連絡の取れない相続人がいる場合の相続手続き【連絡の取り方・相続税申告の対処方法】

厚木市で 相続 の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
ご家族が亡くなられた後の相続手続きで、最初にすることが「相続人の確定」です。法的な相続人を正確に把握しないと、相続税の計算や遺産分割協議に進めないからです。
しかし、相続人が誰かが分かっても「連絡が取れない」場合もあります。長年音信不通になっている、海外に住んでいる等々、理由は様々ですが、その相続人の不在を無視して手続きを進めることもできません。
相続人に連絡が取れないと困る理由
最も大きな問題は「遺産分割協議」ができないことです。遺産分割協議書は、相続人全員の押印をもって成立します。
連絡が取れない相続人の印がなければ、その遺産分割協議書は無効となってしまいます。
遺産分割協議書がなければ、預貯金の解約・払戻しもできません。(仮払い制度を使えば、少額を引き出すことは可能)
また、不動産を売却したり、特定の相続人名義に変更もできませんし、その他、株式や投資信託の売却・名義変更も不可能です。
申告期限は待ってくれない
遺産分割協議が止まっていても、相続税の申告・納付期限(相続開始を知ってから10ヶ月以内)は自動的にやってきます。
遺産分割が終わっていないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった税額を大きく減らせる控除制度が、原則として利用できません。
その結果、本来より多くの相続税を一時的に納付しなければなりません。
連絡が取れない場合の対処
(1)所在調査・意思の確認
まず、「連絡が取れない」といっても、所在が不明なのか、あるいは単に連絡を拒否されているだけなのかを調べます。
①戸籍から現住所を特定する
最初に、役場にて戸籍の附票を取得します。法定相続人確定には、被相続人(故人)の出生から死亡までのすべての戸籍謄本を辿っていきますが、この過程で判明した相続人の現在の住民登録上の住所を知るために、戸籍の附票を請求します。
戸籍の附票には、今までの住所が記録されています。
②内容証明郵便を送る
住所がわかったら、手紙を送りましょう。できれば、内容証明郵便などの確実な方法で、遺産分割協議を促す書面を送付します。
この書面には、被相続人様の死亡の事実、ご自身が相続人様であること、そして遺産分割協議の必要性とその期限などを具体的に記載します。
内容証明郵便は、「いつ」「どのような内容」の書面を「誰に」送付したかを郵便局が公的に証明してくれるため、「連絡を試みた」という証拠として残ります。
該当者が住民票の住所に居住されていない場合や、受取を拒否された場合は、次のフェーズに移行しましょう。
(2)所在不明に対する法的手続き
戸籍の附票を辿っても現住所が確認できない、あるいは住民票上の住所に住んでいないことが確実であるなど、行方がわからない場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます。
不在者財産管理人とは行方不明の相続人の財産を管理する人です。裁判所より選任された管理人は、不在者に代わって遺産分割協議に参加し、その持分を確保しつつ、協議を成立させる役割を担います。
(3)相続人が生死不明の場合
行方不明の期間が長く、生死さえも不明である場合、家庭裁判所に失踪宣告の申立てを検討します。
失踪宣告が認められると、その相続人は法律上、死亡したものとして扱われます。
そのため、失踪宣告が認められると同時に複数の相続が発生していることになりますので、手続きに注意しましょう。
(4)連絡拒否に対する手続き
「所在は知っているが、書面や電話に一切応じない」「協議への参加を拒否している」というケースの場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てます。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、話し合いの仲介をしてくれます。
裁判所からの呼出しには応じざるを得ないことも多く、話し合いのテーブルに着くきっかけとなります。
調停でも合意に至らない場合は、遺産分割審判に移行し、裁判官が強制力のある分割方法を決定します。これにより、長期間停滞していた遺産分割手続きに終止符が打たれることになります。
相続税申告を期限内に完了するには
連絡が取れない相続人がいるからといって期限が延長されることはありません。
どうしても遺産分割が終わらない時は「未分割のまま申告する」ことになります。
具体的には「法律で定められた法定相続分」で全員が財産を取得したものと仮定して、相続税の総額と各人の納税額を計算します。
相続税の申告書は、本来は相続人全員の署名・押印が望ましいですが、連絡が取れないなど事情がある場合は、連絡が取れる相続人だけでも申告書を提出することができます(別々に提出しても構いません)。
なお、相続税には「連帯納付義務」があります。これは、万が一、連絡が取れない相続人が自分の分の相続税を納付しなかった場合、税務署は他の相続人に対して、その未納分の支払いを請求できるという制度です。
そのため、実務上は、連絡が取れる相続人が、連絡の取れない方の分も一時的に立て替えて納付するケースが見られます。
まとめ
連絡の取れない相続人がいる場合の対処について解説いたしました。不在の状況によって取るべき手段は異なります。
申告期限は基本的には延長できないので、もし期限内に遺産分割が完了しない場合は、前述した方法で申告をしてください。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。
