葬儀費用と相続の関係 費用の扱い・負担者・トラブル防止策まで解説

厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
人が亡くなれば、遺族はさまざまな対応に追われます。中でも大きな出費となるのが葬儀です。通夜や告別式の準備、火葬、埋葬、寺院へのお礼など多岐にわたって費用が発生します。一般的な相場としては、葬儀一式で200万円前後かかるといわれています。
ではこの葬儀費用は、法律上どのように扱われ、誰が負担することになっているのでしょうか? この記事では、葬儀費用と相続税との関係や、法的な位置づけ、費用負担をめぐるトラブルと対策について解説します。
葬儀費用は相続税の計算時に控除できる
被相続人の遺産についてはその総額に相続税が課されますが、この遺産総額を計算する際に、葬儀費用は差し引くことが認められています。
これは国税庁の公式見解であり、「相続税法基本通達」にも明記されています。
- 控除対象となる費用の具体例:
- 通夜、告別式、火葬、埋葬などにかかる費用
- 遺体・遺骨の移送費用(搬送車、遠方からの回送等)
- 仏式葬儀における寺院へのお布施など(ただし戒名料の扱いには注意が必要)
- 死亡の確認や捜索、搬送にかかる費用(災害・事故死の場合など)
つまり、これらの費用を差し引いた上で相続税を計算できるので、葬儀費用を正しく申告することで節税効果が期待できます。
ただし、次のような費用は控除対象になりません。
- 香典返しや法要の費用
- お墓の購入代(墓地・仏壇などは「祭祀財産」に該当し、非課税だが控除対象ではない)
葬儀費用の「負担者」は法律で決まっていない
多くの人が「喪主=費用を払う人」と認識していますが、実は誰が葬儀費用を負担するかについて、明確に定めた法律は存在しません。
実際には、葬儀は亡くなって数日以内に行われるため、遺産相続前に支払わなければなりません。そのため、喪主や遺族の誰かが「一時的に立て替える」ことが多くなります。
問題になるのはその後で、「立て替えた人に他の相続人が応じてくれるかどうか」がトラブルの火種になります。
そもそも葬儀費用は「相続開始後に発生する支出」であるため、相続財産(=被相続人の債務)そのものではありません。
となれば、「当然に相続人全員が負担すべき債務」には該当しないのです。
葬儀費用をめぐる4つの典型的なトラブル
(1)費用負担の不公平
たとえば長男が喪主として200万円を支払ったのに、他の相続人が「知らなかった」「払いたくない」と主張するケースは非常に多くあります。
不公平感が原因で遺産分割協議がこじれることもあります。
(2)相続財産からの支出を巡る対立
相続財産に現金が多ければ精算しやすいですが、不動産や株式しかない場合はすぐにお金を用意できません。その結果、喪主だけが損をしたように感じてしまうこともあります。
(3)事前の話し合い不足
葬儀の形式や費用を誰が決めるか、どの程度の規模にするかなどが事前の話し合いが不十分なまま葬儀を行うと、後で「こんなに豪華にするとは思わなかった」と不満の声が上がることもあります。
また、遠方に住む相続人が葬儀に参加しなかった場合、費用を支払う意識が低くなり、負担を巡る対立が生じます。
(4)祭祀承継者との意見の食い違い
仏壇や墓を誰が継ぐか、管理するのかが決まっていないと、今後の管理費や納骨費用の負担で揉めることがあります。
伝統的に「長男が継ぐ」とされてきた一方で、現在は「兄弟平等に負担すべき」という考え方も増えており、対立するケースが目立ちます。
相続財産からの支払いを遺言に書いても効力はないが、「想い」を伝える手段になる
葬儀費用について「遺言に書けば遺産から払ってもらえる」と思われがちですが、実はそうではありません。
法的に有効な遺言は、「死亡時点の財産に関する指示」が対象です。葬儀費用のように「死亡後に発生する支出」は、遺言の法的効力の及ぶ範囲外です。
とはいえ、遺言書に「葬儀費用は遺産から支払ってほしい」などと書いておくことは無駄ではありません。これは「付言事項」だからです。
付言事項には法的拘束力はありませんが、故人の遺志として相続人が尊重してくれる可能性が高いからです。遺産から葬儀費用が支払われれば、負担についての争いは起きないでしょう。
トラブルを防ぐための3つの具体策
(1)被相続人の生前に葬儀について話し合いをしておく
葬儀に関する希望や、費用の負担方法などは、本人が元気なうちに家族で共有しておくのが理想です。前述したように遺言書の付言事項に記すのも効果的です。
(2)喪主の負担を記録で残す
誰がいくら支払ったか、明細や領収書を保管し、相続時に明確に説明できるようにしておきましょう。支払いの証拠がないと後の精算で揉めやすくなります。
(3)相続財産の中から支払う前提で協議する
遺産に現金がある場合は、葬儀費用をそこから優先的に支払うように家族間であらかじめ合意をとっておきましょう。
不動産や株式しかない場合は、何を売却して支払いに充てるかもあらかじめ検討しておきましょう。
まとめ
- 葬儀費用は相続財産から払って良い
- 誰が費用を負担すべきかは法律で明確に決まっていない
- 相続人間の認識のズレにより、トラブルに発展しやすいので争いを防ぐ工夫が必要
- 喪主が立て替えた場合、領収書を保存しておくこと
- また事前に清算ルールについて明確化しておくこと
葬儀費用負担については、相続の中でよく見られる問題の一つです。
トラブルを避けるためにも、本記事で述べた対策をしておきましょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。