相続人同士が絶縁状態の場合、遺産相続の手続きが難しくなる
厚木市で 相続手続 支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
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相続が始まると被相続人との関係性によって、法定相続人が決まります。配偶者は必ず法定相続人となり、他は被相続人の子供、親、兄弟姉妹の順で法定相続人となります。
最も多いのは、配偶者と子供が相続人となるパターンですが、稀に相続人同士の関係性が悪いケースがあります。父親と子供、あるいは兄弟・姉妹間などで仲が悪く、絶縁状態である場合もあります。
絶縁していても法定相続人の権利には影響がない
絶縁するほど関係性が悪かったとしても、法定相続人の権利には影響がありません。それぞれが法定相続人である限り、相続人として遺産の相続をする権利があります。
なお、親子間や兄弟姉妹同士で完全に縁を切ることはできません。現在の法律では家族間の縁を切るための制度がないからです。
法的に関係性が切れない以上、相続でも法定相続人としての権利は変わらないのです。互いに「〇〇とは一切関わらない」という念書を残していても、関係ありません。
自身が法定相続人となる相続では遺産分割協議に参加し、遺産分割を話し合うことになります。
相続権が無くなるケース
相続において、相続権が無くなるのは、「相続放棄」・「相続人廃除」・「相続欠格」の3パターンとなります。
相続放棄はその法定相続人が自身の判断で相続権を手放すことです。手続きをすれば、その相続人は最初からいなかったことになり、残った相続人で遺産を分け合うことになります。
父親の相続で母親と子供が相続人の場合、母親と子供の仲が悪く、どうしても遺産分割協議に参加したくないという場合は、相続放棄を選択することもできます。ただし、相続放棄をすると一切の遺産を取得できませんので、代理人を立てて分割協議を完了させる方が妥当でしょう。
相続廃除とは、被相続人の意思で推定相続人を相続から外す制度です。廃除には、被相続人への虐待や重大な侮辱など、著しい非行があったことが条件になります。対象者が廃除に該当するかどうかの最終判断は、家庭裁判所が行います。
相続欠格とは相続に支障をきたす犯罪行為や不法行為等、一定事由に該当した相続人の資格を剥奪することです。事由に該当していれば、自動的に遺産分割協議に参加できない上、遺留分権もなくなります。遺言による遺贈でも財産の取得はできません。
相続人と被相続人が不仲だった場合、相続廃除は成立するか
相続廃除を利用できるのは被相続人のみです。手続きには、生前に廃除を成立させる方法と、遺言による廃除(遺言執行者が手続きを行う)の2つがあります。
廃除が成立する条件は前述したように、被相続人への虐待や重大な侮辱を加えるなど、著しい非行をした場合です。
廃除が妥当かどうかは家庭裁判所が判断しますが、単に親子の仲が悪いというだけでは、成立は難しいでしょう。
なお、該当の行為があった事実だけでは廃除が成立するかは不明です。あくまで廃除が妥当なレベルだと裁判所側が判断した場合に、廃除が成立します。
また、相続廃除は代襲相続権には影響しません。父親の相続で仮に長男が廃除されても、長男の息子である孫は代襲相続が可能です。
相続人同士の関係性が悪いと遺産分割が停滞する
相続人同士が絶縁状態の場合、遺産分割の話し合いは進まないでしょう。単純に意見がまとまらない場合もあれば、話し合うまでに時間を要する場合もあります。
遺産分割協議が完了しなければ、財産は「相続人全員の共有状態」です。相続不動産も被相続人の名義のままですから、処分できません。
一方を協議から外したいと思われますが、遺産分割協議は全員の合意が必要なため、特定の相続人の除外は不可です。(話し合いには不参加でも、最終的な合意は得なければなりません。)
なお、遺産分割協議が進まないと、相続税申告期限に間に合わないことになります。相続税の申告・納付期限は、相続開始を知ってから10ヶ月以内です。もし、期限を破れば、無申告加算税や延滞税などが追加で課税されます。
相続税の申告方法にも影響する
相続税の申告では、実務の手間を考えて、多くのケースで「相続人共同の申告書」で提出します。これは一つの申告書について相続人全員が連署して提出する方法です。
法律上では「個別」でも「連名」でも、どちらで申告書を提出しても問題ありません。ですが、連名で提出する方が楽に手続きが出来るので、相続ではこの方法が多く用いられます。
相続人同士の仲が悪い場合、別々で申告書を出すケースもありますが、個別申告にはデメリットがあります。
一つは税務調査に入られる可能性が高くなること。
各相続人が内容の異なる申告書で税務署に申告すれば、当然ながら税務署は精査のために税務調査をする可能性が高くなります。
税務調査が入り、申告漏れや納税額の間違いが発見されてしまうと、過少申告加算税や延滞税が課税されます。
二つ目は税理士への報酬が余計にかかること。もし、相続人それぞれが、税理士へ相続税申告を依頼していた場合、税理士報酬は多く発生します。
まとめ
たとえ相続人同士が絶縁状態であっても、遺産分割協議時には相続人全員が参加して合意を得なければなりません。
協議の他にも、相続税申告など多くの相続手続きに影響します。
関係性を改善するのは簡単ではないので、相続人同士の関係性が悪い場合、協議をしなくて良いように被相続人の方が前もって遺言書を残しておくこともトラブル軽減となります。
また、遺言書の他にも専門の士業を間に挟むのも良いでしょう。
相続税申告など、相続手続きを専門家に任せてしまえば、当人同士の関係性に左右されることなく、相続手続きを進めることができます。
相続の手続きでお困りのことがございましたら、相続手続の専門家・相続手続相談士のいる厚木相続相談センターまでお気軽にご連絡ください。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。