相続税の支払い方法の1つ「物納制度」について
こんにちは。
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続税は現金一括で納付が基本ですが、手元に現金がなく納付期限までに準備ができない場合や期限後にも用意する目処が立たない場合には、「物納」という方法が使えます。
物納とはそのままの意味で、同じ価値の物で相続税を支払うことです。
制度を使用するには、要件をクリアすることや納める物について国の審査を受ける必要があります。
物納を行う前提条件
前提として、現金での納付が可能な場合は、物納制度は使えません。
もっと言えば、物納は相続税を支払うための最終手段です。
②一括での納付は難しいが、給与や家賃収入があり分割納付なら可能→延納制度の実施
③延納が認められず、物納での一括納付が可能→物納制度の実施
あくまで現金による一括納付が原則で、それが難しい場合には「延納制度」を申請します。
延納が認められず、物納による一括納付が可能な場合にのみ制度が使用できます。
延納制度とは
期限内に相続税が支払えない場合に、物納より優先される制度です。
5年~20年の年賦で分割して税金を納める仕組みで、給与収入や家賃収入が継続的に見込まれる場合に適用されます。
ただし、一括納付とは違って利子が付くので納税額が高くなってしまいます。
よって、金融機関等で借り入れをして完済した方がよいケースもあります。
物納できる財産の順位
物納できる財産は限られており、順位も決まっています。
同一順位の中であれば、物納する財産を納税者の判断で決定できます。
財産は相続で取得したもの、所在が日本国内にあること、所轄税務署の事前許可を得ていることが条件となります。
国が処分するのに適さない財産は、申請が却下されるので注意が必要です。
現在は基準も厳しくなっており、売れる見込みのないものを国は引き受けません。
①不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式等(社債、株式等の有価証券のうち、金融商品取引所に上場されているもの)
②不動産及び上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第2順位
①非上場株式等
②非上場株式のうち物納劣後財産に該当するもの
第3順位
動産
物納劣後財産とは、物納にあてられるものの順位が後れる財産です。
同じ順位の中でも、あてられる順番としては後になるということです。
期限内に申請が必要
物納の手続きは相続税の支払い期限と同じく10ヶ月以内です。
申請書類が多く手間がかかるので、しっかりとした事前準備が必要です。もし、期限までに間に合わない場合は、提出期限延長の届出をします。
まとめ
昔は物納での納付も多かったですが、ここ数年は年100件以下に減少しています。
理由としては審査が厳格になったことや、自身で売却した方がメリットを得られることが多いからです。申請の手間が複雑で、専門家以外の申請が困難であることも要因です。
もし物納を検討しているのであれば、専門の税理士に一度相談された方が良いでしょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。