完成した 遺言書 の内容を変更したい場合、手続きはどうすれば良い?
厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続 の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
遺言書を作った後で、家族との関係や考え方が変わることはよくあることです。関係性や考え方に変化があれば、遺言書内容を変更したくなるでしょう。
遺言書も一般的なもので自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言の3種類があります。公正証書遺言は公証役場で作成されるので手続き自体は異なりますが、遺言書の変更や撤回などは可能です。
遺言書に指定できる内容
遺言書は、作成者が亡くなった後の相続で効力が生じる書類です。代表的な種類に自筆証書遺言・秘密証書遺言・公正証書遺言があります。
公正証書遺言…公証役場で公証人が代理作成するため、形式不備になることがない。原本も公証役場に保管されるため、紛失も無い。公証役場に支払う費用がかかる、また作成の打ち合わせなどに手間がかかる。立ち合いの証人も準備しなければならない。
秘密証書遺言…こちらも公証役場で手続きが必要。証人も用意しなければならない。遺言書の作成記録は役場に残るものの、遺言書原本の管理は遺言者がする。その仕組みのせいで、内容不備はもちろん、紛失のリスクもある。デメリット部分が目立ち、利用率は低い。
遺言書は上記のどんな種類であっても、内容として書けるもの=指定できる事項は同じです。
- ■遺言書に指定できる内容
- 相続分の指定
- 遺産分割方法の指定と分割の禁止
- 相続人の廃除
- 遺贈の指定
- 子供の認知
- 後見人の指定
- 相続人相互の担保責任の指定
- 遺言執行者の指定
相続分の指定ですが、遺留分を侵害するような配分は指定できません。(例えば、「妻に相続財産を全て渡して、子供には渡さない」等の偏った内容の遺言は通りません。)
遺言の内容も絶対ではないのです。
遺言は撤回できる
遺言はいつでも取り消しが可能で、何度でも書きなおす事ができます。
撤回は、遺言の一部についてでも内容の全部でも、どちらでも可能です。
遺言作成については各形式でルールが決められていますが、その撤回にもやり方が決まっており、遺言は遺言で取り消します。
遺言書内容の変更方法
遺言はいつでも取り消しができ、何度でも書きなおせると述べましたが、「遺言の一部だけ」を修正したい場合の具体的な方法としては以下の方法があります。
- 新たに遺言を書き直す
- 作成した遺言自体を変更する
(1)新たに遺言を書き直す
遺言書は日付によって優先順位が決まります。つまり、新しい日付のものが有効です。
古い日付の遺言書に「自宅は妻に預貯金は長男に」と書かれていても、新しい日付の遺言書に「自宅は長男に預貯金は妻に」と書かれていれば、遺産配分は後者の通りに実行されます。
なお、遺言書の種類に優先順位はないので、自筆証書遺言の次に公正証書遺言を新しい日付で作成すると公正証書遺言の内容が優先されます。
(2)作成した遺言自体を変更する
変更する部分が軽微かつ、自筆証書遺言の場合は直接その遺言の文章を変更できると定められています。
自筆証書遺言の変更方法は、変更箇所を示し、変更した旨、変更した内容を書き、署名と押印をします。
やり方に不備があれば無効となり、変更自体が無かったものとなります。また、元の内容がそもそも判別できなかった場合、該当部分は当初から記載無しとみなされるので注意しましょう。
公正証書遺言の場合、基本は一から作り直すこととなりますが、訂正内容が「補充や一部修正の範囲内」と公証人に認められれば、「更正証書」や「補充証書」を作成することになります。
この場合、手数料はもとの公正証書遺言の作成にかかった費用の半分程度になります。
遺言書の取り消し
遺言書を取り消したい場合、原本を破棄します。
自筆証書遺言の場合は、保存してあるものを破棄します。公正証書遺言の場合、原本が公証役場に保管してあるので、撤回の申述をするか、新たに遺言書を作成することになります。
なお、公証役場での撤回は、遺言書作成時と同じように、証人2名の前で、公証人に対して、公正証書を無かったことにしたい旨を述べて、公正証書に署名捺印します。この時、手数料が11,000円かかります。
遺言者死亡後の遺言書の取り消し
遺言書は作成者が亡くなった後の相続で効力が発生します。そのため、相続開始時には原則的に遺言の取り消しや変更はできません。
しかし、遺言作成時に、遺言者が他の相続人・受遺者から脅迫を受けたり、詐欺行為があった場合は取り消しが出来ます。
ただし、子の認知などの身分に関する事項は取り消しが一切できません。
まとめ
遺言書の変更について解説しました。遺言の種類にもよりますが、手続きをすることで変更は可能です。また、手続きが面倒であれば新しい遺言書を作成することでも内容の変更は可能となります。
ただし、遺言書はその内容によっては、相続時に家族間のトラブルを起こす可能性があります。遺言書が争いの火種にならないように、内容は慎重に検討すべきです。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。