10年以内に相続が続いたら相続税の負担を軽減できます【相次相続控除の仕組み】

厚木市で 相続 の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
「3年前に父が亡くなって、ようやく落ち着いたと思ったら、今度は母が…。立て続けに不幸があって、気持ちの整理もつかないのに、また相続税の心配をしないといけないなんて…」
ご両親のご年齢が近い場合、短い期間で両名ともお亡くなりになるケースは珍しくありません。ご家族を相次いで亡くされるお気持ち、お察しいたします。そして、連続で相続手続きと相続税の納付をしなければならないので、かなりの負担となるでしょう。
ですが、安心してください。
日本の相続税法には、このようなケースにおいて「ご遺族の負担を軽減するための控除制度」が用意されています。
今回は、この控除制度について解説していきます。知っているといないとでは、納税額に大きな差が出るので、是非覚えておいてください。
「相次相続控除」とは?
「相次相続控除」とは、10年以内に2回以上の相続が起きた場合に、2回目の相続で納める相続税から、一定額を差し引ける制度です。
この制度が設けられたのはご遺族(法定相続人)の負担を減らすためです。
例えば、最初の相続(第一次相続)でお父様が亡くなり、お母様が財産を相続。→この時、お母様は相続税を納めました。
その3年後、お母様が亡くなり、2回目の相続(第二次相続)でお子さんが財産を相続。→この時は、お子さんが相続税を納めます。
この場合、お子さんが相続する財産には、「3年前にお父様からお母様へ引き継がれた財産」が含まれています。それは、相続税の対象になっていたはずです。
つまり、「短い間に同じ財産に2回も税金がかかる」わけです。それは酷だということで、「1回目の相続で課税された相続税の一部を、2回目の相続税から引いてあげましょう」というのがこの制度の趣旨です。
なお、この制度は「財産を減額する(課税価格の控除)」のではなく、「税額を直接差し引く(税額控除)」なので、節税効果が非常に大きいのです。
相次相続控除を使える「4つの条件」
(1)今回の相続(第二次相続)の相続人であること
これは当然ですが、控除を使えるのは財産を受け取る相続人であることが大前提です。
なお、遺言書によって財産を遺贈された人(受遺者)は、相続人ではないため、相次相続控除は適用できません。
(2)前の相続から「10年以内」に起きていること
1回目の相続開始日(お亡くなりになった日)から、2回目の相続開始日までの期間が10年以内である必要があります。1日でも過ぎてしまうと、適用対象外となります。
相続税の申告期限(相続開始の翌日から10ヶ月以内)ではないので、ご注意ください。
(3)前の相続で、今回の被相続人が財産を取得していること
最初の相続(第一次相続)でお父様が亡くなり、お母様が財産を相続。その後、お母様が亡くなり、2回目の相続(第二次相続)でお子さんが財産を相続。
前述のこの例で考えると、お父様が亡くなった時に、お母様が、実際に何らかの財産(預貯金、不動産など)を相続している必要があります。
(4)前の相続で、今回の被相続人に「相続税が課税され、納税をした」
ここが最も重要なポイントです。もし、一次相続で財産を取得していても、相続税を納めていなければ、二次相続で相次相続控除を適用できません。
通常の相続ではお父様が亡くなった時、お母様は「配偶者の税額軽減(配偶者控除)」という特例を使っている可能性が高いです。これは、配偶者が相続した財産のうち「1億6千万円」または「法定相続分」のどちらか多い金額まで、相続税がかからないという制度です。
この特例を使うと、申告は必要ですが、実際に払う相続税は0円となるケースが多いです。そうなれば、残念ながら「相次相続控除」は使えません。
相次相続控除は、あくまで「1回目の相続で払った税金を、2回目で少し取り戻す」という制度です。そのため、1回目に払った税金がゼロなら、取り戻せる額もゼロ、というわけです。
相次相続控除はこのように「納税の有無」が重要であり、「申告の有無」は関係ないのです。
相次相続控除が使える他のパターン
相次相続控除が使えるパターンは、今回例を挙げた「父→母→子」のケース以外にもいくつかあります。
ポイントは2回目の相続が「10年以内」に起きること、「1回目で財産を取得し、相続税を納めた人」が被相続人であることです。
(1)パターン1:子が親より先に亡くなる(子→親→別の子)
ご長寿の家族で、お子様が先に亡くなるケースです。
- 一次相続:子(長男)が死亡。独身で子もいない場合などは親である父が財産を相続し、相続税を納税する。
二次相続(10年以内):父が死亡。母や別の子(長女)が財産を相続する。
控除を受けられる人:母や長女
お父様が一次相続で払った税金の一部を、二次相続の税金から引けます。
(2)パターン2:兄弟姉妹間での相続
お子様がいないご夫婦や、独身の兄弟姉妹間で発生するケースです。
- 一次相続:兄が死亡。両親は他界、子もいない場合は弟が財産を相続し、相続税を納税する。
二次相続(10年以内):弟が死亡。弟の妻や、甥・姪が財産を相続する。
控除を受けられる人:弟の妻や甥・姪
弟さんが一次相続で払った税金の一部を、ご自身が払う二次相続の税金から引けます。
(3)パターン3:祖父(母)からの相続が続く
世代をまたいだ相続が短期間で続くケースです。
- 一次相続:祖父が死亡。祖母は既に他界しているので、息子である父親が財産を相続し、相続税を納税する。
二次相続(10年以内):父親が死亡。母親と子供が財産を相続する。
控除を受けられる人:母親と子供
お祖父様が一次相続で払った税金の一部を、ご自身が払う二次相続の税金から引けます。
まとめ
相次相続控除について仕組みを簡単に解説いたしました。相次相続控除はご遺族の負担を少しでも軽くするために作られた制度ですので、要件に該当する場合は、積極的に活用しましょう。
次回は、控除の計算方法や他の注意点について述べていきます。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。
