孫にも遺産を渡したい場合に注意することとは【相続税が多めにかかる?】
厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
配偶者や子供だけでなく、孫にも遺産を渡したいと思う方もいるでしょう。配偶者や子供がいる場合、法定相続人の順位を考えると、孫は相続人になれませんが、遺言書等いくつかの方法を使えば、遺産を相続させることは可能です。
ただし、孫が遺産を取得する場合は税金が多めにかかるということを踏まえておかねばなりません。
相続税には「孫や兄弟等に財産を相続させた場合、相続税が2割加算される」という取り決めがあるからです。
孫に相続させる方法
(1)遺言書で受遺者に指定する
法定相続人においては民法の中で優先順位(=相続順位)が定められています。
配偶者は必ず法定相続人になりますが、他の血縁者は以下の順位に従って法定相続人の権利を有することになります。
第2順位…両親(祖父母)
第3順位…兄弟姉妹(甥・姪)
つまり、相続順位を考えると、子供がいる場合、被相続人の孫は法定相続人にはなれず、遺産の取得権もないのです。
このように、相続権のない人に遺産を引き継がせるには、遺言書の作成が有効な手段となります。遺言書の中で受遺者を指定すれば、法定相続人でなくても財産を受け取ることが可能です。
遺言書では、不動産や預貯金などの特定の財産を渡すこと(特定遺贈)や、財産の何割かを渡すこと(包括遺贈)もできます。
ただし、遺言書で遺贈をする場合、他の相続人の遺留分権(法定相続人に最低限保障される遺産取得分)を侵害しないように注意しましょう。
(2)代襲相続
代襲相続とは相続権を持つ相続人が死亡等によって相続権を失っている場合、その相続人の子供が代わりに相続財産を取得する制度です。
相続開始時点で、被相続人の長男がすでに死亡していた場合、財産取得権は長男の子ども(被相続人にとって孫)が承継します。
代襲相続人の法定相続分は、被代襲相続人と同じです。元々の推定相続人が被相続人の妻・長男の二人で長男が亡くなっていたケースで見ると、代襲相続人の長男の子供(被相続人の孫)が受け取る相続財産分は2分の1のままです。
配偶者:1/2
子供 :1/2(代襲相続者も同じ1/2)
代襲相続の要件は本来の相続人が相続権を失っていることであり、「死亡」の他にも、「相続欠格や相続廃除」があった場合にも認められます。
なお、被代襲者になれるのは、被相続人の子供や兄弟姉妹の関係にあたる相続人です。配偶者や父母等の直系尊属が亡くなっていても代襲相続は起こらないのです。
そして、代襲者は被代襲者の子供や孫になります。被代襲者が被相続人の子供なら、代襲相続は何代にも渡って行えます。(ただし、兄弟姉妹が被代襲者の場合、代襲相続は兄弟姉妹の子供である被相続人の甥や姪の1世代までとなります。)
ちなみに相続放棄では代襲相続は起きません。相続放棄をすれば最初から相続権を持たなかったことになるので、代襲相続も生じないのです。相続権は次の順位の方に移ります。
(3)養子縁組
被相続人の子供は法定相続人の第一順位ですので、子供がいる場合は必ず相続人になります。
この時、子供には実子だけでなく養子も含まれます。そのため、養子縁組制度を利用して孫と養子縁組している場合、孫も「被相続人の子供」として相続権を取得します。
法定相続分も実子と同様の割合になります。例えば相続人が実子2人、孫が1人のケースで孫を養子にしていた場合、各相続人の法定相続分は3分の1ずつです。
孫が遺産を取得すると相続税が2割加算される
相続税には2割加算のルールがあります。この制度は、相続における遺産取得者が配偶者や一親等の血族(被相続人の子供・親)以外だった場合、相続税が2割増しになるというものです。
対象者と非対象者は以下の通りとなります。
- 対象者
- 孫・ひ孫
- 兄弟姉妹
- 甥・姪
- 子供の配偶者
- 内縁の夫や妻
- 遺贈によって財産を取得する人(受遺者)
- 非対象者
- 配偶者
- 子供
- 父母
- 養子(孫を養子にした場合を除く)
- 子供が亡くなっている場合の代襲相続人(=被相続人の孫)
- 親が亡くなっている場合の代襲相続人(=被相続人の祖父母)
上記の通り、孫が遺産を受け取る場合には2割加算の対象者です。孫は子供や配偶者などの他の法定相続人と比較して多めに相続税を払わないといけません。
どうしてこのように税負担が変わるのか。その理由は、「相続税額の負担調整」にあります。
相続税は、相続ごとに課税されます。被相続人の子供が遺産を受け取っても相続税はかかりますし、その子供が亡くなって孫が財産を相続した場合も同じです。
それを踏まえると、最初の相続で孫が遺産を取得すると、本来であれば二世代分の相続税がかかるはずのところを、一世代分の課税を免れることになります。(いわゆる、世代飛ばしです。)
税金を公平に負担する意味でも、孫への相続では相続税が多めに課税されるのです。
代襲相続の場合、2割加算にはならない
孫に相続させる場合、それが代襲相続なら2割加算の対象ではありません。
代襲相続は元々の相続人に非行があって相続欠格や相続廃除で相続資格を失った場合にも認められます。このケースで、被相続人の孫が代襲相続をしても2割加算の対象外となります。
養子にした場合の注意点
民法上は養子の数には制限はなく、何人でも養子にして構いません。ですが、相続税法上では、養子を相続人にカウントできる人数は決まっています。
相続税では基礎控除があり控除額は以下のように計算します。
「相続税の基礎控除:3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」
つまり、法定相続人の数が多ければ控除額も多くなります。
しかし、それを許すと相続税が大幅に減らせてしまうので、
- 実子がいる場合、養子は1人まで
- 実子がいない場合には養子は2人まで
を相続人にカウントできるというルールがあるのです。
孫がたくさんいるので、全て養子にすれば基礎控除額を無限に増やせる!ということには残念ながらなりません。
まとめ
孫が遺産を相続すると基本的には、代襲相続以外では相続税が2割加算になると覚えておきましょう。
税金を抑えて孫に遺産を渡したいのであれば、生前贈与が有効です。贈与金額を基礎控除額内にすれば非課税での財産贈与ができるからです。
他にも相続での節税を考えるのであれば、税理士に相談してアドバイスをもらいましょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。