こんにちは。
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。

相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。

 


 

遺言書がなければ、遺産分割協議によって財産の配分内容を決定します。

この遺産分割協議は上手くまとまらないケースもあり、中には数年経っても終わらないこともあります。
 

ここで問題となるのが相続税の申告と納付です。遺産分割協議が長引いても、原則として期限は変わらないからです。

申告期限を過ぎると、加算税などの罰則を受ける羽目にもなります。
 

また、遺産分割協議が決着しないまま、相続税を申告することにはデメリットもあります。

このページではそれらの事項について解説していきます。

 

相続税の申告と納付期限は変わらない

相続税は、相続人が相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告と納付を行います。

前述した通り、この期限は原則として延期されません
 

そのため、遺産分割協議が決着していなくても守らなくてはなりません

なお、「相続人の異動」や「相続人としてカウントしていた胎児が生まれた」などの特別な事由がある場合に限り、最大2ヶ月間の期限延長ができますが、かなり稀なケースなので基本的に延長は考えないほうが良いでしょう。

 

遺産分割協議が決着しない場合のデメリット

遺産分割を完了せずに相続税の申告と納付を行うと、以下のデメリットが生じます。
 

(1)相続税は法定相続分の割合で算出する

 
納める相続税は一旦、法定相続割合に応じた割合で納めることになります。
 

法定相続割合は下記の通りです。

①配偶者と子どもが相続人の場合
・配偶者は1/2
・子供は1/2(全員で分割)

②配偶者と親が相続人の場合
・配偶者は2/3

・子どもは1/3(全員で分割)

③配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合

・配偶者は3/4

・兄弟姉妹は1/4(全員で分割)

④相続人に配偶者がいない場合

・相続人全員で均等に配分

 
法定相続割合に応じた税額で納付を行うとなると、遺産分割で法定相続分より少ない財産を取得する予定でも、一旦は高い相続税を納めなければなりません。

納め過ぎた場合は後に還付の手続きをしなければ取り戻せないので、少々手間が増えてしまいます。

 

(2)一部の特例制度が適用不可

 
相続税には要件を満たすことで活用できる特例の控除制度がありますが、遺産分割が決着している必要があります。

  • 配偶者の取得財産について1億6千万円まで非課税になる配偶者控除
  • 自宅や貸付用の土地評価額が最大80%減額になる小規模宅地等の特例
  • 金銭で納付が困難な場合に、不動産等で相続税を支払う物納制度

 
遺産分割が終わっていなければ、上記の様な特例制度を使えなくなり、控除できた税金を支払うことになります。

ただし、申告書と一緒に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて提出した場合には、遺産分割を終えた後に再度申告書を提出すれば、特例制度が適用可能となります。
 

もし、申告期限の3年以内に遺産分割がまとまっていないのであれば、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月までの間に、「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する必要があります。
 

やむを得ない事由とは、遺産分割に関する訴訟がある場合、調停、審判の申立てがされている、または遺言で遺産分割が禁止されているケースです。

やむを得ない事由が解消したら、その日の翌日から4か月以内に遺産分割を完了しなければなりません。

 

(3)遺産分割の決着後に相続税申告書の再提出が必須

 
遺産分割が終わったら、実際に相続した財産額に基づいて相続税の申告と納付を行います。

つまり、申告書をもう一度提出しなければなりません。
 

期限は、遺産分割協議が完了してから4ヶ月以内となっています。

前述しましたが、相続税を多く支払っている場合は還付の手続きをしないとおさめすぎた税金は返って来ないので注意しましょう。

 

まとめ

相続人にどんな事情があろうが税務署は待ってはくれないので、遺産分割がまとまらなかったとしても相続税申告を行う必要があります。

期限までに相続税申告ができない場合には、特例や控除が使えなくなるリスクがあるので、どんな事情があっても、とりあえずは法定相続分の割合での相続税申告を期限までに行うようにしましょう。
 

相続の手続きでお困りのことがございましたら、 相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。

 

 


 
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