知らないと損する!?相続開始の初期段階で避けるべき行為とは

厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続は、ある日突然やってくることが多く、準備不足のまま対応を迫られるケースも珍しくありません。
相続には大きく分けて「単純承認」「限定承認」「相続放棄」という3つの選択肢がありますが、実は何もしないまま過ごしていると、自動的に「単純承認」したとみなされてしまいます。
故人の財産はプラスの財産だけでなく、借金等のマイナスの財産もあります。単純承認となれば、それもすべて相続することになります。もし、借金が高額の場合、相続によって多大な返済に追われることになる可能性もあります。これが「相続の怖いところ」です。
単純承認とは?
まずは基本的なところから確認しておきましょう。
相続には以下の3つの方法があります。
- 単純承認:故人(被相続人)のプラスの財産もマイナスの財産(借金など)もすべてそのまま引き継ぐ方法です。
- 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産も相続する方法。マイナスが多くても、それ以上は背負わなくて済みます。
- 相続放棄:一切の相続権を放棄する方法。財産も借金も一切引き継ぎません。
単純承認は「そのまま全部引き継ぐ」という方法ですが、実は自分が望んでいなくても一定の行動をとると自動的に単純承認とされてしまうことがあります。これが「みなし単純承認」と呼ばれるものです。
単純承認とされると、相続人はすべての財産と債務を引き継ぐことになります。
もし故人に多額の借金や滞納税金などがある場合、それもすべて相続することになり、借金返済の義務も生じることになります。たとえば、遺産に預貯金が100万円、借金が500万円ある場合、限定承認や相続放棄をしていれば損害を避けられますが、単純承認してしまうと、差額の400万円を自分で払うことになります。
どんなときに「単純承認」とみなされるの?
民法の規定により、以下のようなケースでは、たとえ本人にそのつもりがなくても「単純承認した」と見なされてしまいます。
(1)相続財産を処分した場合
もっともよくあるのがこのケースです。
遺産の処分は「財産を自分のものとして扱った」行為とされるため、結果としてすべての財産・債務を引き継ぐことになります。
(2)熟慮期間(3か月)を過ぎた場合
相続の開始を知った日から3か月以内に「相続放棄」や「限定承認」の手続きをしなければ、自動的に単純承認したことになります。
この3か月間を「熟慮期間」といいます。
(3)相続財産を隠した場合
民法では、次のような行為も単純承認とみなすと規定しています。
- 相続財産を隠していた
- 相続財産目録に一部の財産を故意に記載しなかった
このように「こっそり財産を操作する」行為は、自分のものとして扱っているとみなされ、単純承認が成立します。
単純承認とみなされる「相続財産の処分」の具体例
「相続財産の処分」とは、単に売ったり、消費したりするだけでなく、「相続財産を自分の意思で動かした」と判断されるような行為全般を指します。
以下に、実際に単純承認と判断された主なケースを紹介します。
(1)故人の預金を引き出して使った
例:相続人が、故人の通帳から生活費を支払った
→「ちょっとくらい…」と思ってしまう人も多いですが、金額の大小に関係なく単純承認とされます。なお、葬儀代を相続財産から払っても、社会通念上相当な範囲であれば財産の処分には該当しません。ただし、葬儀規模によっては認められない可能性もあります。
(2)故人名義の車を売却した
例:「不要だから」と故人の車を売却した
→名義変更や売却は「処分」にあたります。他にも故人の家具・家電をリサイクル業者に引き取ってもらった場合も処分行為とされます。
(3)不動産を貸した・売った・改築した
例:故人の自宅を第三者に貸した、売った、リフォームした
→こうした行為も、自分の所有物として扱っているとされ、単純承認につながります。
(4)相続財産の一部を他の相続人や親族に譲った
例:「兄弟の取り分だから」と勝手に現金や物品を分けた
→正式な手続きを経ないで分配することは、処分行為になります。
(5)故人が加入していた保険の解約返戻金を受け取った
例:契約者・受取人が被相続人である保険を解約して返戻金を受け取った
→積立式の生命保険の場合、契約者死亡によって保険契約が解約され、解約返戻金が支払われることがあります。これは相続財産ですから、相続人が受け取れば財産処分として扱われます。
なお、被相続人が被保険者・契約者であり、相続人が受取人である生命保険金(死亡保険金)では、「受取人の固有の財産」となるので、単純承認には該当しません。
財産処分にあたらない行為の例
次のような行為は、基本的には「処分」とはされず、単純承認には該当しないとされています。
- 相続財産の調査・目録作成
- 相続財産の保管(例えば故人の自宅の封鎖・鍵の管理など)
- 不用品の一時的な仮置き・保管目的の移動
- 一般的な葬儀費用の支出
中には微妙なケースも多いため、不安なときは必ず専門家に相談しましょう。
まとめ
単純承認が成立すると、相続人にとって不都合なケースもあります。
不利益を被らないためにも相続が始まったら以下の点に注意しましょう。
- 被相続人の財産や借金の有無をできる限り早く、詳細に調べる
- 借金が多いことがわかったら、「相続放棄」または「限定承認」の判断をし、期間内に手続きをする
- 判断がつくまでは被相続人の財産に手を付けない
とくに、預金の引き出しや不動産の売却は、気軽にやってしまいがちですが、これが命取りになります。「ちょっとした行為が取り返しのつかない結果になる」ということに十分留意しましょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。