相続人同士が不仲の際に起こるリスク【遺産分割・相続税申告への影響】
厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続は遺族が上手く連携できれば、手続きも進みやすくなります。
しかし、相続人同士の仲が悪いケースもあるでしょう。兄弟間の仲が悪い場合もあれば、親と子供の関係が拗れている場合もあります。
このような場合は、遺産分割が中々完了しません。また、相続税申告にも影響を与えます。今回は「相続人同士が不仲の際に起こるリスク」について説明いたします。
遺産分割が進まない
相続人同士の仲が悪いからといって、特定の相続人を除外しての遺産分割協議はできません。相続人全員の合意のない協議結果は無効になるからです。かといって仲の悪い者同士だと、遺産分割が成立しない可能性もあります。これが大きな問題点です。
遺産分割は成立しなければ、財産も相続人全員での共同所有状態となります。不動産は故人名義のままの状態となり、自由に売却したり建て替えたりもできません。
また、相続税の申告・納付期限は、相続開始を知ってから(多くの場合、被相続人が亡くなった日)から10ヶ月以内です。この期限を過ぎるとペナルティとして、追加の税金が課せられてしまいます。(無申告加算税や延滞税など。)
相続税の申告・納付期限は一部の例外を除いて、延長されません。相続人同士の仲が悪くて遺産分割協議が完了していなくても、申告と納付だけは期限内に済まさなければなりません。
遺産の分割協議が完了していない場合、とりあえず「法定相続分に従って相続をした」と仮定して税額計算をします。あくまで遺産は相続人全員で共有しているという前提です。
仮の申告と納税をしておいて、後日に正式な遺産分割が完了した時に改めて申告をします。
一旦、申告と納付をしておけば、加算税および延滞税を払うことは免れます。ただし、一部の控除制度が使えないので、大抵のケースでは本来の税額よりも高い金額で申告と納税をします。
そのため、一旦の相続税を払うだけの資力が必要になります。また、一部の控除制度は遺産分割が終わっていないために適用できません。
- 相続税の配偶者控除…被相続人の配偶者が取得する財産は最大1億6千万円もしくは配偶者の法定相続分まで非課税にできる
- 小規模宅地等の特例…自宅や貸付用として利用している土地については相続税評価額を最大80%まで減額できる
これらの制度は税務署に「申告期限後3年以内の分割見込書」提出していれば、後日、遺産分割協議がまとまった際に申告書を再提出することで、適用可能となります。
申告期限後3年以内に遺産分割が完了しないなら、申告期限後3年を経過する日の翌日から2ヶ月が経つ前に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出します。
相続税の申告が連名でできない
相続税の申告をする際、通常なら相続人が共同の申告書を作成して申告します。
しかし、仲が悪い等、さまざまな事情によって共同の申告書を提出することが難しい場合もあります。
申告書は相続人ごとで個別に作成して提出しても構いません。しかし、個別に申告することによりいくつかの問題も出てきます。
一つ目の問題としては税務調査に入られる可能性が高くなること。
相続税は被相続人の財産総額を元に計算されます。まず預貯金や不動産・債務がいくらあるかを把握し、その財産金額を元に計算された税額を、各相続人が受け取った財産の割合で負担する、という流れになります。
つまり、各相続人がそれぞれ遺産の種類を独自に把握し、財産評価をして、申告書を作成するとなると、内容の異なる複数の申告書が税務署に届く可能性が高くなります。
申告書は計算する人の解釈によって財産の評価額も変わるため、納税額にも違いが出てしまうからです。1つの相続で、内容の異なる複数の申告書が税務署に届いてしまえば、税務署としては申告書の精査のために税務調査をする可能性が高くなります。
税務調査が入った場合、相続税を多めに申告・納付していた場合は問題ありません。税金の払いすぎは更正の請求によって返還してもらえば良いからです。
一方で、申告漏れや納税額の間違いが発見され、相続税が不足していた場合は、過少申告加算税や延滞税が課税されてしまいます。
また相続人それぞれが別々に申告書を作成する場合、税理士を雇う可能性もあります。それぞれが別々に税理士へ依頼していると、当然税理士報酬も余分にかかってしまいます。
他の相続人へ連絡が取れない場合
仲が悪い相続人への連絡先がわからないというケースでは、遺産相続手続きが止まってしまいます。
そのため、連絡先がわからない相続人については、不在者財産管理人を立てた上で「遺産分割協議への同意」を裁判所に認めてもらえば、遺産相続手続きを進められます。
不在者財産管理人は、連絡が取れず行方不明になっている相続人の代わりに、財産を管理する代理人です。
配偶者や相続人など利害関係者からの申し立てにより、家庭裁判所が不在者財産管理人を選任します。
選ばれた不在者財産管理人が遺産分割協議に参加すれば、遺産分割を進めることができるようになります。
まとめ
相続人同士の仲が悪い場合では、話し合いが困難になる可能性が高いです。そうなれば、手続きも停滞してしまいます。
相続人同士の話し合いが困難な場合、弁護士に依頼してすすめる方法がありますが、被相続人が存命のうちに関係性に気づいているなら、遺言書を用意しておきましょう。
遺言書があれば、遺産分割協議をする必要がないからです。相続手続きをスムーズにするためにも作成をお勧めいたします。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
行政書士、司法書士、弁護士、不動産鑑定士との強いネットワークを活かして、あなたの相続の悩みをサポートいたします。
まずはお気軽に初回無料相談をご利用ください。
■お問い合わせフォームから今すぐ初回無料相談をしたい方→こちらをクリック
■お電話で今すぐ初回無料相談をしたい方→046-297-0055(受付時間:平日9:00~17:00)
1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。