相続手続きがしやすくなる! 法定相続情報証明制度とは
厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続手続きでは戸籍謄本が必要です。戸籍によって、被相続人の死亡や相続人との関係性を証明できるからです。
これらの戸籍は手続きの度に法務局や銀行、保険会社、税務署等の窓口まで持っていかなければなりません。毎回、戸籍の束を持参するのも労力がかかりますし、手続きの最中に一部を紛失する懸念もあります。
このようなリスクを解消するため、相続では「法定相続情報証明制度」と言う制度があります。この制度では、「法定相続情報一覧図」を戸籍謄本の束の代わりとして各種相続手続きに使うことができます。
戸籍の束を一覧図にまとめられるので、書類はかなりスッキリします。
相続手続きで必要な戸籍謄本とは
相続手続きで必要な戸籍謄本は二つあります。
一つ目は被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本です。この戸籍謄本は、被相続人の死亡と法定相続人を証明するために必要なものです。
法定相続人になれる親族の範囲は民法で決まっており、被相続人との関係性によって順位も定められています。法定相続人が誰なのかは、被相続人の出生まで遡ることで明らかとなります。
二つ目は相続人の戸籍謄本です。これは相続人が生存を証明するものです。
被相続人の戸籍謄本で、被相続人の親族の存在がわかっても、その方が法定相続人なのかは、存命なのかどうかも調べなければなりません。死亡していれば相続人にはなれないからです。
そのため、相続人全員の戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)も必要になります。
法定相続情報証明制度とは
前述したように、相続手続きでは、「被相続人が亡くなった事実」と「手続きをする方が相続人である事実」を証明するための戸籍謄本が必要になります。
そして、銀行や法務局での手続きには、原則として原本が必須です。原本は手続きが終われば返してもらえますが、他の手続きも同時並行でやろうとすると、戸籍謄本は何枚も持っていないといけません。そうなれば、戸籍が大量に必要になり、管理も大変になります。
このような手続き上の煩わしさを軽減する目的で、作られたのが「法定相続情報証明制度」です。
この法定相続情報証明制度では、故人と相続人の関係を法務局で証明してもらいます。具体的には相続人が自身で作った相続関係者の図=法定相続情報一覧図を法務局に提出し、法務局で認証文・認証印を入れてもらいます。
手続きが完了すると、法定相続情報一覧図の写しが交付されます。この資料は、たった1枚の紙で「被相続人が亡くなった事実」と「手続きをする方が相続人である事実」を証明できるので、戸籍の代わりとなるのです。
なお、法定相続情報証明制度は無料で利用可能です。法定相続情報一覧図の写しの発行も無料です。
法定相続情報証明制度のメリット
(1)「戸籍の束」を出し直す負担がなくなる
法定相続情報証明制度では、法務局での手続きの後に一覧図の写しが交付されます。
この一覧図が戸籍謄本の代わりとなり、各種の手続きができるようになります。これまでは、戸籍謄本、改製原戸籍、除籍謄本などの多くの資料を取得して、各相続手続きの度にそれらを窓口まで持っていく必要がありました。
しかし、法定相続情報証明制度のおかげで、戸籍の束をわざわざ持参する必要もなくなるのです。
(2)複数の手続きを並行できる
金融機関等に提出した戸籍はすぐに返却されません。
よって、複数の銀行で口座の名義変更をしようとすれば、順次戸籍の返還を待ってから手続きをするか、原本を増やして手続きをすることになります。
原本を増やすと、戸籍の量も増えてきます。そうなれば、管理が面倒になり、紛失のリスクも出てきます。
この点、法定相続情報一覧図の写しであれば、資料は1枚で済みます。法務局で必要な枚数を複数交付してもらっても、資料が嵩張ることはないでしょう。
(3)戸籍よりも一覧図の方がわかりやすい
戸籍謄本は読むのがやや難解な資料で、読み解くために時間がかかります。
法定相続情報一覧図ですと内容がわかり易く、確認作業に手間が要りません。そのため、申請先でも確認作業が減るので、結果として手続きの時間短縮となります。
法定相続情報証明制度を利用するには
(1)戸籍謄本等の必要書類を収集する
法定相続情報証明制度を利用するには、まずは通常の相続と同じように、被相続人と相続人全員の戸籍を取得しましょう。
それぞれの戸籍は市区町村役場に申請し、取得します。窓口が遠い場合は郵送で請求しても大丈夫です。
最終的に法務局での手続きで必要な書類は以下の通りです。
- 被相続人の戸籍または除籍謄本(出生から死亡まで連続したもの)
- 被相続人の住民票除票または戸籍の附票
- 相続人全員の戸籍謄本または戸籍抄本(相続発生以降のものであること)
- 申出人の運転免許証・マイナンバーカードのコピー(氏名・住所確認用)
(2)法定相続情報一覧図の作成
被相続人と、戸籍の記載から判明する相続人を一覧にした図「=法定相続情報一覧図」を作成します。勘違いされる方がいますが、一覧図は相続人側で作成します。
法務局はその一覧図が正しいかどうか確認し、認証するだけです。
書き方は法務局のWebページ「主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例」を参考にしましょう。
法務局ページ:主な法定相続情報一覧図の様式及び記載例
(3)申出書の記入、法務局へ申出
申出書に必要事項を記入したら、前述した戸籍謄本等の資料、法定相続情報一覧図を添えて管轄の法務局に提出します。
なお、直接法務局の窓口に行かなくても、郵送で申請できます。ただし、この場合は切手を貼った返信用封筒を準備しておくこと。
法定相続情報一覧図の写しが交付されるまで、1〜2週間程度は見ておきましょう。
まとめ
法定相続情報証明制度について解説しました。
法定相続情報一覧図を自分で作る手間はありますが、法務局で認証してもらえれば、戸籍の束を持ち歩かなくて済みます。
不動産の相続登記や銀行口座の名義変更、相続税の申告など、戸籍を必要とする手続きはかなり楽になるでしょう。
法定相続情報証明制度は無料で利用でき、法定相続情報一覧図の発行手数料は何枚でも無料ですので、利用を検討すると良いでしょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。