限定承認とは
こんにちは。
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
前回、遺産に多額の借金が含まれる等の場合に相続を行わない手段として「相続放棄」を紹介いたしましたが、実はもう一つ活用できる方法があり、これを「限定承認」といいます。
全ての相続権を放棄することが相続放棄ですが、限定承認は一部の相続を行う方法です。
今回はこの限定承認について解説いたしますので参考にしてください。
限定承認とは
限定承認とは、遺産の範囲内において借金を相続する方法です。
どういうことかというと、分割後に相続するプラスの遺産が2,000万円で、借金等のマイナスの遺産が3,000万円の場合、プラスの遺産である2,000万円分しか債務を負わなくて良いことになります。これにより遺産と借金を相殺してゼロにすることが可能です。
相続放棄はプラスもマイナスの遺産も全て相続せずに相続権を放棄することですが、限定承認はプラスの遺産の限度分のみマイナスの遺産を相続するので相続権は残ります。
限定承認のメリット
(1)相続権が残る
相続放棄とは違い限定承認では相続権は残ります。よって、あとからプラスの遺産の方が多かったということが発覚した場合でも、借金を精算すれば余剰分の財産は引き継ぐことができます。
財産調査が不十分で債務超過しているかどうかはっきりしない場合には有効な手段と言えるでしょう。
(2)住宅など不動産を確保できる
遺産の中に自宅などの不動産があって限定承認を行った場合、債務分を弁済できなければ不動産は換価処分となりますが、相当する金銭を支出できる場合は、換価処分を免れ、手元に残すことができます。
不動産の買取が可能な資力を持っていることが条件ですが、相続放棄の場合では不動産を確保することはできません。
(3)先買権
先買権は不動産が競売にかけられたときに優先的に購入できる権利のことです。限定承認をした相続人に対してこの先買権が認められるため、重要な不動産を取り戻すチャンスができます。
デメリット
(1)手間がかかる
相続放棄は個人で手続きが可能ですが、限定承認は相続人全員で行わなければなりません。
裁判所への申し立ては相続人全員の戸籍謄本が必須で、手続きに関しての相続人全員の合意も必要です。(反対する相続人がいる場合は手続き不可。)
裁判所に申請を行い受理された後も、裁判所の手続きに従って債務を清算する必要があるので相続放棄に比べると手間と時間が大幅にかかってしまいます。
(2)譲渡所得税が課税される
限定承認を行うと、相続手続き開始の時点で被相続人が全ての財産を相続人に時価で売却したものとみなされるので譲渡所得税がかかります。
譲渡取得税は譲渡価格(相続開始日の時価)から取得費、譲渡費用を引いた額に課税されます。課税されるものは、古くから所有している不動産が中心となります。
(3)相続税の減税制度を受けることができない
限定承認をすると、居住用不動産に関する相続税の控除制度である「小規模宅地等の特例」を受けることができません。
よって、単純承認を行なってマイナスの財産を別個に相続して、返済を行なった方が、結果的にプラスになる可能性もあります。
手続き期限
限定承認における手続き期限は相続放棄と同じく、熟慮期間内の3ヶ月以内と規定されています。
熟慮期間内に相続手続きの方法を決定できない諸事情がある場合は裁判所に申請を行なうことで、期間の延長が可能です。
延長は裁判所の裁量に委ねるので、ケースによっては延長が却下される場合もあります。
相続方法の決定は熟慮期間内に決定するようにしましょう。
相続放棄や限定承認の申請をしない場合や、相続財産の全部もしくは一部を相続人が処分した場合は自動的に単純承認となるので、相続人同士で調整をしておくことも大切です。
まとめ
限定承認は相続放棄と同じく遺産に借金が含まれる場合などに活用できる手続きの一手段です。
相続放棄同様に手続きは一回しか行うことができないので、慎重な判断が求められます。
遺産相続で損をしないためにも、財産や借金の状況、相続人の関係、手続きの煩雑さ等色々な状況を考慮して適切な対応を行うことが重要です。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。