こんにちは。
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。

相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。

 


 

相続と言えば、「被相続人の財産を法定相続人である配偶者や子供等が引き継ぐもの」とイメージしがち。

しかしながら、諸々の事情によっては相続人が財産を取得しないケースもあります。
 

相続をしないパターンとしては、相続権を手放す「相続放棄」がありますが、この他にも財産を受け取れないパターンとして「相続廃除」と「相続欠格」の二つがあります。

相続放棄は財産を取得しないことを相続人が選択しますが、相続廃除と相続欠格については、被相続人や他の相続人が問題のある相続人の資格を剥奪するため、大きな違いがあります。

 

相続廃除とは

(1)概要

 
相続廃除とは、 推定相続人が被相続人へ虐待や重大な侮辱を加えるなど、著しい非行をした場合に、相続権を剥奪する制度です。

家庭裁判所へ請求し、申し立てが認められれば相続人の資格は失われます。遺留分(最低限の財産を取得する権利)も当然ありません
 

なお、失う資格は廃除された相続に関する権利のみです。

例えば、父親の相続についての廃除が決定しても、母親の相続については相続権はそのままです。

 

(2)廃除の対象

 
相続廃除は、遺留分権を持つ推定相続人が対象の制度です。

具体的には被相続人の配偶者や子供(孫)・父母(祖父母)のうち推定相続人となる方が対象です。(被相続人の兄弟姉妹は遺留分権がないので、対象ではありません。)
 

なお、推定相続人とは、被相続人が亡くなって相続が始まった時に、相続人になる予定の方を指します。

例えば、ある方の家族構成が、配偶者A、息子B、弟のCがいる場合、将来的に相続が始まった際に相続人となるのは配偶者A、息子Bなので、その二人が推定相続人となります。
 

元々、遺留分権を持たない兄弟姉妹や推定相続人の配偶者などは対象ではありません。

また、 廃除は本人のみに影響するので、廃除された方に子供や孫がいる場合、その代襲相続権には影響がありません。

 

(3)廃除が成立する要件

 
民法892条では遺留分を持つ相続人が被相続人に対して下記の行為を行った時に相続権を剥奪できるとされています。

  • 被相続人に対して虐待をしたとき
  • 被相続人に重大な侮辱を加えたとき
  • その他の著しい非行があったとき

 
注意したいのは、 これらの行為があっただけでは廃除は成立しない点です。

裁判所は「相続人の非行があったという事実」に加えて、それが「どのレベルのものなのか」を考慮します。
 

推定相続人の非行が顕著な場合には廃除が成立しますが、軽度の場合は認められにくいのが実態のようです。

 

(4)手続き

 
相続人廃除の方法は、被相続人が行います。

  • 被相続人が生存中に自分で家庭裁判所へ請求する
  • 被相続人が遺言を作成し、遺言執行者が家庭裁判所へ請求する

手続きは上記のように被相続人が存命中に行う「生前廃除」か、自身の死後に遺言執行者に請求をしてもらう「遺言廃除」があります。

いずれの場合も被相続人の意思のもとに行われます。よって、相続人が他の相続人を廃除するようなことはできないのです。

 

(5)取り消し

 
相続廃除は請求が家庭裁判所に受理された後であっても、取り消すことができます。

相続人廃除は、侮辱や虐待などの非行をした推定相続人の相続権を奪う制度でありますが、申立人(被相続人)の意思が変われば問題ありません。
 

つまり、相手を許す気持ちになれば、相続人の廃除取り消しは成立します

相続人廃除を取り消しを行う場合は、家庭裁判所に対して、「相続人廃除の審判の取消し」を申し立てます。
 

取り消しは通常の廃除の手続きと同様に、生前でも遺言でも行えます。

 

相続欠格とは

(1)概要

 
被相続人の親族はその関係性によって優先順位が決まっており、順位に従って法定相続人の資格が与えられます。

しかし、 一定の事由に該当する場合、法定相続人となっていても、その方は相続人としての資格を剥奪されてしまいます。これは「相続欠格」といいます。
 

相続欠格になれば、遺産分割協議にも参加できませんし、一定の財産を得る遺留分権も失います。

また、遺言による「遺贈」でも財産を取得することができません

 

(2)相続欠格事由

 
相続欠格に該当するかどうかは「相続欠格事由」に当てはまるかで判断します。

相続欠格事由とは相続の秩序を乱すような行為で、以下のようなものになります。

  • 故意に被相続人や他の相続人を死亡させる、または死亡させようとして刑に処せられた
  • 被相続人が殺害された事実を知りながら、告訴、告発をしなかった(ただし、まだ子供で弁別がない場合や、殺害者が自身の配偶者や直系血族であった場合を除く)
  • 被相続人に対し詐欺や強迫を行い、遺言の作成・撤回・取消し・変更等を妨げた
  • 詐欺や強迫によって、被相続人に相続に関する遺言を作成・撤回・取消し・変更させた
  • 相続に関する被相続人の遺言書について偽造・変造・破棄・隠匿を行った

これらの事由に該当すれば、民法で定められている通り「当然に」相続人となることができないため、あらゆる権利を失います。

ただし、失うのは特定の被相続人との関係における相続権であり、他の相続における相続資格は失いません。

 

(3)手続き

 
相続欠格は前述した欠格事由に該当する事実があれば、直ちに相続権を失います。

何らかの手続きが必要となるわけではありません
 

遺産分割協議でも、相続欠格者は相続人ではないので、相続欠格者を外して協議が行われます。

ただし、相続を原因として不動産の名義を変更するときには、相続欠格者であることの証明書を提出しないと法務局が、登記を受け付けてくれません。
 

そのため、相続登記をする際に「相続欠格事由に該当することの証明書」を提出することが必要です。

 

(4)取り消しはできない

 
相続欠格者は欠格事由に該当すれば成立するので、取り消しはできません

ただし、死亡保険金や死亡退職金は受け取ることができるので、被相続人が相続欠格者を受取人に指定していれば、その分の財産を受け取ることは可能です。

 

相続廃除と相続欠格との違い

(1)被相続人の意思

 
大きな違いは被相続人の意思の有無です。

相続欠格は欠格事由に該当すれば、被相続人の意思に関わらず、相続権を失います。
 

対して、相続廃除は、「この相続人に相続をさせたくない」という希望のもとに被相続人もしくは遺言執行者によって手続きが行われます。

被相続人が対象者を許せば、取り消しが可能な点も相続廃除の特徴です。

 

(2)遺贈

 
相続廃除された方は、遺言での遺贈では財産を受け取れます。

ですが、欠格者は遺贈すら受けることも許されません

 

(3)対象

 
相続廃除の対象は遺留分を有する推定相続人のみになります。

ですので、遺留分が認められていない兄弟姉妹には、相続廃除が出来ません。
 

対して、相続欠格では、欠格事由に該当する相続人全てが対象です。

 

税法上の扱い

相続税の各控除額では、法定相続人の人数が計算式に含まれているため、人数によって相続税額が変わってきます。

  • 相続税の基礎控除額=3,000万円+(600万円×相続人の人数)
  • 死亡保険金の非課税枠=500万円×相続人の人数
  • 死亡退職金の非課税枠=500万円×相続人の人数

 
「相続欠格」「相続廃除」はいなかったものとして扱われるので、法定相続人としてカウントされません。

そのため、基礎控除額や非課税枠には影響はないのです。
 

この背景には、被相続人の意思などで基礎控除額や非課税枠の金額などが左右されることは課税の公平の観点から、望ましくないという考えがあります。
 

なお「相続放棄」については、その相続放棄がなかったものとして扱われるので、法定相続人としてカウントされます。

この点はしっかり覚えておきましょう。

 

まとめ

相続廃除や相続欠格について、その特徴や違いについてご説明いたしました。

どちらも税法上の取り扱いは相続放棄と異なりますので、相続税計算の際は注意してください。
 

 


 
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