基礎控除があり控除額は以下のように計算します。
「相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」
つまり、法定相続人の数が多ければ控除額も多くなります。
しかし、それを許すと相続税が大幅に減らせてしまうので、
- 実子がいる場合、養子は1人まで
- 実子がいない場合には養子は2人まで
を相続人にカウントできるというルールがあるのです。
孫がたくさんいるので、全て養子にすれば基礎控除額を無限に増やせる!ということには残念ながらなりません。
まとめ
孫が遺産を相続すると基本的には、代襲相続以外では相続税が2割加算になると覚えておきましょう。
税金を抑えて孫に遺産を渡したいのであれば、生前贈与が有効です。贈与金額を基礎控除額内にすれば非課税での財産贈与ができるからです。
他にも相続での節税を考えるのであれば、税理士に相談してアドバイスをもらいましょう。
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相続財産には現金・預貯金の他、株式や不動産があります。これらは、法定相続人に引き継がれます。しかし、被相続人が借金を抱えていた場合、それらも相続しなければなりません。
借金が高額でプラスの財産よりも多かった、その事実を知らずに相続してしまうと大変です。
よって、相続では故人に借金がないかどうか早急に調べなければなりません。
借金も相続財産となる
亡くなった方に借金がある場合、他の財産と同様に相続人に権利義務が移ります。借金を相続したら、相続人が代わりにお金を返していかなければなりません。
以下のような借金や負債はすべて相続の対象です。
- 消費者金融、クレジットカードやカードローンの負債
- 事業用のローンや融資残
- 個人からの借金
- 滞納している家賃や水道光熱費、通信料、スマホ代
- 滞納している税金 ・連帯保証債務
ただし、以下の負債では、相続人の支払いは免除される可能性があります。
- 住宅ローン…住宅ローンに団信契約が付随している場合、残債を相続人が返済する必要はありません。付随していない場合、相続人が住宅ローンを承継します。
- 奨学金… 日本学生支援機構(JASSO)の奨学金では返済義務のある本人が死亡した場合、返還が免除される制度があります。免除制度がない奨学金では本人が死亡しても、返済は免除されません。
相続では心当たりがなくても、被相続人の負債を洗い出す必要があります。
もしも、借金の額がプラスの財産を上回っていた場合、相続人にとっては大きな負担となるからです。
相続放棄には期限がある
借金の額がプラスの財産を上回っているかどうかについては、早急に調べる必要があります。
というのも、相続については、被相続人の財産を引き継ぐかどうかを決断する期間が決まっているからです。
遺産の引き継ぎについては以下の三つの方法があります。
- 単純承認…通常の相続財産の他に、債務などのマイナス財産も取得する
- 限定承認…プラスの財産の範囲でのみ、マイナスの財産を取得する
- 相続放棄…相続人の権利を放棄し、一切の財産を取得しない(生命保険金など一部の財産はケースによって取得可能)
これらを選択できるのは相続の開始を知った時から3ヶ月以内(熟慮期間内)になります。
被相続人に借金がある場合は法定相続分に従い相続人間で分割されますが、相続放棄を行うことで、これを放棄できます。
しかし、熟慮期間を過ぎると自動的に単純承認が成立します。そういったわけで、財産の調査は早めに終えておかなければならないのです。
なお、被相続人が多方面に債務を抱えており、財産調査が終わらない等、相応の理由がある場合は、熟慮期間を延ばすことも可能です。ただし、延長の申述も熟慮期間内に行う必要があるので、注意しましょう。
また、故人の財産を私的に処分する等、一定の事由があれば、たとえ熟慮期間内であっても単純承認となってしまいます。このような事由を法定単純承認事由といいますが、これも相続では注意すべき点です。
借金などの調査方法
(1)信用情報機関への情報開示請求
消費者金融やクレジットカード、カードローンなどの消費者向けローンについては、信用情報機関へ情報開示請求すれば、正確な内容が把握できます。
信用情報機関は、個人ローンやクレジットの利用履歴を登録している専門機関だからです。
該当者がどこの貸金業者や金融機関からどのくらいの借り入れをしているかを詳細に把握しています。相続人であれば、被相続人の信用情報を取得できます。
日本に信用情報機関は3つあり、それぞれ請求方法は下記の通りです。
- JICC…請求は郵送もしくはアプリ、窓口申請
- CIC…請求は郵送もしくはインターネット、窓口申請
- KSC…請求は郵送もしくはインターネット申請
信用情報の請求手続を行う際には以下の書類を用意しておきましょう。相続関係を証明する戸籍謄本類、被相続人の除籍謄本等は他の手続きでも使うので、早めに入手しましょう。
- 開示請求の申請書
- 相続関係を証明する戸籍謄本類
- 被相続人の除籍謄本や住民票除票
- 相続関係説明図
- 申請者の本人確認書類
(2)自宅内や郵便物を調べる
信用情報機関に加盟していない会社からの借金の場合、自宅内に契約書や借用書、振込証がないか調べましょう。
滞納した場合に自宅へ届いている督促状、内容証明郵便、裁判所からの書類などでも、故人の借金の特定は可能です。
(3)不動産の登記簿謄本の確認
故人が不動産を持っていた場合は登記簿謄本を確認し、不動産に抵当権がついていないか調べましょう。
抵当権などが設定されていた場合には、権利者に連絡の上、債務状況を確認します。
まとめ
単純承認を選択して相続をした場合、故人の財産のありのままを相続することになります。
財産の中に大きな借金があれば、それも含めて取得するので、注意が必要です。
リスクを避けるためには、故人の相続財産について十分に調べて全体像を把握することが重要です。また、単純承認が成立しないように、相続財産の扱いには十分注意してください。
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相続の際に、相続財産評価額に応じて課されるものが「相続税」です。相続税は取得額ごとに各相続人が負担します。
相続税には「基礎控除」という一定の控除額が設定されており、この範囲内の財産であれば、相続税は生じません。しかし、不動産のような高額な遺産がある場合、基礎控除を超える可能性は高くなります。
実際にはおよそ12件のうち1件程度の割合で相続税は発生するようです。
相続税が生じる場合、申告と納付をします。納付は「現金で一括納付」が原則です。
相続税が高くて一括納付が難しい場合、「延納制度」を利用して利子を払いつつ相続税を分割で支払っていくことになります。
しかし、それであっても相続税の支払いができない場合、株式や不動産といったお金以外の財産で納める「物納」が認められます。
ただし、物納で認められるのは非常に限定的なものです。また、手続きも非常に複雑であるため、利用件数はかなり少ないのです。
相続税の物納ができる流れとは
物納を利用するには、流れがあります。
②一括での納付は難しいが、給与や家賃収入があり分割納付なら可能→延納制度の実施
③延納が認められず、物納での一括納付が可能→物納制度の実施
つまり、現金での納付が可能と判断される場合、物納は認められません。物納は相続税を支払うための最終手段なのです。
相続税の納付はあくまで現金による一括納付が原則で、それが難しい場合、「延納制度」を申請します。延納が認められず、物納による一括納付が可能な場合にのみ制度が利用できるのです。
よって、物納ができる要件は以下の通りになります。
- 相続税の納税額が10万円超
- 相続税の支払いができないと判断された
- 定期収入もなく、分割納付もできないため、延納制度が利用できない
- 物納に充てる相続財産があり、相続税を支払える
物納できる財産の順位
物納できる財産は限られています。そして、優先される順位も決まっています。
同一順位の中であれば、物納する財産を納税者の判断で決定できますが、基本は上位のものが納付されることになります。
また、財産は相続で取得したもの、所在が日本国内にあること、所轄税務署の事前許可を得ていることも条件となります。
国が処分するのに適さないとした財産は、申請が却下されてしまいます。現在は基準も厳しくなっており、売れる見込みのないもの、利用価値のないものは国では引き受けないのです。
- 第1順位
①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(社債、株式等の有価証券のうち、金融商品取引所に上場されているもの)
②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
- 第2順位
①非上場株式等
②非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
- 第3順位
動産
物納劣後財産とは、物納に充てられるけれど順位が後れる財産です。
同じ順位の中でも、充てられる順番としては後になるということです。
物納の利用状況は減っている
国税庁データによれば、物納申請状況は20年程前には4,000件を超える利用があったものの、令和2年には65件であり、100件以下にまで利用数は落ちています。
これは審査が厳しくなった点が挙げられます。
また、物納の申請は亡くなられてから10ヶ月以内にしなければならず、申請時点での書類も多いのです。土地で言えば、登記事項証明書、印鑑証明書、地積測量図や境界確認書などの書類が必要です。(地積測量図や境界確認書などは、実際に測量や境界確認をする必要がありますから、場合によっては作成に時間がかかります。)
加えて、物納の許可があった場合には相続税の納期限または納付すべき日から収納の日までの期間について利子税がかかります。また、物納が却下された場合も却下された日までの期間について利子税がかかります。
まとめると、手間がかかる上に利子税も取られるので、デメリットが大きいのです。
自分で売却する場合との比較
物納を利用しない場合、ご自身で不動産を売却して、そのお金で相続税を支払うという選択もあります。
物納と不動産売却にはそれぞれメリットとデメリットがあるので、相続財産に合った方を選ぶべきです。
- 物納のメリット
- 譲渡所得税、不動産会社への仲介手数料がかからない
- 物納のデメリット
- 条件がかなり厳しい
- 事前準備にかなりの手間を要する
- 売買価額ではなく相続税評価額が収納価額となってしまう(儲けが少ない)
- 利子税がかかる
- 不動産売却のメリット
- 物納ほど手間がかからない
- 不動産の売却価額は相続税評価額よりも高くなるケースが多く、お金が手元に残りやすい
- 利子税がかからない
- 不動産売却のデメリット
- 譲渡所得税、不動産会社への仲介手数料がかかる
- 買い手が見つかるまで長い時間がかかる場合もある
まとめ
コラム内で説明した通り、物納できる財産の基準は現在では明確化されており、審査も厳しくなったことから、物納の申請件数はかなり減りました。
申請手続きも大変なので、安易な利用はやめるべきです。手続きが長期化すれば、利子税も加算されていくので、税負担が大きくなってしまいます。
相続手続きにおける難しい判断は必ず税理士へ相談してください。
ご自身やご家族の状況を正しく把握して、適切なアドバイスが送れるからです。相続で多大な損害を被らないためにも是非専門家を頼ってください。
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相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
古い空き家は倒壊などのリスクがあるため、放っておくと危険です。
実は、相続や遺贈によって取得した空き家を売却する際に、条件を満たすことで譲渡所得から最大で3000万円の控除を受けられる制度があります。
ただし、この空き家特例は耐震性能や売却金額などの細かい適用要件がたくさんあります。
空き家を放置するリスク
空き家を放っておくと以下のようなリスクが出てきます。
- 建物劣化リスク
- 犯罪トラブル
- 景観悪化
- 損害賠償
住んでいる人がいなければ、定期的な管理がされないので傷みやすく、不動産価値を損ねてしまいます。また、建物が傷んだり、土地内の草木の手入れがされないままだと、周辺景観を悪化させることにも繋がります。
また、人が住んでいないことで、不法侵入や不法滞在が起こり、犯罪を誘発する可能性も出てきます。
一番怖いのは、建物劣化によって家屋が倒壊することです。倒壊によって、近隣の住宅に被害が出て損害賠償責任を負うこともあります。
このように様々なリスクがあるので、住む予定の無い空き家については
- 売却
- 取り壊しの後土地のみを売却
- 賃貸などで再活用
といった方法を取る方がお勧めです。
もし、売却を考えるのであれば、これから説明する空き家特例の活用も考えましょう。
空き家特例とは
空き家特例とは、相続もしくは遺贈によって取得した被相続人が居住していた空き家やその土地を一定期間内に売却すると、譲渡所得額から最高3000万円を控除できる制度です。(正式には被相続人の居住用財産(空き家)にかかる譲渡所得の特別控除の特例と言います。)
控除額が3,000万円と節税効果が高いですが、空き家の要件、売却時の状況要件等が細かく決められています。
譲渡所得額は以下の計算式で算出します。
- 取得費…不動産購入費用、手数料、その後支払った改良費の合計額。
- 譲渡費用…不動産売却で支出した費用。仲介手数料や測量費等。
もし、不動産の取得費が不明な場合、譲渡価額の5%を概算取得費としても大丈夫です。
空き家特例の要件
(1)家屋の要件
- 相続開始前に被相続人が一人で暮らしていた自宅
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた区分所有建築物以外の建物
- 相続時から売却時まで、事業、貸付、居住の用に供されていないこと(ずっと空き家だった)
- 対象の家屋は相続や遺贈によって取得された
空き家特例は名前の通り空き家になった相続不動産の売却を促す特例です。そのため、適用できるのは、亡くなった人が一人で暮らしていた自宅のみとなります。
ただし、「被相続人が介護保険法に規定する要介護・要支援認定を受け老人ホーム等に入所し、かつ、相続開始直前まで老人ホーム等に入所していた。」、「老人ホーム等への入所時から相続開始直前まで、その家屋について、被相続人による一定の使用がなされ、かつ、事業、貸付、被相続人以外の居住の用に供されていたことがないこと。」に該当すれば、被相続人が相続開始の直前に居住していたものとして認められます。
また、不動産は1981(昭和56)年5月31日以前に建てられたものに限られます。これは旧耐震基準で建築された危険な空き家を減らしたいからです。なお、不動産はそのまま売却しても、特例適用になりません。耐震補強もしくは更地にして売却します。
(2)譲渡する際の要件
- 譲渡対価額の合計が1億円以下
- 耐震リフォーム済もしくは建物を取り壊した状態で売却する
- 相続開始から3年を経過した年の12月31日までに売った
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など、ほかの特例の適用を受けていない
- 売却先は子供や配偶者以外の第三者であること
空き家特例が適用できるのは売却金額が1億円を超えない物件のみです。売却が複数回の場合や複数の相続人で売る場合、各売却金額の合算で判定します。
特例適用には前述したように耐震リフォームをするか、空き家を取り壊して更地にした状態で売らなければなりません。ただし、2023年度税制改正によって、譲渡時から譲渡した年の翌年2月15日までに取壊しが完了した、あるいは耐震基準に適合することが証明された場合、特例は適用可能となります。要するに譲渡後でも耐震リフォームや更地にしても良くなったのです。
なお、対象の土地家屋を取得した相続人が3人以上の場合、特別控除額は2,000万円に減額となります。
まとめ
空き家特例は最大3,000万円の特別控除が設定されていますので、譲渡所得税の大幅な節税が可能です。空き家の活用に困っている場合、特例を利用できそうか確認してみましょう。
特例を利用した場合、確定申告時に必要な添付書類の種類と数が多いので、書類準備はしっかりとしておきましょう。不安な場合は、税理士に申告を代行してもらうと良いでしょう。
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相続は遺族が上手く連携できれば、手続きも進みやすくなります。
しかし、相続人同士の仲が悪いケースもあるでしょう。兄弟間の仲が悪い場合もあれば、親と子供の関係が拗れている場合もあります。
このような場合は、遺産分割が中々完了しません。また、相続税申告にも影響を与えます。今回は「相続人同士が不仲の際に起こるリスク」について説明いたします。
遺産分割が進まない
相続人同士の仲が悪いからといって、特定の相続人を除外しての遺産分割協議はできません。相続人全員の合意のない協議結果は無効になるからです。かといって仲の悪い者同士だと、遺産分割が成立しない可能性もあります。これが大きな問題点です。
遺産分割は成立しなければ、財産も相続人全員での共同所有状態となります。不動産は故人名義のままの状態となり、自由に売却したり建て替えたりもできません。
また、相続税の申告・納付期限は、相続開始を知ってから(多くの場合、被相続人が亡くなった日)から10ヶ月以内です。この期限を過ぎるとペナルティとして、追加の税金が課せられてしまいます。(無申告加算税や延滞税など。)
相続税の申告・納付期限は一部の例外を除いて、延長されません。相続人同士の仲が悪くて遺産分割協議が完了していなくても、申告と納付だけは期限内に済まさなければなりません。
遺産の分割協議が完了していない場合、とりあえず「法定相続分に従って相続をした」と仮定して税額計算をします。あくまで遺産は相続人全員で共有しているという前提です。
仮の申告と納税をしておいて、後日に正式な遺産分割が完了した時に改めて申告をします。
一旦、申告と納付をしておけば、加算税および延滞税を払うことは免れます。ただし、一部の控除制度が使えないので、大抵のケースでは本来の税額よりも高い金額で申告と納税をします。
そのため、一旦の相続税を払うだけの資力が必要になります。また、一部の控除制度は遺産分割が終わっていないために適用できません。
- 相続税の配偶者控除…被相続人の配偶者が取得する財産は最大1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分まで非課税にできる
- 小規模宅地等の特例…自宅や貸付用として利用している土地については相続税評価額を最大80%まで減額できる
これらの制度は税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」提出していれば、後日、遺産分割協議がまとまった際に申告書を再提出することで、適用可能となります。
申告期限後3年以内に遺産分割が完了しないなら、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月が経つ前に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。
相続税の申告が連名でできない
相続税の申告をする際、通常なら相続人が共同の申告書を作成して申告します。
しかし、仲が悪い等、さまざまな事情によって共同の申告書を提出することが難しい場合もあります。
申告書は相続人ごとで個別に作成して提出しても構いません。しかし、個別に申告することによりいくつかの問題も出てきます。
一つ目の問題としては税務調査に入られる可能性が高くなること。
相続税は被相続人の財産総額を元に計算されます。まず預貯金や不動産・債務がいくらあるかを把握し、その財産金額を元に計算された税額を、各相続人が受け取った財産の割合で負担する、という流れになります。
つまり、各相続人がそれぞれ遺産の種類を独自に把握し、財産評価をして、申告書を作成するとなると、内容の異なる複数の申告書が税務署に届く可能性が高くなります。
申告書は計算する人の解釈によって財産の評価額も変わるため、納税額にも違いが出てしまうからです。1つの相続で、内容の異なる複数の申告書が税務署に届いてしまえば、税務署としては申告書の精査のために税務調査をする可能性が高くなります。
税務調査が入った場合、相続税を多めに申告・納付していた場合は問題ありません。税金の払いすぎは更正の請求によって返還してもらえば良いからです。
一方で、申告漏れや納税額の間違いが発見され、相続税が不足していた場合は、過少申告加算税や延滞税が課税されてしまいます。
また相続人それぞれが別々に申告書を作成する場合、税理士を雇う可能性もあります。それぞれが別々に税理士へ依頼していると、当然税理士報酬も余分にかかってしまいます。
他の相続人へ連絡が取れない場合
仲が悪い相続人への連絡先がわからないというケースでは、遺産相続手続きが止まってしまいます。
そのため、連絡先がわからない相続人については、不在者財産管理人を立てた上で「遺産分割協議への同意」を裁判所に認めてもらえば、遺産相続手続きを進められます。
不在者財産管理人は、連絡が取れず行方不明になっている相続人の代わりに、財産を管理する代理人です。
配偶者や相続人など利害関係者からの申し立てにより、家庭裁判所が不在者財産管理人を選任します。
選ばれた不在者財産管理人が遺産分割協議に参加すれば、遺産分割を進めることができるようになります。
まとめ
相続人同士の仲が悪い場合では、話し合いが困難になる可能性が高いです。そうなれば、手続きも停滞してしまいます。
相続人同士の話し合いが困難な場合、弁護士に依頼してすすめる方法がありますが、被相続人が存命のうちに関係性に気づいているなら、遺言書を用意しておきましょう。
遺言書があれば、遺産分割協議をする必要がないからです。相続手続きをスムーズにするためにも作成をお勧めいたします。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
行政書士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士との強いネットワークを活かして、あなたの相続の悩みをサポートいたします。
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厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
各金融機関は口座の名義人が死亡した事実を把握すると、その口座を凍結します。凍結解除の手続きをしなければ、預金をおろせません。
相続では、葬儀費用や相続税など、高額の支払いが数回あります。手元にまとまったお金がない場合は、後々困ることになります。
このような事態に対処するため、民法では2019年に「預貯金の仮払い制度」が作られました。同制度を利用すれば、凍結解除の手続きをしなくても、遺族がお金を引き出すことができます。
ただし、お金をおろして使用することは財産の処分に該当します。もし、後々に相続放棄をしたいと思っても、財産を処理してしまうと「相続財産を引き継ぐ選択をした」となり、手続きが不可能になります。
どうして銀行の口座は凍結されるのか
金融機関は名義人の死亡を確認した時にその口座を凍結します。金融機関は以下の方法によって、名義人の死亡を把握します。
- 相続人等からの連絡があった場合
- 残高証明書の取得申請があった時
- 新聞等のお悔やみ欄
- 葬儀の看板
上記は金融機関が名義人の死亡を知る方法の一例ですが、最も多いのは、名義人の家族や関係者からの連絡です。名義人が経営者の場合は、会社や取引先からの連絡で死亡を把握するケースもあります。
金融機関側は曖昧な情報では動きません。誤った情報で口座凍結をしてしまうと、利用者やその関係者に重大な損失を与えるからです。
では、どうして凍結するのか。金融機関が口座を凍結するのは、「相続対象である財産を守る」ことと「相続でのトラブルを避ける」といった理由からです。
相続では、遺産分割や相続税申告があるので、それらのために相続人は正確な財産を把握しなければなりません。預貯金が他の相続人等に自由におろせる状態だと、金額が変動してしまいます。
被相続人死亡時点での預金残高を確定するためにも口座凍結が必要なのです。凍結されれば、被相続人の口座の暗証番号を知っている家族でも、勝手に引き出せません。
観点を変えれば、これは相続財産を守ることとも言えます。
また、勝手に引き出せなければ、相続人間でのトラブルも起こらないでしょう。銀行の立場からすれば、安易に預貯金が引き出されてしまうと、他の相続人から抗議を受け、相続争いに巻き込まれかねません。
仮払い制度とは
故人の口座は相続財産確定とトラブル防止の目的で金融機関側が凍結します。
凍結した口座からは、出金および振込や引き落としができなくなります。この時、生活資金を被相続人の口座に一括でまとめていた場合、相続開始後の遺族の生活に影響が出る可能性もあります。
そのため、現行法では「預貯金の仮払い制度」があります。これは、遺産分割が完了していなくても、法定相続人であれば一定の金額を引き出せる制度です。
引き出せるのは、以下の二項目の低い金額までです。
- 被相続人死亡時の預貯金残高×法定相続分×3分の1まで
- 150万円まで
この上限額は金融機関単位であるため、他の金融機関にも口座がある場合は、出金可能な金額は増えます。
手続き上、必要となる書類は金融機関ごとに変わりますが、以下の書類がおおよそ必須となります。手続きをするのであれば、必ず事前確認をしましょう。
- 被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本もしくは法定相続情報一覧図
- 相続人の身分証明書、印鑑証明書
- 引き出しの申請書
仮払い制度と単純承認の成立
単純承認とは、相続財産の引き継ぎ方法のうちの一つで、「相続人が被相続人の財産をプラスもマイナスも含めて全て引き継ぐこと」です。
他の引き継ぎ方法には、「マイナスの財産の範囲でプラスの財産を引き継ぐ」という限定承認、「相続財産を一切引き継がない」相続放棄があります。
限定承認や相続放棄は期間内(熟慮期間)に手続きをしないと成立しませんが、単純承認については期間内に手続きをしないと自動的に選択したことになります。
また、「財産の処分」をすると同様に単純承認を選んだことになります。
財産の処分とは以下の行為です。
- 被相続人の預貯金を引き出して自己に必要な支払いに使った
- 被相続人を受取人とする生命保険金の解約返戻金を受け取った
- 相続不動産を売却した
つまり、仮払い制度を使って自分のためにお金を使ってしまうと単純承認が成立し、相続放棄などができなくなります。もし、被相続人の財産に借金が多い場合だと取り返しがつきません。
被相続人の口座から預金をおろすこと自体が、単純承認に直結するわけではありませんが、「引き出したお金を自身のために使う」「一般的とは言えない派手な葬儀の費用に充てた」などの場合、単純承認とみなされてしまいます。
よって、財産調査などが済んでいない場合、安易に仮払い制度を利用することはやめた方が良いでしょう。利用するのであれば、葬儀費用のみに使用し、領収書もきちんと保管しましょう。
当面の資金需要に対応するために、預貯金の仮払い制度を利用した結果、被相続人の多額の借金を背負うことになったということがないよう、十分注意してください。
仮払い制度を利用できない場合
仮払い制度を利用できない場合もあります。
当該の預貯金が、遺言書にて特定の相続人に渡すことになっている場合、当該口座からの仮払いはできません。
もし、遺言に「銀行の預金は全て長男に相続させる」と書いてあるのに、次男が当該口座から仮払いをした場合、長男に仮払いした分を返還しなければなりません。
まとめ
預貯金の仮払い制度は葬儀費用など、相続においてまとまったお金が必要な場合に利用しましょう。
自己のために利用する場合、単純承認が成立しますので、できれば前もって財産調査をしておきましょう。
なお、仮払い制度を利用したいけど方法がわからない、口座凍結の手続きがしたいと考えている方は、是非専門の税理士のサポートを受けてください。
専門家に任せる方が手続きはスムーズに進みます。
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遺言書では遺言内容を執行してくれる人=「遺言執行者」を指定することができます。執行者は相続開始時点で未成年者や破産者でなければ誰を指定しても構いません。
遺言者の家族や親族でも良いですし、友人や税理士等でも問題ありません。
しかし、執行者の業務は多岐に渡り、専門知識を要します。
よって、人によっては「忙しくて執行業務をする時間が取れない」場合や「手続きの方法がわからない」等々の問題が起きる可能性があります。そういった観点から、あまりやりたくないと思う方も多いのです。
実を言うと、遺言執行者に選ばれたからといって、必ず就任しなければならないわけでもありません。つまり、就任は個人の意思で自由に辞退できます。辞退したからといって、罰則があるわけでもないので、安心してください。
ただし、一度執行者に就任してしまうと、辞めることが難しくなります。
遺言執行者とは
遺言執行者は遺言内容を執行する方です。故人の意思である遺言に従い、各種の手続きをする権限が与えられます。そのため、必要な範囲内で相続人や受遺者の代理人として動けるのです。
遺言書は作成者の死亡後に効力を持ちますが、遺言者は相続に直接参加できないので、その内容が本当に実現されるか心配になるでしょう。
自分の意思通りに相続財産の分割がされるかどうかわかりません。また、遺言で隠し子の認知をする場合だと、届け出をする必要がありますし、相続人以外への財産の遺贈や、不動産の相続登記などもあります。
これらの事項が正しく手続きされるために、遺言執行者がいるのです。遺言執行者は遺言内容を実現するための権限を持つので、不動産登記の放置や、他の相続人の財産処分も抑止できます。
なお、相続人が複数の場合は、書類の収集や署名押印などに手間がかかりますが、遺言執行者は「相続人の代表」として手続き可能なため、それらの労力が軽減されるのです。
執行者の業務とは
遺言執行者は相続開始後の就任承諾をした後に、以下の業務をします。
- 相続関係者へ執行者就任の事実を通知する
- 相続人確認のために戸籍等の証明書を収集する
- 相続財産の調査
- 財産目録作成・交付
- 法務局に対して登記申請手続きをする
- 各金融機関に対する解約手続きをする
- 株式等の名義変更手続きや換価手続きを行う
遺言執行者は相続の関係者に対して報告義務があります。法定相続人や受遺者が必要とすれば、執行業務の進捗状況を各人に伝えなくてはなりません。
また、本来、他の相続人や受遺者に渡すべき遺産を使った場合はその日以後の利息を支払うこと、もしくは損害が発生した場合は賠償をする補償義務もあります。
なお、手続きに必要な交通費、郵送料金、移転登記費用などの実費は相続人全員が負担するべき費用です。実費としてかかったお金は全て領収書を残しておき、後に請求しましょう。
遺言執行者の辞退は自由にできる
もし、遺言書の中で遺言執行者に指定されていても、自由に辞めることができます。
指定されていても、就任は強制ではありません。指定された人が承諾しないのであれば、執行者にはなりません。
そして、就任はご自身の都合で辞退できます。「忙しい」、「手続きができるか不安」といった理由で辞退しても問題ありません。ペナルティもありません。
もし、執行者を辞退する場合は相続関係者に書面で伝えましょう。口頭や電話で伝えると、後々に「言った・言わない」でトラブルとなる可能性があります。
遺言執行者に一度就任してしまった場合
執行者就任前の「辞退」は簡単です。理由についても、なんでも良いです。
しかし、一度就任を承諾してしまうと、辞めることが難しくなります。就任した後に辞めることは「辞任」と言いますが、辞任は簡単には成立しません。
辞任となると正当な事由が必要となり、可否判断も家庭裁判所に委ねられるからです。
ここで言う「正当な事由」とは、「病気」「怪我」「長期の出張」等々があります。これらの理由であれば、家庭裁判所の許可をもらうことで辞任が成立します。
辞任と辞退ではハードルが全く異なります。「執行者の業務が面倒なことに後から気づいた」等の理由では辞任ができないのです。
そのため、執行者に指定されていた場合、就任前に引き受けるかどうか慎重に検討するべきでしょう。無理だと判断したら、他の相続人に代わってもらうようにお願いした方が良いでしょう。
なお、相続人は執行者就任予定の方に、就任するかどうかの催告ができます。
これは執行者に指定されている人がいつまで経っても承諾の意思を示さない場合、相続手続きに遅れが生じてしまうからです。
相続人や利害関係人(受遺者等)は、遺言執行者に就任するかどうかを聞きます。もし、期間内に回答がない場合は、就職を承諾したものとみなします。
遺言執行者の業務は他の人に委任可能
遺言執行者を辞任することは困難ですが、職務を第三者に委任することは問題ありません。現行法では特別な事由がなくても委任できるようになりました。
業務の全部を委任しても良いですし、一部だけでも構いません。
他の相続人から同意を得なくても大丈夫です。
就任後に業務が難しいと感じたら、他の相続人や専門の税理士に業務のサポートをお願いしましょう。
まとめ
遺言書で遺言執行者に指定されている場合、就任前に辞退するのと就任後に辞任するのとでは、大分違います。
就任後の辞任では、正当な理由をもって家庭裁判所の許可が必要です。
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厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続では、しばしば認知症のリスクなどについて語られることがあるかと思います。
現代では、65歳以上の高齢者のうち認知症および予備軍の数は全体のおよそ1/4を占めるというデータもあります。認知症になってしまうと日常生活が困難になることはもちろん、法的な手続きについても様々な問題が出てきます。
というのも、法的な手続きについては、意思能力がない方だと法律行為の効力要件を満たさないからです。
そういった点から考えると、相続における遺産分割協議や相続放棄等の手続きにも認知症は大きな影響を及ぼします。
相続人が認知症の場合もある
相続では被相続人の方が認知症を患っていたというケースがよくあります。しかし、残された遺族である相続人のうちの誰かが認知症であるパターンもあります。
例えば、被相続人の配偶者。
被相続人が高齢の場合、その配偶者も高齢であることが多いので、認知症の可能性も高くなります。
また、認知症は、40歳から64歳の初老期段階で発症するパターンもあるので、年齢がある程度離れていても認知症になっていることもありえます。それを考慮すると、被相続人の子供であっても、認知症の場合があります。
相続人が認知症や精神疾患等で判断能力に問題がある場合、遺産分割協議書に署名捺印しても、法的には無効とされてしまいます。
ただし、「軽度」にあたる認知症患者の中には、判断能力がある程度しっかりした人もたくさんいるため、認知症=遺産分割協議に参加できないというわけではないので注意しましょう。
相続人が認知症だった場合の問題点
(1)遺産分割協議ができない
遺言が残されている場合、相続財産の分割は遺言内容に従って進めることになります。しかし、遺言書がなく、相続人が数名いる場合、遺産の分割は相続人間の話し合いで決めることになります。
遺産分割協議を完了させるには相続人全員が協議内容に合意しなければなりません。合意がなければ、法律上の効力がありません。一部の相続人が参加していない場合も協議内容は無効となります。
そして、相続人の誰かが重度の認知症等で判断能力が著しく低下していると見られる場合も、同様です。前述したように判断能力のない状態では法的な手続きができず、遺産分割協議での合意が無効となるからです。
遺産分割協議ができずにいると、預貯金の凍結解除ができません。また、被相続人名義の不動産も変えることができません。
これらの手続きには遺産分割協議の完了が条件となっているため、認知症の相続人がいれば手続きはストップしてしまいます。
(2)代筆は罪に問われる可能性も
被相続人の配偶者が重度の認知症だった場合、その子供が代わりに遺産分割協議書への署名をすれば良いのでは?と思う方もいるかもしれませんが、これはできません。
たとえ、家族であっても代理権を有していない場合、勝手に署名をすると、私文書偽造罪に問われる可能性があるからです。
(3)判断能力が欠けた相続人は相続放棄できない
重度の認知症の方は法律行為ができなくなるので、相続放棄も自分ではできません。
他の相続人が代理で申し立てをしようとしても、家庭裁判所が受理しないのです。
法的手続きをするには成年後見制度の利用が必要
認知症患者で重度の方は、判断能力が低下しているため、自らの意思で遺産分割協議に参加することも、相続放棄をすることもできません。
それらの手続きを進めるには成年後見制度の利用が必須です。
成年後見制度とは、認知症などで自身の財産管理が困難な方に代わり、後見人が財産管理や重要な契約などを行います。
同制度を利用すると、遺産分割協議では、本人の代理人として後見人が参加して、協議を進めます。相続放棄についても、後見人が手続きをします。
成年後見制度の問題点
(1)家族が後見人になれるわけではない
成年後見人が誰になるかは裁判所の判断に委ねられます。よって、家族を成年後見人候補者として希望したとしても、第三者の専門家が選任される可能性も大いにあります。
実際のところ、現在の家庭裁判所での運用では、親族よりも専門職(司法書士や弁護士等)を後見人とする傾向が強いです。
一度選任された後見人の変更は余程の理由がない限り認められていません。家族は裁判所から選任された後見人と長く付き合っていくことになります。
なお、家族が後見人になれたとしても、遺産分割には参加できません。これは、後見人が相続人である場合、遺産分割の場では被成年後見人と利益相反関係になるという理由からです。
そのため、遺産分割協議の場では再び家庭裁判所に申し立てをして、特別代理人を選任しなければなりません。
(2)成年後見人に対する報酬を支払う必要がある
成年後見人は裁判所が決めるので、外部の専門家が選任された場合には、報酬を払う必要があります。
これは一生涯続くので、今後収入が増える見込みがなく、貯金から医療費や生活費が毎月目減りしてしまうご高齢の相続人にとっては重い負担にもなるでしょう。
まとめ
相続人に認知症の方がいる場合は、成年後見制度を利用すれば、遺産分割協議ができます。しかし、成年後見制度は色々と家族にも負担がかかるものであり、問題も多いと言えます。
そのため、前もって遺言を用意しておくことが相続手続きをスムーズにする方法だと言えます。
遺言があれば、遺産分割協議をしなくて良いので、ご家族に認知症の方がいても問題ありません。口座凍結の解除や不動産名義変更も進めやすくなりますので、作成しておいた方が良いのです。
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遺言書は死後に遺族に発見されてこそ効力が出ます。また、相続人が遺言書に沿って諸々の手続きをスムーズにできるように、相続開始後速やかに遺言書が遺族の手に渡るようにしておく必要があります。
実は法務局が実施する「自筆証書遺言保管制度」では、遺言者が亡くなった後に指定の遺族に通知がされるシステムがあります。
この通知制度は、公正証書遺言にはありません。よって、自筆証書遺言保管制度の大きなメリットといえる部分なのです。
自筆証書遺言の保管制度とは
自筆証書遺言の保管制度は法務局管轄の遺言保管所で遺言書の原本を預かってもらう制度です。2020年7月10日より実施されています。
原本は保管所にて管理されるので、紛失することはありませんし、第三者によって内容を改ざんされる怖れもありません。
また、遺言の預かりの手続き時に保管所担当官が形式の確認をしてくれるため、自筆証書遺言の大きなデメリットだった形式不備の心配もなくすことができます。
「署名や押印がされてない」「日付が書いていない」といったことで、遺言書が無効になることがありません。
制度利用のメリットと注意点
保管制度のメリットと注意点は以下の通り。
(1)メリット
- 紛失や改ざんのリスク回避
- 担当者が不備を確認してくれる
- 閲覧が容易である
- 検認が不要となる
法務局には遺言書の原本が保管されるので、紛失はもちろん第三者による改ざんの心配がなくなります。
また、手続きの過程で遺言書が方式に従って作成されているかどうかを担当者が確認してくれるので、形式不備による無効のリスクも回避できます。
なお、法務局で預かってもらう場合、通常の自筆証書遺言とは違ったルールが出てきますので注意しましょう。具体的には以下の項目があります。
- 遺言を書く紙はA4用紙を用いること
- ページ番号をつける
- 記載は片面のみ
- 上は5ミリ以上、下10ミリ以上、左は20ミリ以上、右は5ミリ以上の余白を設ける
- 記入はボールペン・万年筆等の消えにくいものを用いる
- ホッチキスでとじないこと
遺言書は死亡後に相続人が自由に閲覧可能で、写しの交付を請求することもできます。もし、相続人の誰かが遺言書情報証明書の交付を請求、原本の閲覧等した場合は、ほかの相続人にも遺言書保管の事実が通知されます。
そして、保管制度を利用すると、裁判所での検認手続きも不要になります。通常の自筆証書遺言だと必要なので、その手続きが減る分、遺族にとっては大きなメリットと言えるでしょう。
(2)注意点
- 遺言書1通につき申請手数料3,900円が必要
- 代理申請は不可
- 申請のために遺言書保管所に出向く必要がある
- 内容まではチェックされない
申請はただではありません。手数料がかかります。(公正証書遺言が概ね2万~5万円程度と考えると、それよりは安いですが。)
保管制度を利用する場合、遺言者本人が申請しなければなりません。
出張サービスなどはしておらず、体の不自由な方でも窓口まで行かなくてはなりません。
管轄の法務局は以下の3つなので、事前に予約をしましょう。
- 遺言者の住所地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者の本籍地を管轄する遺言書保管所
- 遺言者が所有する不動産の所在地を管轄する遺言書保管所
そして、内容については自己責任です。記載内容が特定の相続人の遺留分を侵害しているか、不動産情報がきちんと書かれているかは確認されません。
遺言書が有効かどうか不安な場合は、事前に専門家の確認を受けておいた方が良いでしょう。
遺言保管制度の通知システム
保管制度では、「死亡時通知」のシステムが利用可能です。これは、遺言者が死亡した際に推定相続人など遺言者が指定した任意の方へ「遺言書が法務局にあること」を通知してもらえる制度です。
法務局は戸籍の担当部署と連携しているため、遺言者の死亡事実が戸籍に反映されれば通知が送られるようになっています。通知相手は推定相続人の他、受遺者や遺言執行者でも構いません。
従来は1名までの指定でしたが、令和5年10月から3名になりました。
関係者が遺言書を閲覧すると他の関係者にも通知される
遺言書保管所に保管されている遺言書は、遺言者が亡くなった時に、相続人や受遺者・遺言執行者等が閲覧可能となります。
この時、遺言書の閲覧もしくは遺言書情報証明書の交付を受けると、他の関係者に対して、法務局から遺言書が保管されていることが通知されます。
これによって、他の関係相続人等への連絡が円滑になります。ただし、関係者の誰かが閲覧しない限り、この通知は実施されません。
先に述べた遺言者指定自動通知システムで通知を受け取った方が速やかに遺言書の閲覧をしにいくと、その後の連絡がスムーズです。
まとめ
通知制度のおかげで、遺言者の死亡後にすぐに遺言内容が遺族に渡るようになりました。
もし、遺族の方で法務局からの通知を受領した場合には最寄りの遺言保管所において、すぐに確認しましょう。
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