【相続でマンションを相続したら】令和6年からの新ルールを含む評価方法を解説

厚木市で 相続 の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
ご家族が亡くなって、その財産の中に「自宅」が含まれているケースは多いです。自宅と聞くと、戸建てをイメージするかもしれませんが、マンションも非常に多いものです。
マンションの相続は、戸建ての相続とは少し勝手が違います。特に2024年(令和6年)から新しいルールが始まり、少し複雑になりました。
今回は、マンションを相続した時に「まず何をすべきか」「評価方法はどうするのか」、そして「新しいルールで何が変わったのか」をご説明します。
マンションを相続したら必ず税金がかかるのか
相続財産にマンションがあるからといって、必ず相続税がかかるわけではありません。
「え、そうなの?」と驚かれるかもしれませんが、相続税には「基礎控除(きそこうじょ)」という非常に大きな非課税枠が設定されているからです。
相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の人数)
上記で計算した金額を、遺産の総額が「超えなかった」場合は、相続税の申告をしなくて良いのです。(もちろん、納税も不要です。)
例えば、法定相続人が配偶者の奥様と子供2人(合計3人)の場合、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円」となります。
旦那様が遺した財産の総額(マンションの他に、預貯金、株、借金なども全部合わせて)が4,800万円以下であれば、相続税はかかりませんので、税務署に申告書を出す必要はありません。
相続税の申告は、まず「相続人は何人なのか、相続財産が全部でいくらになるのか」の把握がスタートラインです。
マンションの相続税評価方法とは
預貯金は口座にあるお金がそのまま評価額になりますが、不動産はそうではありません。
また、自動車や骨董品であれば相続開始時点の「時価(市場価格)」で計算しますが、不動産は税法で決められた特別な方法で「評価額」を算出します。
マンションも不動産ですから、このルールに従います。
マンションの評価は、大きく分けて「建物部分(居室部分)」と「土地部分(マンションが建っている敷地全体の一部)」の2つで構成されています。
(1)建物部分(居室部分)の評価
建物部分の評価は、比較的シンプルです。原則として、「固定資産税評価額」という金額をそのまま使うからです。
固定資産税評価額は、毎年春ごろに市区町村から送られてくる「固定資産税の課税明細書」に記載されていますから、相続が起きた年の「固定資産税評価額」を確認しましょう。
課税明細書が見当たらないという場合は、そのマンションがある市区町村の役所(都税事務所など)で「固定資産評価証明書」や「名寄帳(なよせちょう)」を取得しましょう。
(2)土地部分(敷地)の評価
マンションの土地は、入居者全員で「共有」しており、相続される部分はその土地全体の「一部」です。この割合を「敷地権割合」と言います。
マンションの土地評価は敷地権割合を含めて計算します。
まずは、マンションの敷地「全体」の評価額を出しますが、これは戸建ての土地と同じ「路線価方式・倍率方式」で計算します。
路線価が設定されている地域:「路線価」を使って計算(路線価方式)
それ以外の地域:「固定資産税評価額」に国が定める「倍率」を掛けて計算(倍率方式)
「路線価」や「倍率」は、国税庁のホームページで誰でも調べることができます。
前述の方法で求めた評価額に「敷地権割合」を掛け算します。
土地部分の評価額=敷地全体の評価額×敷地権割合
敷地権割合は、マンションの売買契約書や登記簿(登記事項証明書)に必ず記載されています。
戸建てと違って、土地全体の評価額を全戸数で分け合う形になるため、一戸あたりの土地の評価額は低くなる傾向があります。
令和6年(2024年)からの新ルール「区分所有補正」とは?
令和6年(2024年)1月1日以降に相続や贈与で取得したマンションについては、「区分所有補正」という新しいルールが適用されることになりました。
なぜルールが変わったのかというと、いわゆる「タワマン節税」への対策です。
これまでの計算方法でもわかる通り、同じマンションの「2階の部屋」と「50階の部屋」でも、床面積が同じなら、相続税評価額はほとんど変わりませんでした。
しかし、実際の市場価格(売買される価格)は、どうでしょうか?当然、眺望の良い高層階の部屋のほうが、低層階の部屋よりもずっと高く売れますよね。
この「実際の市場価格」と「相続税の評価額」の間に、大きな「ズレ」がありました。このズレを利用して、高額なタワーマンションの高層階を現金で購入し、相続税評価額を(市場価格に比べて)極端に低く抑える、という節税対策が広く行われていたのです。
そのため国税庁は、このズレを是正するために新しいルールを導入しました。それが「区分所有補正」です。
「区分所有補正」で何が変わる?
簡単に言えば、「市場価格が高いと見込まれる部屋ほど、相続税評価額も引き上げる」という補正(上乗せ)が入るようになりました。
具体的な計算式は以下のようになります。
マンションの相続税評価額=(従来の建物評価額×区分所有補正率)+(従来の土地評価額×区分所有補正率)
つまり、建物と土地、両方に新しい補正率が掛け算されます。
この「区分所有補正率」は、以下の4つの要素で決まります。
- 建物の築年数
- 建物の総階数
- その部屋の所在階(何階にあるか)
- 敷地持分(土地の持ち分)の割合
非常に複雑な計算になりますが、ざっくり言えば「築年数が新しく、総階数が高く、その部屋が上層階にあるほど、補正率が高く(=評価額がアップ)なる」ということです。
この改正によって、特に都市部のタワーマンション高層階などは、従来の評価額よりも大幅に相続税評価額が上がることになりました。もちろん、タワーマンションでなくても、この補正は全国の分譲マンションに適用されます。
具体的な補正率の計算は国税庁のホームページで計算用の明細書(Excelシート)が配布されています。
かなり専門的なので、計算が分からない方は専門の税理士へ相談してください。
まとめ
マンションの評価は、この新しい「区分所有補正」の登場で、一般の方がご自身で計算するのも非常に難しくなりました。
そもそも、不動産の評価は専門知識が必須です。もしマンションを相続することになったら、できるだけ早く、相続に強い税理士などの専門家に相談し、ミスのない申告準備を進めることを強くおすすめします。
相続税の申告と納税の期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内」と決まっています。「10か月もあるなら余裕」と思うかもしれませんが、この期間内に、他の相続手続きと並行しながら、作業を完了しなければなりません。
期限内に確実に申告するためにも是非、税理士を頼ってください。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。
