相続不動産を国に返還する「相続土地国庫帰属制度」について
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続で取得した不動産について住む人がない、賃貸物件としての活用も難しいのであれば、手放すことも検討しましょう。
というのも、不動産は所有しているだけで年に数回固定資産税が徴収される他、修繕費やメンテナンス費の負担もあるからです。特に人が住まない家は傷みやすいので、そのまま放置していると、多くのお金がかかるでしょう。
不動産を処理するには売却が最もベターな方法ですが、寄付という方法もあります。
実は相続不動産を国へ寄付できる制度も2023年から始まっています。
この制度を利用すれば、国に土地を引き取ってもらえる可能性がありますが、要件が厳しいこと、負担金があるなど、デメリットもあるので注意が必要です。
相続土地国庫帰属制度
(1)概要
相続土地国庫帰属制度は、相続や遺贈によって取得した土地を国庫に返還する制度です。
土地であれば何でも良いというわけではなく、寄付できる土地には条件が決められています。
また、その土地管理に要する10年分の費用を寄付する方が負担しなければなりません。
審査もゆるくはないことと、それなりの負担金があることから、安易に利用できる制度ではありません。
相続土地国庫帰属制度の施行日は2023年の4月27日であり、既にスタートしている状態です。
同制度の創設により、民法に所有権放棄に関する新たな規定は設けないこととなりました。
(2)申請資格者の要件
申請者は相続もしくは遺贈によって、その土地を引き継いだ方です。
生前贈与で土地をもらった方は対象ではありませんし、購入した方も同様です。
また、土地を複数人で共同所有しているのであれば、他の共有者の合意がなければ申請できません。
(3)土地要件
国に寄付できる土地は通常管理・処分するにあたり高い費用や労力がかからないものに限られます。
つまり、草木が生い茂っている荒れ地、産業廃棄物や建材が散乱しているような土地だと、国は引き取りません。
更地にして再利用するために、手間とお金がかかるからです。
具体的に制度の対象にならない土地は以下の項目に該当するものです。
- 土地の上に建物がある
- 人に貸している
- 担保権又は用益権が設定されている
- 通路や水路など、他人による使用がある
- 土壌汚染がある
- 境界が不明確である、または所有権の帰属等に争いがある
以下のものはケースごとに判断されます
- 崖地
- 車両・樹木等の残置物がある土地
- 地下埋設物等がある土地
- 災害などの危険区域
後に述べた項目に該当しても、一つ一つ整理していけば、審査に合格できる可能性はあります。
(4)費用
同制度には申請手数料と負担金が必ずかかります。
申請手数料は、登記上の土地の個数を表す単位である1筆当たりに1万4000円がかかります。
審査手数料は、申請書に収入印紙を貼って納付します。
このお金は申請を取り下げた時や審査が不合格になった際にも返ってきません。
また、承認された後に、土地の管理費として10年分の負担金を納付しなければなりません。
負担金は、基本的に1筆20万円がベースです。森林や田畑の場合は面積に応じ算定されることになります。
相続土地国庫帰属制度は安易に利用できない
相続土地国庫帰属制度で国に返還できる土地は、通常管理や処分に際し、高い費用や労力を必要としないものに限られます。
面倒な土地を国は引き取ってくれません。
また土地は更地であることが重要です。
崖地や適切な造林などが実施されていない森林など、活用ができないと判断されれば審査落ちとなります。
審査には半年から1年ほどの期間がかかります。
そして、10年分の管理費に相当する額を支払う必要があります。
100m2の住宅地の場合は審査料と合わせて40万円程度かかるので、負担はかなりのものになります。
遺贈寄付
国への返還制度を利用しない場合、国以外の団体に「相続人が寄付をする」か「遺言者が遺言によって寄付を指定する」という遺贈寄付もあります。
寄付を受け付けているのは、学校や公益法人・非営利団体等があります。
しかし、遺贈寄付もハードルが高いといえます。
そもそも、土地の寄付を受け付けている非営利団体はとても少ないのが現状です。
不動産は現金の寄付と比較すると、「団体活動への利用が簡単ではないこと」「換金の手間がかかること(売れないリスクもある)」などが主な理由です。
このような点から、相続不動産の寄付も難しいと言えます。
売却できなかった土地の処理として、寄付を選択するのも良いですが、簡単ではないことは覚えておきましょう。
まとめ
相続で取得した土地の寄付は簡単ではありません。「不要な土地は寄付すれば良い」と考えるのは危険です。
いずれにせよ土地は持っているだけで税金が発生しますので、早期に処理できるように対策をしておくべきです。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。