こんにちは。
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。

相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。

 
 

相続財産の総額次第では 相続税 が発生します。

相続税を支払う方法には、「分割された相続財産から支払う」方法や、「相続人自身の所有財産から支払う」といった方法があります。

ただし、以下のような状況では、相続税が支払えなくなる可能性もあります。

  • 相続財産に不動産の割合が多く、相続税を支払うだけの現金がない
  • 相続人に資力がない

相続税が課税される財産は現金だけでなく、土地や建物といった不動産、自動車などの動産も該当します。

特に不動産は早急な換金が難しいため、相続財産の中に占める割合が大きいと「高額の相続税が生じるにも関わらず相続税を支払えない」という事態を招きやすいでしょう。

しかし、悲観することはありません。
相続税を支払えない状況に陥っても、救済措置となる制度が用意されているからです。

このコラムでは相続税が支払えなくなった場合の対処法をいくつかご紹介いたします。



相続税を支払わないことで起こるリスク

(1)延滞税が課せられる


相続税を期限内に支払わないと、「延滞税」というペナルティーが発生します。

税金には法定納期限というものがあります。各税法で本来納付すべき期限までに税金を支払っていない場合には、日数に応じて利息に相当する延滞税が課せられます。


相続税の法定納期限は相続税の法定申告期限と同じく「相続開始を知った日(死亡日)の翌日から10ヶ月」です。

この期限を過ぎれば、1日ごとに延滞税が加算されていくことになります。


なお、延滞税の税率は納期限の翌日から2ヶ月を経過する日までと2か月を経過した日以降で以下のように変わります。

納付期限の翌日から2ヶ月間の延滞で課せられる利息…2.5%
納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降の延滞で課せられる利息…8.8%


※令和3年1月1日~令和3年12月31日中に適用される割合。
2ヶ月を超えれば、より高い税金を支払うことになります。



(2)加算税が課せられる


期限までに申告も行っていなかった場合や、申告内容が少額だった場合は、延滞税に加えて加算税も負担しなければなりません。

    無申告加算税…正当な理由なく、期限までに申告・納税を行わなかった場合に課税されます。本来の税額の50万円までは15%、50万円を超える部分に20%が課税されますが、税務署の指摘前に、自主的に申告と納付を行うと5%に税率が軽減されます。

    過少申告加算税…申告書に記載された納税額が過少であった場合に課税されます。追加税額の10%が課税されますが、この金額が期限内申告税額と50万円のどちらか多い方の金額を超える部分については、15%が課税されます。税務調査を受ける前に自主的に申告をした場合は、50万円までは5%、50万円を超える部分に10%の課税となります。

なお、故意に申告しなかったり財産を隠しているなどの悪質なケースでは、さらに高額な重加算税がかけられる可能性もあります。



(3)財産の差し押さえも


相続税を支払わずに、滞納し続けていると、国税庁に財産を差し押さえられる怖れがあります

差し押さえられるのは不動産が多いですが、自動車や骨董品などの動産の場合もあります。


さらに税務当局が納税が不可能と判断した場合には、他の相続人に税金が負担させられることになります

同じ被相続人から相続した遺産の相続税については、「連帯納付義務」といって相続人全員で納付義務が生じるからです。


したがって、相続税が支払えなくなると、他の相続人にも迷惑をかけることになります。




相続税が支払えない場合の対策①延納

相続税を現金一括で期日までに払えない場合、最長で20年の期間にわたり分割で払うことができる「延納」という制度があります。


同制度は申告期限内に申請をする必要があり、申請が認められれば、延納制度を利用できます。

ただし、相続人自身に相続税を支払える資力があると判断された場合、利用はできません。


延納制度の利用には以下の条件をすべて満たします。

  • 相続税額が10万円を超えている
  • 現金一括納付が困難である正当な理由があり、困難とする範囲内の金額である
  • 申告期限までに「延納申請書」及び「担保提供関係書類」を提出する
  • 延納税額、および利子税額に相当する担保を提供する
    (ただし、延納税額が 100 万円以下で、延納期間が 3年以下の場合はその必要はない)

担保として認められるものは以下の通りです。

  • 国債、地方債
  • 社債、その他有価証券で税務署長が確実と認めるもの
  • 土地、建物
  • 税務署長が確実と認める保証人の保証

延納制度の利点は相続税を少しずつ納付できる為、支払い負担が軽減される点です。

また、相続税の支払いのために、ほかの財産を売却しなくて良いことも大きなメリットといえます。


しかし、延納をしている期間は、利息としての利子税がプラスされるので、結果的に本来支払うべき相続税よりも高い金額を納付しなければなりません。

また、制度利用には担保の提供が求められますが、担保として認められるかどうかのハードルも高く、そこが難関といえます。




相続税が支払えない場合の対策②物納

延納制度で支払い困難となった場合は、「物納」という選択もあります。


物納制度とは、相続税を相続財産の不動産や株などで納める方法です。

物納が認められるのは相続人が元来所有していた財産ではなく、相続財産に限ります。


物納の利用には、以下の条件全てを満たす必要があります。

  • 延納による金銭納付が困難であること
  • 物納に充てる財産を申請すること
  • 申告期限(10ヶ月以内)までに「物納申請書」を提出すること

物納が利用できるのは、現金納付や延納制度でも納付困難な場合のみです。

審査が厳格な為、利用する条件は非常に厳しいものと言えます。


物納のメリットは、納税資金を用意できなくても、不動産や株など相続財産そのものを納めることができるという点です。

デメリットとしては、物納に充てられる財産の種類や優先順位は決まっており、ご自身の都合で選ぶことができません。


なお、買い手がつかないような不動産だと、物納が認められません。

また、物納する財産は、相続税を計算する評価額ベースで価値が決まるので、市場価値より安い評価にされてしまいます。




相続税が支払えない場合の対策③不動産等の現金化

相続財産に現金や預貯金がなくとも、資産価値が高いものがある場合は、ご自身で売却して現金化し、そのお金で相続税を支払うという方法もあります。


不動産については自身で売却する方が、物納を行うよりも断然お得です。

しかし、すぐに売れない場合は、期限までに納付金を準備できなくなる可能性があったり、想定よりも安くなってしまい、金額が確保できない場合もあります。


不動産を売却する為には、登記の手続きなどに要する時間などを含め、申告期限内に売却が完了できるかどうか慎重に判断する必要があります。

なお、売却して利益が生じると、譲渡所得税がかかることもデメリットです。




相続税が支払えない場合の対策④金融機関から借り入れ

金融機関のローン等を利用して相続税を支払う方法もあります。

資金の借り入れがうまくいけば、期限までに相続税の支払いができますし、手放したくない不動産や財産を売らずに済みます。


ただし、お金の借り入れをする為、利息がかかってしまいます。

条件次第ではかなり高利になる場合もあるので、注意しましょう。




まとめ

相続税が支払えない場合の対策をいくつかご説明いたしましたが、いかがだったでしょうか。

今回ご紹介した対処法の他にも、有効な方法がありますが、それは相続専門の税理士に相談することです。


税理士の役目はいかに税金を抑えるかです。

そのため、相続開始前や開始時に相続税に強い税理士に依頼しておけば、本来の税額よりも大幅に減額できる可能性もあるのです。


また、相続税に強い税理士の場合、ここで述べてきた対処法にも詳しいため、各相続の状況に合わせて最良の選択をアドバイスすることができるでしょう。


どの方法がベストであるかは、ご自身のおかれている状況によって変わります。

対応に迷われている場合は、早急にご相談されることをお勧めいたします。






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