厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
夏のお盆休みは、実家に帰省して久しぶりにご家族やご親族と顔を合わせる方も多いのではないでしょうか。親の元気な顔を見て安心する一方で、「実家はこの先どうなるのだろう」「もしもの時、相続の手続きはどうすればいいのか」と悩む方も多いかもしれません。
「相続の話はお金のことだし、親の前では縁起が悪いから」と思われがちですが、実はそうではありません。いざという時に慌てないために知っておくことが大切です。家族が顔を揃えるお盆休みこそ、将来のトラブル(争族)を防ぐための第一歩を踏み出す絶好の機会と言えます。
今回は、お盆に家族が集まるタイミングで「実家のこれから」や「相続」について話し合うべき3つの理由と、スムーズな切り出し方について解説いたします。
理由1:親の財産状況や希望を「元気なうちに」確認できる
まず大前提として、相続対策は親御さんの判断能力がしっかりしている「元気なうち」に行うことが何よりも重要です。
「うちには預貯金が少しと実家しかないから、相続税なんて関係ない」と思われる方も多いのですが、ここに落とし穴があります。厚木市や海老名市などにお住まいの場合、ごく一般的な家庭であっても、土地の評価額が思った以上に高く、気づかないうちに相続税の対象となっているケースも珍しくありません。
親御さんがどのような財産(預貯金、有価証券、不動産など)を、どこに、どれくらい所有しているのか。そして、それを「誰にどう引き継いでほしいのか」という本人の希望を確認できるのは、元気な今だけです。もし認知症を発症してしまうと、遺言書の作成や生前贈与といった対策が一切できなくなるというリスクがあります。
【参考】
遺言書とエンディングノート、何が違う? 上手な使い分けとは
https://stepup-souzoku.com/2026/05/01/jihuuuvioi980yhyg/
理由2:「実家をどうするか」の方向性を共有し、将来のトラブル(争族)を防ぐ
親が亡くなり、実家をどう分けるか悩むケースは非常に多いものです。親御さんとしては「長男に実家を継いでほしい」と思っていても、当の長男は「すでに自分の家があるから住めない」と考えているかもしれません。
相続が発生した後、遺産を分けるための話し合いを「遺産分割協議」と呼びます。この協議は法定相続人全員が合意しなければなりませんが、事前になんの話し合いもしていないと、誰が実家を相続するのか、残った現金をどう分けるかで意見が対立し、トラブルに発展してしまう怖れがあります。
- 実家に誰か住む予定があるのか
- 誰も住まないなら、売却して現金で分けるのか
- お墓や仏壇(祭祀財産)は誰が守っていくのか
こういった方向性を事前に家族全員で共有しておくだけで、相続発生後の手続きが格段にスムーズになります。
理由3:もしもの時の「口座凍結」や「手続き」に慌てないための準備ができる
金融機関は、口座名義人が亡くなった事実を知ると、遺産の使い込み等のトラブルを防ぐために口座を凍結します。口座が凍結されると、預金の引き出しはもちろん、公共料金などの引き落としもできなくなります。「親の葬儀代や入院費の支払いが、親の口座から下ろせない!」と慌ててしまうご家族は非常に多いのです。
【参考】
家族が亡くなる前に銀行口座からお金を引き出すのはNG?相続トラブルを防ぐ正しい対処法
https://stepup-souzoku.com/2026/04/03/jiowoedcma/
もちろん「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、遺産分割協議の前でも一定額までは引き出すことが可能ですが、手続きには戸籍謄本などの書類が必要で手間がかかります。いざという時に困らないよう、当面の生活費や葬儀代程度の現金は引き出しやすい状態にしておくか、どこの銀行に口座があるのか、通帳や印鑑の保管場所を家族に伝えておくことが大切です。
とはいえ切り出しにくい…話し合いのきっかけを作る上手な方法
「相続について話し合うべきなのは分かったけれど、自分からは切り出しにくい…」と悩む方も多いのではないでしょうか。親御さんに向かって「財産はどれくらいあるの?」と直接聞くのは、相手を警戒させてしまうためお勧めいたしません。
スムーズに話し合いを始めるための、いくつかのきっかけをご紹介します。
- 最近のニュースやテレビ番組を話題にする
「最近、相続登記が義務化されたってテレビで見たんだけど、うちの実家の名義ってどうなってる?」といったように、世間のニュースをフックにするのが自然です。 - 自分の「終活」の話として切り出す
「自分も年齢的に、そろそろエンディングノートを書いてみようと思うんだけど、お父さんたちはどうしてる?」と、自分ごととして相談を持ちかけると、親御さんも心を開きやすくなります。 - 実家の片付け(生前整理)を一緒に手伝う
「お盆で時間があるから、少し家の片付けを手伝おうか?」と一緒に作業を進める中で、重要な書類の保管場所をさりげなく確認するのも有効です。
【参考】
相続で残される家族の負担を減らすためにできることとは【相続対策】
https://stepup-souzoku.com/2025/09/19/jiok8911lkk0kks-skn/
相続登記の申請義務化に関するQ&A|法務省
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
まとめ:一人で悩まず、まずは相続専門の税理士にご相談ください
相続対策は、「何から手を付ければいいのか分からない」と後回しにされがちですが、早めに行動することで多くの選択肢を残すことができます。
「我が家の場合は相続税がかかるのだろうか」「遺言書を書いた方がいいのか」と少しでも不安に思われたら、一人で悩まず、私たち相続専門の税理士にご相談ください。厚木相続相談センターでは、ご家族の状況に合わせた相続税のシミュレーションから、争族を防ぐための遺言書作成のアドバイスまで、親身になってサポートいたします。
早めに専門家を頼ることをお勧めいたします。まずはお気軽に、当センターの初回無料相談をご利用ください。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
行政書士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士との強いネットワークを活かして、あなたの相続の悩みをサポートいたします。
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よくある質問
Q:親と相続の話をしたいのですが、財産のことを直接聞くのは失礼でしょうか?
A:直接「財産はいくらある?」と聞くと警戒されることがあります。「最近、相続登記が義務化されたと聞いたんだけど実家の名義はどうなってる?」や「自分もエンディングノートを書こうと思って」と自分ごととして切り出すのが自然です。
Q:親が認知症になってしまった後でも、遺言書を書いてもらうことはできますか?
A:判断能力を欠く状態では、法律上有効な遺言書の作成はできません。ただし、認知症の程度によっては医師の立ち会いのもとで作成できる場合もあり、個別に弁護士や公証役場へ相談することをお勧めします。元気なうちの準備が最善です。
Q:銀行口座が凍結されたとき、葬儀代はどうやって用意すればいいですか?
A:「預貯金の仮払い制度」を利用すれば、遺産分割協議前でも1金融機関あたり最大150万円まで引き出せます。ただし戸籍謄本など必要書類の準備に時間がかかるため、日常の生活費・葬儀代程度は別途現金で用意しておくと安心です。
Q:相続登記が義務化されたと聞きましたが、いつまでに手続きすればいいですか?
A:2024年4月1日以降に相続で取得した不動産は、「知った日から3年以内」に登記が必要です。2024年4月より前に相続していた未登記の不動産も2027年3月31日までに申請が必要です。怠ると10万円以下の過料となる場合があります。
Q:実家を相続したものの誰も住まない場合、どのような選択肢がありますか?
A:①売却して現金を相続人で分ける ②賃貸に出す ③空き家のまま維持管理する という選択肢があります。売却・賃貸いずれも相続登記(名義変更)が先決です。空き家のまま放置すると固定資産税の増加や老朽化リスクがあります。
厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
「親が亡くなったけれど、うちも相続税を払わなければいけないのだろうか……」と不安に思う方も多いかもしれません。
「相続税は一部のお金持ちだけがかかるもの」と思われがちですが、実はそうではありません。平成27年の税制改正によって相続税の仕組みが大きく変わり、現在ではごく一般的な家庭であっても相続税の申告が必要になるケースが珍しくありません。
特に、厚木市や海老名市、伊勢原市といった小田急線沿線にお住まいの方は、土地の価値が思いのほか高く、気づかないうちに税金の対象となっていることがあるため注意が必要です。
結論から言えば、遺産の総額が「基礎控除(きそこうじょ)」と呼ばれる非課税枠を超えなければ、相続税は1円もかかりませんし、税務署への申告も不要です。
今回は、ご自身のケースで相続税がかかるかどうかのボーダーラインとなる「基礎控除」の計算方法や、厚木周辺の地域ならではの不動産評価の注意点について、専門家の視点から分かりやすく解説します。
そもそも相続税の「基礎控除」とは?結論から言えばこの金額以下なら申告不要
相続税には、国が定めた「ここまでの金額なら税金をかけません」という一律の免除枠があります。これが「基礎控除」です。
結論から言えば、亡くなった方の遺産総額がこの基礎控除額を下回っていれば、相続税の心配は一切いりません。
基礎控除の金額は一律ではなく、「亡くなった方の法定相続人が何人いるか」によって以下のように計算式が決まっています。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
【参考】
No.4102相続税がかかる場合|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4102.htm
ここでいう「法定相続人(ほうていそうぞくにん)」とは、法律で定められた遺産を引き継ぐ権利のある親族(配偶者や子どもなど)のことです。
【参考】
遺産を受け取る相続人とは誰か【法定相続人となる人とは】
https://stepup-souzoku.com/2024/10/18/isisiamska/
具体的な家族構成ごとのボーダーラインをいくつか見てみましょう。
【具体例】家族構成ごとの基礎控除額(ボーダーライン)
パターンA:相続人が妻(配偶者)1人のみの場合
3,000万円+(600万円×1人)=3,600万円
パターンB:相続人が子ども2人の場合(配偶者は既に他界)
3,000万円+(600万円×2人)=4,200万円
パターンC:相続人が妻と子ども2人(計3人)の場合
3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円
このように、例えばパターンCのご家庭であれば、遺産の合計が4,800万円以下であれば相続税はかかりません。
まずは「我が家の法定相続人は何人か」を確認し、このボーダーラインの金額を把握しておくことが大切です。
厚木・海老名エリアの「実家(不動産)」はいくらと評価される?
「うちは普通のサラリーマン家庭だし、預貯金も数千万円もないから大丈夫」と思われる方が非常に多いのですが、ここに大きな落とし穴があります。
相続税を計算するときの「遺産」には、銀行の預貯金や現金だけでなく、「実家の土地や建物(不動産)」も含まれるからです。
特に厚木市や海老名市周辺は、小田急小田原線の利便性の高さや駅周辺の開発によって、土地の価値(地価)が底堅く推移しています。そのため、「古い一戸建てだから価値はないだろう」と思っていても、土地の評価額が思った以上に高額になるケースが多々あります。
現金だけじゃない!土地の価値を決める「路線価」の仕組み
相続税を計算する際、土地の価値は固定資産税の通知書に書かれている金額ではなく、国税庁が毎年発表する「路線価(ろせんか)」という基準を使って計算します。
【参考】
上昇傾向の土地価格路線価の将来的な動向と相続税評価への影響
https://stepup-souzoku.com/2026/03/20/wybs678sj0aj2-9/
路線価は道路ごとに価格が決められており、本厚木駅や海老名駅に近いエリア、あるいは閑静な住宅街であっても、敷地が広ければ土地の評価額だけで2,000万円〜3,000万円を超えてしまうケースが少なくありません。
もし「実家の土地(3,000万円)」と「預貯金(2,500万円)」があれば、それだけで合計5,500万円となり、先ほどのパターンCの基礎控除額(4,800万円)を簡単に超えてしまうことになるのです。
我が家がボーダーラインを超えているかどうかを知るためには、手元の現金だけでなく、「実家の土地がいくらになるか」を正しく見積もる必要があります。
もし基礎控除を超えそうなら?知っておくべき2大「減税特例」
「計算してみたら、基礎控除のボーダーラインを超えてしまいそう……」と不安になった方もご安心ください。
日本の相続税法には、残されたご家族が生活に困らないよう、税金を大幅に安くするための強力な「特例」が用意されています。代表的な2つの特例をご紹介します。
(1)配偶者控除(配偶者の税額軽減)
亡くなった方の配偶者(妻や夫)が遺産を引き継ぐ場合、「1億6,000万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額までは、相続税が一切かからないという非常に手厚い制度です。
これにより、大半のケースで配偶者に相続税はかかりません。
(2)小規模宅地等(しょうきぼたくちとう)の特例
亡くなった方と一緒に住んでいた実家の土地を、同居していた配偶者や子どもが引き継ぐ場合、土地の相続税評価額を「最大80%」も減額してくれる制度です。
例えば、路線価で3,000万円と評価された実家の土地が、この特例を適用できれば「600万円」まで下がることになります。これにより、遺産総額が基礎控除以下に収まり、税金がかからなくなるケースが非常に多いです。
【参考】
No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm
【非常に重要な注意点】特例を使うには「税務署への申告」が必須
ここで絶対に注意しなければならないのは、「これらの特例は、自分で勝手に使って終わりにしてはいけない」ということです。
特例を使った結果、最終的な税金が0円になる場合であっても、期限内(亡くなってから10ヶ月以内)に「特例を使います」という相続税の申告書を税務署に提出しなければ、この割引を受けることはできません。
もし申告を忘れて放置してしまうと、後から税務署に見つかった際、特例が使えない本来の高い税率で課税されるだけでなく、ペナルティの税金(加算税や延滞税)を支払うリスクがあります。
まとめ:相続税がかかるかどうかの「シミュレーション」は専門家へ
相続税の基礎控除や各種特例は、正しく知って活用すれば決して怖いものではありません。
しかし、「我が家の法定相続人の数え方はこれで合っているか」「実家の土地の路線価はどう計算すればいいか」「小規模宅地等の特例の条件を満たしているか」を一般の方がご自身だけで判断するのは、非常に難易度が高いと言えます。
「うちは申告が必要なのかな?」と少しでも不安に思われたら、まずは一人で悩まずに、私たち相続専門の税理士にご相談ください。
厚木相続相談センターでは、親身にお話を伺いながら、ご家族の財産が基礎控除を超えるかどうかの正確なシミュレーションを実施いたします。
早めに専門家を頼ることで、払わなくてもよい税金を抑え、いざという時に家族間で揉めないためのスムーズな遺産分割協議を進めることができます。まずはお気軽に、当センターの初回無料相談をご利用ください。
よくある質問
Q:相続税がゼロになる場合も、税務署に申告が必要なのですか?
A:遺産総額が基礎控除以下であれば申告は不要です。ただし、配偶者控除や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合は、申告が必須です。特例を使わなければ本来課税されるためです。申告なしに特例は受けられません。
Q:小規模宅地等の特例は、同居していない子どもでも使えますか?
A:原則として同居が要件ですが、「家なき子特例」という制度を使えば、一定の条件(自分の持ち家を持っていない等)を満たす非同居の子どもも適用できる場合があります。条件が複雑なため、適用可否は必ず税理士に確認してください。
Q:相続税の申告期限(10ヶ月)を過ぎてしまった場合はどうなりますか?
A:申告期限を過ぎると、本来の税額に加えて無申告加算税(15〜20%)や延滞税が課せられます。さらに、配偶者控除・小規模宅地等の特例が原則として使えなくなるため、税負担が大幅に増加するリスクがあります。気づいた時点で早急に専門家へ相談してください。
Q:配偶者が全財産を相続すれば相続税がかからないと聞きましたが、それで問題ないですか?
A:配偶者控除により一次相続(夫婦間)では税がゼロになりやすいですが、配偶者が相続する財産が多いほど、その後の二次相続(配偶者が亡くなったときの子どもへの相続)で税負担が大きくなります。一次・二次を合わせた税額シミュレーションを専門家と行うことをお勧めします。
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厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
家族が亡くなった後には、お通夜や葬儀のバタバタが落ち着く間もなく、膨大な相続手続きが待っています。特に「預貯金口座の解約」や「実家の名義変更(相続登記)」は、期限や段取りが複雑で頭を悩ませる方も多いのではないでしょうか。
そうした手続きを進める中で、多くの方が直面するのが「相続人が遠方に住んでいて、なかなか集まれない」「普段から疎遠で、連絡先すらわからない兄弟がいる」という問題です。
【参考】
連絡の取れない相続人がいる場合の相続手続き
https://stepup-souzoku.com/2025/12/19/jiiko3ode0364/
「全員が集まれないと、手続きは進められないの?」「連絡が取れない人がいたら、実家の名義変更はどうなるのだろう……」と、一人で不安を抱え込んでしまうケースも珍しくありません。
結論から言えば、たとえ相続人が遠方にいても、あるいは連絡が取りづらい状況であっても、正しい法的手順を踏めば安全に手続きを完了させることができます。
今回は、遠方に相続人がいる場合や連絡がつかない家族がいる場合に、トラブルを防ぎながらスムーズに口座解約や名義変更を進める具体的な解決策を、相続の専門家として分かりやすく解説します。
全員の同意が必要!遺産分割協議が進まない2つの典型パターン
まず大前提として知っておいていただきたいのは、亡くなった方の財産(遺産)を分けるためには、原則として「法定相続人全員」による話し合いと合意が必要になるということです。
【参考】
法定相続人の確定はどうやってするのか?調査の方法を解説
https://stepup-souzoku.com/2025/10/17/nuu98gtrws09/
この話し合いを「遺産分割協議」と呼び、全員が同意した証として「遺産分割協議書」を作成します。
しかし、実務においてはこの話し合いが以下の2つのパターンでストップしてしまうことが非常によくあります。
(1)兄弟や子どもが遠方(地方や海外)に住んでいて集まれない
長男は厚木市に住んでいるが、次男は九州、長女は海外に赴任しているといったケースです。全員が仕事や家庭を持って多忙な中、本厚木駅周辺の実家に一堂に会して話し合いの場を持つことは、物理的に極めて困難と言えます。
(2)普段から疎遠で、現在の連絡先(住所)や電話番号がわからない
何年も音信不通の兄弟がいる、あるいは前妻との間の子どもがどこに住んでいるかわからないといったケースです。話し合いを始めたくても、そもそも連絡を取る手段がないため、スタートラインにすら立てずに行き詰まってしまいます。
「全員のハンコが必要なのに、これでは口座解約も名義変更もできない」と諦めてしまう方もいますが、いざという時に慌てないために、それぞれの解決策を知っておくことが大切です。
遠方にいる相続人とスムーズに「遺産分割協議書」をまとめる手順
相続人全員の居場所や連絡先は分かっているものの、距離が離れていて集まれない場合は、「持ち回り(もちまわり)」という方法で遺産分割協議書を作成することが可能です。
わざわざ全員が1つの場所に集まって同じ書類に署名・押印する必要はありません。具体的な手順は以下の通りです。
ステップ1:電話やメール、オンライン面談で内容を合意する
まずは厚木にいる代表者が中心となり、電話やメール、オンライン会議ツールなどを活用して「誰がどの財産を引き継ぐか」の意思確認を行います。
ステップ2:遺産分割協議書を郵送で回す
合意した内容をもとに作成した「遺産分割協議書」を、遠方の相続人に郵送します。受け取った相続人は、内容を確認した上で署名し、実印を押印します。
ステップ3:各自の「印鑑登録証明書」を同封してもらう
銀行の手続きや法務局での名義変更には、実印の証明として「印鑑登録証明書」が必ずセットで必要になります。署名・押印した協議書と一緒に返送してもらいましょう。
この郵送の手間を少しでも減らしたい場合は、「遺産分割協議証明書」という書類を人数分作成し、各自が1枚ずつ署名・押印して厚木の代表者に送り返すというテクニックもあります。
これなら書類が郵送で行ったり来たりする時間を大幅に短縮できます。判断が難しい場合は、事前に私たち専門家にご相談ください。
連絡先がわからない時は?「戸籍」と「住民票」を追う方法
「名前はわかるけれど、今どこに住んでいるのか全くわからない相続人がいる」という場合は、法律に則った方法でその方の現住所を調べることができます。
実は、正当な相続手続きのためであれば、他の相続人の「戸籍」や「住民票」を取得することが法的に認められているのです。
相続人であれば、他の相続人の住民票(戸籍の附票)を取得可能
具体的な流れとしては、まず亡くなった方の戸籍謄本を出生から死亡まで遡って集めます。その過程で、知らなかった相続人(前妻の子など)の存在や、疎遠な親族の現在の本籍地が判明します。
本籍地がわかれば、その役所から「戸籍の附票(こせきのふひょう)」を取り寄せることができます。戸籍の附票には、その本籍地に入っている人の「住所の移り変わり」がすべて記録されているため、現在どこの住民票に登録されているか(現住所)を正確に突き止めることができるのです。
一般の方には負担が大きい「戸籍集め」の壁
言葉で言うのは簡単ですが、厚木市役所だけでなく、遠方の役所に対して郵送で何度も戸籍を請求する作業は、一般の方にとって非常に時間と根気がいる作業です。また、「見ず知らずの親族の戸籍を自分で取るのは心理的に抵抗がある」という方も少なくありません。
このような複雑な戸籍集めや住所調査は、相続手続相談士の資格を持つ税理士などの専門家へ丸ごと依頼することをお勧めいたします。
住所が判明した後は、いきなり遺産分割協議書を送りつけるのではなく、「〇〇(亡くなった方)の相続手続きについて、お話ししたいことがあります」と、丁寧なお手紙を出して誠意を持ってアプローチしていくことが、その後のトラブル(争族)を防ぐ重要な一歩となります。
どうしても連絡がつかない・行方不明者がいる場合の法的手段
手紙を出しても返事がない、あるいは住民票の場所に誰も住んでおらず、完全に生死や行方がわからないという特殊なケースも珍しくありません。
だからといって、その人を無視して残りのメンバーだけで遺産分割協議を行っても、その協議は法的に一切無効になってしまいます。銀行口座の凍結も解除できませんし、実家の名義変更もできません。
このような「どうしても連絡がつかない行方不明者」がいる場合は、家庭裁判所に対して以下のような法的な手続きを申し立てる必要があります。
【参考】
不在者財産管理人選任|裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_05/index.html
■不在者財産管理人(ふざいしゃざいさんかんりにん)の選任
行方不明者の代わりに、その人の財産を守る「管理人(弁護士や司法書士など)」を裁判所に選んでもらう手続きです。この管理人が家庭裁判所の許可を得て、行方不明者の代わりに遺産分割協議に参加します。
■失踪宣告(しっそうせんこく)の申し立て
生死不明の状態が7年以上(震災などの災難の場合は1年)続いている場合に、法律上「亡くなったもの」とみなす手続きです。この場合、その行方不明者にさらに子ども(代襲相続人)がいれば、その子どもが話し合いに参加することになります。
これらの手続きは非常に厳格であり、申し立てから解決までに半年から1年以上かかることもあります。無理をして一人で悩まず、早い段階で専門家のサポートを受けることを推奨いたします。
まとめ:時間がかかる複雑な相続手続きは、厚木相続相談センターへ
遠方に相続人がいたり、連絡が取れない家族がいたりする相続は、通常の相続に比べて手続きの難易度が格段に上がります。「実印をもらうだけで数ヶ月かかってしまった」「相手の感情を逆なでしてしまいトラブルになってしまった」というケースも少なくありません。
特に、2024年4月からは「相続登記(実家の名義変更)の義務化」も始まっており、放置するとペナルティが科されるリスクもあります。いざという時に慌てないためにも、早めの行動が大切です。
【参考】
相続登記の申請義務化特設ページ(法務省)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00590.html
- 「遠方にいる兄弟とのやり取りをどう進めればいいかわからない」
- 「相手の住所を調べるための戸籍集めで行き詰まってしまった」
- 「相続税がかかるのか不安なので、シミュレーションをしてほしい」
そのような時は、決して一人で抱え込まずに、まずは私たち相続の専門家を頼ってください。
当センターでは、行政書士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士といった各専門士業との強いネットワークを活かし、戸籍の収集から遠方との書類のやり取り、口座解約、最後の相続税申告まで、窓口一つでトータルにサポートいたします。
まずはお気軽に、当センターの初回無料相談をご利用ください。あなたとご家族にとって最も負担の少ない、最適な解決策をご提案いたします。
よくある質問
Q:遺産分割協議書は全員が集まらず、郵送で署名・押印しても法的に有効ですか?
A:はい、有効です。全員が同じ場所で署名する必要はなく、郵送(持ち回り)で各人が署名・実印で押印し、印鑑登録証明書を添付すれば法的に認められます。ただし、全員分の書類が揃うまで銀行や法務局での手続きは開始できません。
Q:他の相続人の現住所を戸籍(戸籍の附票)で調べる場合、本人の同意は必要ですか?
A:本人の同意は不要です。正当な相続手続きを目的とする場合、相続人が他の相続人の戸籍の附票を取得することは法律上認められています。ただし、取得した個人情報は相続手続き以外の目的に使用することはできません。
Q:不在者財産管理人の選任には、どれくらいの費用と時間がかかりますか?
A:申立て費用は収入印紙800円等ですが、選任される管理人(弁護士・司法書士など)への報酬が別途発生します。申立てから選任まで数ヶ月かかることが多く、遺産分割協議の許可を得るにはさらに時間を要するため、解決まで1年以上を見込んでおく必要があります。
Q:2024年4月以前に亡くなった方の不動産も相続登記義務化の対象になりますか?
A:はい、対象です。2024年4月1日以前に発生した相続で未登記の不動産も義務化の対象であり、2027年3月31日(令和9年3月31日)までに相続登記の申請が必要です。正当な理由なく怠った場合、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
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ご両親がお亡くなりになり、ご実家を相続することになった場合、避けて通れないのが「実家の片付け(遺品整理)」です。
長年暮らした家には、家具や家電、衣類、思い出の品々が大量に残されており、これらを整理・処分するのは、ご遺族にとって精神的にも体力的にも、そして金銭的にも大きな負担となります。
今回は、実家の遺品整理を進めるタイミングや注意点、そして「片付けにかかった費用は相続税の計算上、控除できるのか?」といった税務上の疑問について解説します。
実家の片付け・遺品整理はいつ誰がやるべきか?
実家の遺品整理は、一般的に四十九日法要が終わった後など、ご遺族の気持ちが少し落ち着いたタイミングで始めることが多いです。
しかし、法的に「いつまでにやらなければならない」という期限はありません。
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。それは、「遺産分割協議が終わる前、あるいは相続放棄を検討している段階で、勝手に遺品を処分してはいけない」ということです。
参考:「知らないと損する!?相続開始の初期段階で避けるべき行為とは」
民法の規定により、相続人が故人の財産(家具・家電などの動産も含みます)を売却したり捨てたりすると、「相続財産を自分のものとして扱った(処分した)」とみなされ、自動的にすべての財産・負債を引き継ぐ「単純承認」が成立してしまいます。
もし後から故人に多額の借金があることが判明しても、一度財産を処分してしまうと「相続放棄」ができなくなってしまいます。実家の片付けを始める前には、まず故人の財産と借金の全体像を把握し、相続人全員の同意を得てから進めるようにしてください。
遺品整理費用は相続税の「債務控除」の対象になる?
遺品整理を専門業者に依頼すると、家の広さや荷物の量によっては数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。
「お葬式の費用が相続税の計算から引けるように、実家の片付け費用も遺産から引けるのでは?」と考える方も多いでしょう。
結論から申し上げますと、遺品整理にかかった費用は、相続税の計算上、遺産総額から差し引く(債務控除する)ことはできません。
お通夜や告別式、火葬などの葬儀費用は、相続に際して必然的に発生するものとして控除が認められています。
参考:国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」
しかし、遺品の片付けや不用品の処分費用は、「被相続人(故人)が死亡した時点で抱えていた債務」ではなく、「相続開始後に相続人自身の都合で発生した費用」とみなされるため、控除の対象外となるのです。そのため、片付け費用は、遺産の中から捻出するか、相続人ご自身の自己資金から支払うことになります。
遺品の中から現金(タンス預金)や骨董品が出てきたら?
実家を片付けている最中に、タンスの引き出しや押し入れの奥から、まとまった現金(タンス預金)が見つかるケースはよくあります。
「銀行に入っていないお金だから、黙ってもらっておけば税務署にはバレないだろう」と考えるのは非常に危険です。税務署は過去の所得や預金の引き出し履歴から、「これくらいの現金が家にあるはずだ」と予測を立てており、タンス預金であっても隠し通すことは困難です。見つけた現金は、必ず相続財産として正しく申告してください。
また、貴金属、ブランド品、骨董品、美術品などが見つかった場合は、「家庭用財産」として相続税の課税対象になります。一般的に経済的価値が低い衣類や古い家電は「家財一式」として少額でまとめて評価して構いませんが、客観的に価値が高いものは専門業者に査定を依頼し、個別に評価額を算出して申告する必要があります。
空き家になる実家を売却・処分する際の流れ
実家を片付けた後、誰も住む予定がない場合は「空き家」となります。空き家をそのまま放置すると、建物の急速な劣化や、不法侵入などの防犯上のリスク、さらには倒壊によって近隣に損害賠償責任を負うリスクまで発生します。
そのため、住む予定がない実家は、早めに売却等を検討すべきです。相続した実家を売却する際、一定の要件を満たせば、譲渡所得(売却益)から最高3,000万円を控除できる「空き家特例」という制度があります。
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
この特例を利用するには、「1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた建物であること」「耐震リフォームをして売却するか、建物を取り壊して更地にして売却すること」など、細かい適用要件が定められています。実家を売却して手放すことをお考えの場合は、片付けを始める前に、特例が使えるかどうか専門家にシミュレーションしてもらうことを強くお勧めします。
まとめ
実家の遺品整理は、タイミングや方法を間違えると「相続放棄ができなくなる」といった法的なリスクを伴います。また、多額の片付け費用がかかっても相続税からは控除できないため、遺産分割の話し合いの中で「誰が片付け費用を負担するのか」を事前に決めておくことも大切です。
空き家の売却や相続税の申告には専門的な知識が不可欠ですので、一人で抱え込まず、早い段階で専門家へご相談ください。
よくある質問
Q:実家の片付け(遺品整理)にかかった費用は、相続税の計算で差し引けますか?
A:いいえ、遺品整理費用は相続税の「債務控除」の対象外です。控除できるのは葬儀費用(お通夜・告別式・火葬など)に限られており、相続開始後に発生した片付け費用は控除できません。費用は遺産から捻出するか、相続人の自己負担となります。
Q:四十九日前でも実家の片付けを始めて大丈夫ですか?
A:法的な期限はありませんが、遺産分割協議の前や相続放棄を検討している段階で家具・家電などを処分してしまうと、「単純承認」が成立し相続放棄ができなくなるリスクがあります。片付けは相続人全員の同意を得た後に進めるのが原則です。
Q:実家の片付け中に現金(タンス預金)が見つかりました。申告しなくても大丈夫ですか?
A:申告は必須です。税務署は過去の所得や預金の出金履歴から自宅の現金保有額を推計しており、タンス預金を隠しても発覚するリスクが高いです。見つかった現金は必ず相続財産として申告してください。
Q:実家が空き家になる場合、売却すると税金はどうなりますか?
A:一定の要件を満たせば、売却益(譲渡所得)から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」が使えます。ただし1981年5月31日以前建築など細かい要件があるため、売却前に専門家への確認をお勧めします。
Q:実家に残っていた骨董品や貴金属は相続税の対象になりますか?
A:なります。貴金属・ブランド品・骨董品・美術品は「家庭用財産」として相続税の課税対象です。客観的に価値が高いと判断されるものは専門業者による査定を受け、個別に評価額を算出して申告する必要があります。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
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厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
現代の生活において、スマートフォンやパソコンは欠かせないものとなりました。
それに伴い、相続の現場で近年急増しているのが「デジタル遺品」に関するお悩みです。
「親のスマホにロックがかかっていて中身が見られない」「ネット証券で株の取引をしていたようだが、パスワードがわからない」といったご相談が寄せられることも少なくありません。
今回は、見落としがちな「デジタル遺品」の種類と、相続する際の注意点についてわかりやすく解説します。
デジタル遺品とは何か?
デジタル遺品とは、亡くなった方がパソコンやスマートフォン、インターネット上に残したデータやアカウント全般のことを指します。
具体的には、以下のようなものが該当します。
- デジタル資産:ネット銀行の預貯金、ネット証券の株式、FX口座、仮想通貨(暗号資産)など。
- 有料サービス(サブスクリプション):動画・音楽の配信サービス、有料アプリ、クラウドストレージの月額利用料など。
- アカウント・データ:SNSアカウント(LINE、X、Facebookなど)、メールの送受信履歴、写真や動画データなど。
これらは形として目に見えないため、ご家族であっても全容を把握することが非常に難しいという厄介な特徴を持っています。
ネット銀行・ネット証券の相続手続きの難しさ
従来の銀行預金であれば、「通帳」や「キャッシュカード」が自宅に残されているため、ご家族が財産の存在を見つけるのは比較的簡単です。
参考:「家族が亡くなる前に銀行口座からお金を引き出すのはNG?相続トラブルを防ぐ正しい対処法」
しかし、ネット銀行やネット証券には形のある通帳が存在しません。
もし、亡くなられた方が誰にも言わずにネット上で資産運用をしていたら、ご家族はその存在に気づけないままになってしまいます。
さらに手続きを困難にするのが、「ログインID」と「パスワード」の問題です。
セキュリティが非常に高いため、ご家族であっても正しいパスワードが分からないと、中身の確認や引き出しの手続きを進めることができません。
金融機関の存在自体が判明していれば、残高証明書の発行依頼等を郵送で行うことも可能ですが、どこのネット証券を使っているかすら分からない場合は、故人のメールの受信履歴や、スマートフォンのアプリ一覧から推測して探し出すという途方もない作業が必要になります。
有料サブスクリプションの解約漏れによるリスク
デジタル資産だけでなく、「定額制の有料サービス(サブスクリプション)」にも注意が必要です。
動画配信サービスや有料アプリなどは、本人が亡くなっても自動的に解約されることはありません。
放置していると、クレジットカードや口座から毎月自動的に料金が引き落とされ続けてしまいます。
「それなら、クレジットカード自体をすぐに解約・利用停止すればいい」と思われるかもしれませんが、クレジットカードを止めてしまうと、故人名義のままになっている水道光熱費やスマートフォンの通信料まで引き落とせなくなってしまいます。
どのサービスに月額課金しているかをクレジットカードの利用明細等でしっかりと確認し、個別に解約手続きを進めることが求められます。
デジタル遺品の放置による相続税申告への影響
ネット銀行の預金やネット証券の株式、仮想通貨も現金や不動産と同じ「立派な財産」であり、当然ながら相続税の対象になります。
参考:国税庁:相続税の課税対象になるもの
「パスワードが分からないから引き出せない。でも、データ上は資産があるから相続税だけはかかる」という事態も起こり得ます。
もし、デジタル資産の存在に気づかずに相続税の申告を済ませてしまった場合、後から税務署の調査で発覚すると「申告漏れ」として扱われます。
その場合、本来納めるべき税額に加え、過少申告加算税や延滞税といった重いペナルティが課せられる原因となってしまいます。
トラブルを防ぐために今できること
デジタル遺品のトラブルを防ぐためには、ご自身が元気なうちからの生前の対策が何よりも重要です。
- アカウント情報のリスト化:「どこの会社(取引所)を使っているか」「ID・パスワード」などを紙のリストにして、通帳や実印などと一緒に安全な場所に保管しておきましょう。
- 遺言書での指定:「誰に」「どのデジタル資産を」渡すかを遺言書にはっきり書いておくと、遺族の負担はさらに減ります。
参考:「遺言書とエンディングノート、何が違う? 上手な使い分けとは」
まとめ
デジタル遺品は、目に見えない資産だからこそ、持ち主がいなくなると「なかったこと」になりやすい一方で、後の相続手続きや税務調査で大きなトラブルの火種になりやすい財産です。
ご自身がネット上で取引をしている場合は、ご家族が困らないよう情報を整理しておきましょう。
また、ご家族を亡くされて「もしかしたらネット上に資産があるかもしれない」と不安な場合は、お早めに専門家へご相談ください。
よくある質問
Q:亡くなった家族のネット銀行やネット証券は、まず何から確認すればいいですか?
A:メール、スマホのアプリ、郵便物、銀行口座の入出金履歴を確認します。
金融機関名が分かれば、相続人から残高証明書や手続き方法を問い合わせられる場合があります。
Q:サブスクはクレジットカードを止めれば自動で解約できますか?
A:カードを止めても契約自体が解約されるとは限りません。
通信料や公共料金まで止まる可能性もあるため、利用明細から契約先を確認し、各サービスごとに解約するのが安全です。
Q:暗号資産やネット証券が後から見つかった場合、相続税申告はどうなりますか?
A:相続財産に含まれるため、申告後に見つかった場合は修正申告が必要になることがあります。
金額や状況によって加算税・延滞税が生じる可能性があるため、早めに専門家へ相談してください。
Q:デジタル遺品のトラブルを防ぐため、生前に何を残しておけばいいですか?
A:利用している金融機関・証券会社・サブスク名、連絡先、保管場所を一覧にしておくと安心です。
パスワードそのものは管理方法に注意し、家族が存在を把握できる状態にしておきましょう。
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厚木市で 相続 の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
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相続が発生した際、すべての遺産が「現金」であれば、1円単位で分けるのは簡単です。しかし、相続財産には分けるのが難しい不動産などが含まれる場合もあります。
あるケースでは「財産が自宅のみで、現金や貯金が一切ない」ということもあります。この場合、相続人同士で公平に分けることは難しいと言えます。
このような状況で公平な分割をする方法として「代償分割」があります。
代償分割とは「現物の代わりに現金を支払う」仕組み
代償分割とは「特定の相続人が遺産(不動産など)を丸ごと引き継ぐ代わりに、他の相続人に対して、『代償金(見返りの現金)』を支払う分割方法」のことです。
以下の具体例で見てみましょう
- 相続人:長男・次男の2人
- 遺産:実家(時価3,000万円)のみ
- 希望:長男は実家に住み続けたい、次男は公平に分けてほしい
この場合、家を半分に切ることはできません(持分を半分にして分けることもできますが、将来的な売却・活用が難しくなり、トラブルの元となるため避けた方が良いです。)。
そこで、長男が家(3,000万円相当)を相続し、その代わりに次男へ1,500万円の現金を支払うことで、公平な分割となります。この1,500万円は「代償金」であり、長男自身の資産から払われます。
代償分割のメリットとデメリット
(1)メリット
公平性:価値の大きな不動産があっても、現金で調整することで不公平感を解消できます。
不動産の共有を避けられる:前述したように不動産の「共有名義」は、将来売却の際のトラブルの元になります。代償分割なら名義を一人に絞れます。
事業承継に有利:自営業の店舗や農地など、バラバラにしたくない資産を守ることができます。
(2)デメリット
代償金を支払う能力が必要:代償金を支払う相続人に、まとまったお金がなければ成立しません。先ほどの例でいうと、不動産を引き継ぐ長男は半分の1,500万円を次男に支払わなければなりません。
評価額の決定で争いが起こる:「不動産価値を時価で見るか、相続税評価額で見るか」で相続人間で意見が割れることがあります。路線価で見積もれば、価値は下がるので代償金も少なくなります。
代償金に税金はかかるのか
代償金は贈与のように思われ、贈与税の心配をされる方がいますが、正しく手続きを行えば贈与税はかかりません。
代償分割はあくまで「遺産を分けるプロセスの一つ」とみなされるためです。ただし、遺産分割協議書に代償分割であることを明記する必要があります。
遺産分割協議書に記載がないまま現金を渡すと、税務署から「ただの贈与」とみなされ、贈与税を課せられるリスクがあります。
代償金と「相続税」の計算ルール
代償分割をした場合、各相続人の相続税の計算方法は以下のようになります。
支払った人の計算:
相続税の対象額=相続した遺産の価額-支払った代償金の額
(例:3,000万円の家-1,500万円の代償金=1,500万円に対して課税)
受け取った人の計算:
相続税の対象額=受け取った代償金の額
(例:受け取った現金1,500万円に対して課税)
二人で合計3,000万円の遺産を分かち合ったものとして、公平に相続税が計算されます。
代償分割で「所得税」が発生するケース
代償金は通常、現金で支払います。しかし、現金が足りない場合に「自分が持っている別の不動産や株」を代償として渡すケースがあります。
これを「物納的な代償分割」と呼びますが、税務上は「自分の資産を時価で売却して、その代金で代償金を支払った」とみなされます。もし、その資産を手に入れた時よりも今の価値が上がっていれば、その値上がり益に対して所得税がかかってしまうのです。
基本的には、代償金は「現金」で用意するのが最も税務トラブルが少ない方法と言えます。
まとめ
代償分割は、家や土地を守りながら公平な相続を実現するための非常に有効な手段です。
しかし、「遺産分割協議書の書き方」や「代償金の支払い方」を一歩間違えると、本来払わなくてよい税金が発生してしまう恐れがあります。
「実家はあるけれど現金がない」という状況になった場合、まずは相続の専門家に相談し、相続税のシミュレーションを行っておきましょう。その上で、代償分割を選択するかどうか判断すれば良いでしょう。
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「そろそろ終活を考えようかな」と思ったとき、思い浮かぶものはなんでしょうか。ある方は「遺言書」、ある方は「エンディングノート」ではないでしょうか。
この二つはどちらも自分の死後に備えるためのツールですが、役割が全く違います。どちらか一方で十分と思う方もいますが、それぞれの特徴を理解して上手に使い分けることが、残されたご家族のためになります。
今回は、意外と知らない両者の違いと活用法を解説します。
遺言書には「法的な効力」がある
遺言書というと「財産の分け方を指定するもの」のイメージがありますが、実際には財産の分け方以外の事項も指定可能です。また、各事項について法的効力があります。
ただし、民法で書き方のルールが決まっており、そのルールから外れると無効になってしまいます。法的効力を持つ以上、作成にも注意が必要です。
遺言書で財産配分を指定しておくと、その通りに遺産配分がされるため、相続人同士で遺産分割協議をする必要がありません。相続人同士の話し合いは揉めるケースも多々あるので、遺言書によって遺産争いを防ぐ効果が期待できます。
なお、遺言の内容がスムーズに実行されるように遺言執行者を指定できます。遺言執行者は相続人の代表者として、いくつかの手続きを行えるので、相続が円滑に進みます。
エンディングノートは「故人の自由なメッセージ」
エンディングノートは、「自分の希望や、必要な情報を家族に伝えるためのノート」です。
遺言書と違い法的効力が一切ありません。ですがその分、何を書いても自由です。形式要件もありません。
実は、ご家族が「亡くなった直後」に一番困るのは、財産の分け方よりも「日々の細かな手続き」や「本人の意思」だったりします。
エンディングノートに書くべきこととして、延命治療は希望するか、介護はどこで受けたいか、葬儀はどんな式にしたいか、誰を呼んでほしいか、お墓はどこに建てて欲しいかなどがあります。
エンディングノートは、いわば「家族への手引書」。遺言書が「死後」に効力を発揮するのに対し、エンディングノートは「判断力が低下した時」から「葬儀が終わるまで」のあらゆる場面で家族を助けてくれます。
遺言書とエンディングノートの3つの違い
(1)法的効力の有無
遺言書は遺言者の死後、相続において法的効力を持ちます。そのため、形式要件が遺言書ごとに決められています。
例えば、最も作成が容易とされている自筆証書遺言であっても「添付の財産目録以外を遺言者本人が全文を自筆で書くこと」「作成した日付を書くこと」「本人の署名・押印をすること」などがあります。これらが守られていないと遺言書は無効となります。
一方で、エンディングノートには法的効力がありません。なので、余計なことは考えずに好きに書くことができます。
(2)書き直しやすさ
遺言書は書き直す際にもルールがあり、修正するにも注意が必要です。一方で、エンディングノートは鉛筆で書いて消しゴムで消してもOK。
毎年誕生日に内容を更新するなど、気軽に書き進められます。
(3)開封のタイミング
遺言書は亡くなった後に初めて開封されます(自筆証書遺言の場合、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。)が、エンディングノートは入院中や介護が必要になった時から見てもらうことができます。
エンディングノートに書いた事項は遺言にならない
前述の通り、遺言書には形式要件がありますから、その要件に沿っていないエンディングノートの内容は遺言になりません。
ただし、エンディングノートの中に「たまたま遺言のルール(自筆・日付・署名・押印)をすべて満たしたもの」があった場合、裁判所で遺言書として認められる可能性はゼロではありません。
しかし、これはあくまで「例外」です。逆に言えば、中途半端に法的な効力を持ってしまったせいで、遺族のトラブルを招くリスクもあります。
エンディングノートの内容を遺言書に盛り込んでも良い
遺言書には付言事項というものがありますが、これは、遺言書の最後に付け加える「法的効力を持たないメッセージ」のことです。
そのため、エンディングノートに書く内容を遺言書に盛り込むこともできます。
例えば、以下のようなものは付言事項と相性が良いです。
- 財産の分け方の「理由」(なぜ、その人に多く渡すのか)
- 葬儀や納骨の具体的な希望(家族が迷わないために)
- 家族への感謝や、今後の幸せを願う言葉
- 手続きに必要な書類の保管場所
内容が多い場合には、「詳細な情報はエンディングノートを見てね」と誘導するのも良いでしょう。
まとめ
ご説明した通り、遺言書とエンディングノートには大きな違いがあります。
二つとも遺族にとっては大切な書類ですが、遺言書には作成要件があるので、無効にならないように注意しましょう。
なお、相続を見越しての財産整理や相続税対策をするなら、必ず私たち相続専門の税理士にご相談ください。
相続の不安を解消し、あなたと家族にとって最適な形になるようお手伝いをいたします。
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犬や猫といったペットは単なる愛玩動物ではなく、家族の一員として飼育されるようになりました。加えて、獣医療の発展や室内飼いの普及によって寿命も長くなっています。
ペットの長寿命化に伴って増加しているのが、飼い主がペットより先に亡くなるケースです。「自分が死んだら親族が引き取ってくれるだろう」と漠然と考えている方は多いですが、事前の準備が不足していると、残されたペットが行き場を失う怖れもあります。
今回は、飼い主の死後、ペットが法律上どのように扱われるのか、そして相続後もペットを守るための具体的な手続きや対策について解説します。
法律上のペットの扱いは「動産」
ペットは感情を持つ生き物ですが、相続では「動産=もの」として扱われます。したがって、預貯金や不動産、自動車などと同じく、被相続人の「相続財産」の一部です。
飼い主が亡くなった場合、ペットは配偶者や子どもなどの法定相続人に引き継がれます。相続人が複数いる場合は、遺産分割協議という話し合いを行い、「誰がペットを取得するか」を決めなければなりません。
スムーズに引き取り手が決まれば問題ありませんが、現実は必ずしもそうではありません。「住んでいるマンションがペット不可である」「引き取り手となる相続人自身が高齢である」「共働きで世話をする時間がない」「家族に動物アレルギーがいる」など、様々な理由により相続人全員が引き取りを拒否するケースもあります。
もし誰もペットを引き取ることができず、新たな里親も見つからない場合、最終的に保健所へ持ち込まれ、殺処分となってしまうリスクが存在します。こうした事態を回避するためには、飼い主が健在なうちから引き継ぎ先を確保しなければなりません。
遺言書による「負担付遺贈」でペットを守る
ペットを守るための法的な対策として、まず挙げられるのが遺言書を用いた「負担付遺贈」です。
負担付遺贈とは、「特定の財産を譲る代わりに、一定の義務(負担)を負わせる」という条件付きの遺贈方法です。
たとえば、「甥のAに現金300万円を遺贈する。その代わり、愛犬を責任を持って飼育すること」といった文面を遺言書に残します。財産を渡す相手は法定相続人に限らず、友人や知人を指定することも可能です。
負担付遺贈のメリットは、遺言書を作成するだけで成立するため、手続きがシンプルです。公正証書遺言として作成しておけば、遺言書が紛失して内容が無効になる可能性もなくなります。
ただし、デメリットもあります。懸念事項として、受遺者が「財産だけを受け取り、ペットの世話を放棄するリスク」を排除しきれないのです。
遺言は飼い主からの一方的な意思表示であるため、死後にその約束が適切に果たされているかを確認することは困難です。遺言の内容が守られているかを確認する「遺言執行者」を指定する対策もありますが、長い期間がかかるペットの飼育を継続的に監視するのは現実的ではありません。
確実性を高めたいなら「ペット信託」を検討する
負担付遺贈の不確実性を解消し、より安全にペットの未来を保障する制度として「ペット信託」の利用が増加しています。
信託とは、特定の目的のために自分の財産を信頼できる相手に託し、管理や支払いを行ってもらう制度です。ペット信託は、主に以下の関係者で構成されます。
- 委託者:財産を預ける人(現在の飼い主)
- 受託者:財産を管理する人(信頼できる親族、または信託会社や一般社団法人など)
- 受益者:新しくペットを引き取り、飼育する人
- 信託監督人:財産の管理状況や、ペットの飼育状況を監督する人
仕組みとしては、まず飼い主が、ペットの生涯に必要となる費用(食費、ワクチン代、医療費、トリミング代など)を算出し、その金額を「信託財産」として受託者に預けます。飼い主が亡くなった時、あるいは認知症や重い病気で飼育が困難になった時点で、契約が効力を発揮します。
受託者は、預かっている財産の中から、毎月の飼育に必要な金額だけを定期的に新しい飼い主(受益者)に振り込みます。
この方法では、「資金管理」と「実際の飼育」を分離できることで、まとまったお金を一括で渡さないため、飼育放棄のリスクを大きく減らすことができます。
また、信託監督人を設置することで、獣医師による定期的な健康診断の提出を義務付けたり、飼育環境の報告を求めたりすることが可能になります。さらに、信託した財産は飼い主の個人の相続財産から法的に切り離されるため、相続人同士で遺産分割のトラブルが発生した場合でも、ペットのための資金は影響を受けずに保全されます。
ペット関連の相続税と遺留分の問題
ペットは最初に述べたように相続で動産となるので、法律上は相続税の課税対象となります。
しかし、一般的な家庭で飼育されている犬や猫の場合、市場価値としての評価額はゼロ、もしくは極めて低額とみなされるのが通常です。特殊な血統を持つ希少動物などでない限り、ペットそのものに対して高額な相続税が課される心配はほぼありません。
一方で注意すべきは、ペットの飼育を目的として残した「資金」の方です。負担付遺贈によって引き渡した現金や、ペット信託に組み入れた信託財産は、原則として相続税の課税対象に含まれます。
遺産総額が相続税の「基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」を上回っている場合、ペットのための資金を受け取った人に対しても相続税が課税されるでしょう。
信託の契約内容や誰が受益者になるかによって税務上の扱いが複雑に変わるため、制度を利用する際は事前に税理士へ相談し、課税関係をクリアにしておくことが重要です。
また、もう一つの注意点として「遺留分」の問題があります。遺留分とは、配偶者や子どもなどの法定相続人に最低限保障されている遺産の取得割合です。
「ペットの将来が心配だから」という理由で、全財産をペットの飼育費用に充てるような遺言書や信託契約を作成してしまうと、他の相続人の遺留分を侵害することになります。これは後に法的トラブルに発展する原因となります。
ペットのための資金を残す際は、ペットの年齢や持病から必要な金額を合理的に見積もり、親族の生活や法定相続分にも配慮したバランスの取れた財産配分を行うことが求められます。
まとめ
飼い主の死後、ペットがどのような運命を辿るかは、生前の準備によって変わります。負担付遺贈やペット信託といった法的な選択肢を正しく理解し、早めに対策を講じておくことが、ペットの命を守ることにつながります。
そのほか、相続の手続きや財産分与、税金に関するご不明点がある場合は、専門の税理士にご相談ください。
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「相続が始まると銀行口座が凍結されてしまうから、今のうちにある程度のお金を下ろしておきたい」とお考えになる方は非常に多くいらっしゃいます。
たしかに、人が亡くなるとお葬式の費用がかかります。お葬式の費用は150万円〜200万円程度なので、まとまったお金が必要です。また、当面の生活費、病院の精算代なども必要になる場合があります。
相続ではお金が必要になるのは事実ですが、だからといって「被相続人の生前にお金を引き出す行為」は良いものでもありません。後々になってご親族間の大きなトラブルや、税務署から厳しい指摘を招く原因になる可能性があります。
相続開始前にお金を引き出す3つのケースと潜むリスク
(1)ご本人(被相続人)の頼みで、ご本人のために引き出した場合
「入院費を払うから、私の口座から30万円を下ろしてきて」と、ご本人(被相続人)からの指示があって、お金を引き出すケースがあります。これは法律上「代理で行っただけ」ですから、行為自体に問題はありません。
ただし、「他のご家族からの目」と「税務署への説明」に注意が必要です。なぜなら、「引き出した現金を使った分だけ、最終的に残る遺産は減る」からです。
遺産が減ったことにより、他の相続人から「自分の懐に入れたのではないか?」と疑われる可能性もあります。ご自身の潔白を証明するためにも、病院の領収書などは捨てずに保管しておきましょう。
用途を明確にしておくことで、家族間の争いにもなりませんし、税務署から生前贈与を疑われた際の反証材料にもなります。
(2)ご本人の許可なく引き出した場合
ご本人が重い認知症を患っていたり、意識が混濁していたりして、明確な許可を得られないままご家族の判断でお金を引き出すケースがあります。
これは同居しているご家族が生活費や介護費のために引き出すことが多いのですが、相続が始まった際に、他の親族から「あの引き出しは無効だ」「遺産を勝手に使い込んでいる」と激しく追及されるリスクがあります。
家族間であれば警察沙汰になることは滅多にありませんが、遺産分割協議がストップしてしまう「争族」の引き金になりかねません。やむを得ず、お金を引き出す必要がある場合、必ず事前に他のご家族全員に説明し、情報共有と同意を得ておくと良いでしょう。
(3)ご本人の許可を得て、自分のためにもらった場合
ご本人の許可を得てあなた自身のために現金を引き出した場合は「生前贈与」という扱いになります。
ここで気をつけたいのが贈与税と相続税のルールです。まず、もらった金額が1年間で110万円(基礎控除額)を超えれば、贈与税の申告と納税の義務が発生します。これは「もらう人1人あたり」で計算するため、複数人から贈与を受けて合計が110万円を超えた場合も対象です。
さらに、「生前贈与加算」というルールも存在します。亡くなる直前の一定期間に行われた贈与は、「なかったこと」として相続財産に足し戻して相続税を計算しなければなりません。
つまり、亡くなる直前の生前贈与は節税にならないのです。また、遺産を分ける話し合いの場では、この贈与が「特別受益」とされ、あなたの相続分がその分減らされる可能性も高くなります。
葬儀費用や当面の生活費を安全に確保する3つの方法
相続時はどのように現金を確保すれば良いのでしょうか。法律や制度に則った、安全で確実な方法をご紹介します。
(1)預貯金の「仮払い制度」を利用する
平成30年の法改正により、相続開始後(口座凍結後)であっても、遺産分割の話し合いが終わる前に、一定額までの預金を単独で引き出せるようになりました。
引き出せる上限額は、以下の計算式で決まります。
- 「亡くなった時の預金残高×法定相続分×3分の1」
- 「150万円」
上記のうち、金額が低い方が上限となります。この枠は「金融機関ごと」に計算されるため、もし複数の銀行に口座が分かれていれば、それぞれの銀行から上限額まで引き出すことが可能です。お葬式の費用など、急ぎの支払いに役立つ制度です。
(3)生命保険(死亡保険金)を活用する
資金確保として生命保険も有効です。死亡保険金は、民法上「受取人固有の財産」とみなされるため、他の遺産のように「誰がもらうか」の話し合い(遺産分割協議)を待つ必要がありません。
保険会社に必要書類を提出すれば、数日〜1週間程度で速やかに現金が振り込まれます。
さらに、生命保険には「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が用意されているため、節税の面でも優れています。
(3)生前に「ご本人」に引き出してもらう
ご本人が元気で意思能力もしっかりしているうちに、必要な現金を下ろし、ご自宅で保管しておく方法です。
ご本人がご自身の財産をどう使おうと自由ですので、親族間のトラブルは起きにくくなります。その際、遺言書に「手元にある現金○○万円は、私自身の葬儀費用や、残された配偶者の当面の生活費として使ってほしい」と一筆残しておくと、ご家族も迷いなくそのお金を使うことができます。
まとめ
亡くなる直前のご親族による現金引き出しは、税務上も家族関係の上でも、非常にデリケートでリスクを伴う行為です。
将来的な資金確保が不安な場合は、生命保険の加入を検討しましょう。万が一の際は「仮払い制度」が使えることを覚えてきましょう。
いずれにせよ、正しい知識を持って準備しておくことが大切です。
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毎年7月に国税庁から公表される「路線価」。これは土地の相続税評価において基準となる指標です。
ここ数年は、国内の地価が上昇傾向にありますが、これらの地価変動が将来の税負担、特に相続税にどう響くのでしょうか。
路線価の定義とは
まず路線価の解説ですが、路線価とは、相続税や贈与税を算出する際の基準として国税庁が設定する土地の価格です。毎年1月1日時点の評価が、同年の7月に発表されます。
この路線価の他を含めて日本の土地には、目的に応じた4つの価格が存在します。
- 実勢価格(時価):実際の不動産市場で売買される価格。チラシ等の掲載価格がこれに当たり、需要で変動する「生きた価格」です。
公示地価:国土交通省が公表する標準的な価格の目安です。毎年3月に発表されます。
固定資産税評価額:市町村(東京23区は都)が固定資産税の計算に用いる価格で、3年ごとに更新されます。
路線価:前述したように相続税等の計算用の価格です。公示地価の約7~8割が目安とされています。
近年の路線価の推移
2025年分の路線価は、全国平均で前年比プラス2~3%程度となり、4年連続の上昇を記録しました。特に首都である東京の伸びは著しく、都内平均で前年比プラス8%と、全国平均の約3倍に達しています。
この背景には、インバウンド需要の回復、都市部での大規模再開発、根強い住宅需要、そして円安による海外投資家の資金流入などがあります。過去にはパンデミックによる一時的な停滞はあったものの、全体としては上昇傾向にあり、今後もしばらくはこの傾向が続く可能性が高いでしょう。
相続税への具体的な影響
「地価が上がると、将来の相続税が跳ね上がるのでは?」と不安を感じる方も少なくありません。
結論から言えば、土地の評価額が上昇する可能性は高いです。市場価格(時価)が上がれば公示地価も引き上げられ、それに連動して路線価も上がるためです。
ただし、過度に恐れる必要はありません。相続税には土地の評価を法的に圧縮できる仕組みがいくつか用意されており、これらを適切に活用することで税負担を抑えることが可能だからです。
土地評価の2つの算出方法
相続発生時、土地の価値は以下のいずれかの手法で計算されます。
計算式:路線価×敷地面積=土地評価額
計算式:固定資産税評価額×指定の倍率=土地評価額
※倍率も地域ごとに国税庁が定めています。
評価額を下げる「減額要素」
前述では、評価の計算方法を述べましたが、相続における土地評価は、単純な面積計算だけで決まるわけではありません。
実は「使い勝手の悪い土地」は、その分、評価額を差し引くことができます。
例えば、以下のようなケースです。
- 奥行きが極端に長い
- 道路に接していない、または接道が狭い(旗竿地)
- L字型や三角形などの不整形な形状
- 敷地内に大きな高低差がある
こうした土地は、綺麗な正方形の土地に比べて活用が難しいため、ルールに基づいて数%〜数十%の「補正(評価減)」を加えることができます。この補正を漏れなく適用できれば、最終的な納税額が数百万円単位で変わることも珍しくありません。
節税の切り札「小規模宅地等の特例」
土地における最も効果的な節税策が「小規模宅地等の特例」です。
これは亡くなった方が住んでいた自宅の土地などを相続する場合、一定の要件を満たせば、評価額を最大80%減額できます(減額できる範囲があります)。
相続税の有無を左右する非常に強力な制度ですが、適用条件が複雑なので、税理士などの専門家のサポートを受けた上で手続きをすると良いでしょう。
まとめ
近年の市場の活況を受け、土地の時価および路線価は上昇傾向にあります。これは将来の相続税負担が増える要因となります。しかしながら、税法には「実態に即した評価」を行うための減額ルールや、居住基盤を守るための特例措置が備わっています。
相続における土地評価では、土地ごとの個別要因(形状や接道状況)を精査すれば、最大限の評価減を適用できます。ただし、土地評価には高度な専門判断が求められるため、実績のある専門家へ相談した方が良いでしょう。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
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