実家を相続したら遺品整理はどうする?片付け費用は相続税から控除できるのか

厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
ご両親がお亡くなりになり、ご実家を相続することになった場合、避けて通れないのが「実家の片付け(遺品整理)」です。
長年暮らした家には、家具や家電、衣類、思い出の品々が大量に残されており、これらを整理・処分するのは、ご遺族にとって精神的にも体力的にも、そして金銭的にも大きな負担となります。
今回は、実家の遺品整理を進めるタイミングや注意点、そして「片付けにかかった費用は相続税の計算上、控除できるのか?」といった税務上の疑問について解説します。
実家の片付け・遺品整理はいつ誰がやるべきか?
実家の遺品整理は、一般的に四十九日法要が終わった後など、ご遺族の気持ちが少し落ち着いたタイミングで始めることが多いです。
しかし、法的に「いつまでにやらなければならない」という期限はありません。
ここで一つ、非常に重要な注意点があります。それは、「遺産分割協議が終わる前、あるいは相続放棄を検討している段階で、勝手に遺品を処分してはいけない」ということです。
参考:「知らないと損する!?相続開始の初期段階で避けるべき行為とは」
民法の規定により、相続人が故人の財産(家具・家電などの動産も含みます)を売却したり捨てたりすると、「相続財産を自分のものとして扱った(処分した)」とみなされ、自動的にすべての財産・負債を引き継ぐ「単純承認」が成立してしまいます。
もし後から故人に多額の借金があることが判明しても、一度財産を処分してしまうと「相続放棄」ができなくなってしまいます。実家の片付けを始める前には、まず故人の財産と借金の全体像を把握し、相続人全員の同意を得てから進めるようにしてください。
遺品整理費用は相続税の「債務控除」の対象になる?
遺品整理を専門業者に依頼すると、家の広さや荷物の量によっては数十万円単位の費用がかかることも珍しくありません。
「お葬式の費用が相続税の計算から引けるように、実家の片付け費用も遺産から引けるのでは?」と考える方も多いでしょう。
結論から申し上げますと、遺品整理にかかった費用は、相続税の計算上、遺産総額から差し引く(債務控除する)ことはできません。
お通夜や告別式、火葬などの葬儀費用は、相続に際して必然的に発生するものとして控除が認められています。
参考:国税庁「No.4129 相続財産から控除できる葬式費用」
しかし、遺品の片付けや不用品の処分費用は、「被相続人(故人)が死亡した時点で抱えていた債務」ではなく、「相続開始後に相続人自身の都合で発生した費用」とみなされるため、控除の対象外となるのです。そのため、片付け費用は、遺産の中から捻出するか、相続人ご自身の自己資金から支払うことになります。
遺品の中から現金(タンス預金)や骨董品が出てきたら?
実家を片付けている最中に、タンスの引き出しや押し入れの奥から、まとまった現金(タンス預金)が見つかるケースはよくあります。
「銀行に入っていないお金だから、黙ってもらっておけば税務署にはバレないだろう」と考えるのは非常に危険です。税務署は過去の所得や預金の引き出し履歴から、「これくらいの現金が家にあるはずだ」と予測を立てており、タンス預金であっても隠し通すことは困難です。見つけた現金は、必ず相続財産として正しく申告してください。
また、貴金属、ブランド品、骨董品、美術品などが見つかった場合は、「家庭用財産」として相続税の課税対象になります。一般的に経済的価値が低い衣類や古い家電は「家財一式」として少額でまとめて評価して構いませんが、客観的に価値が高いものは専門業者に査定を依頼し、個別に評価額を算出して申告する必要があります。
空き家になる実家を売却・処分する際の流れ
実家を片付けた後、誰も住む予定がない場合は「空き家」となります。空き家をそのまま放置すると、建物の急速な劣化や、不法侵入などの防犯上のリスク、さらには倒壊によって近隣に損害賠償責任を負うリスクまで発生します。
そのため、住む予定がない実家は、早めに売却等を検討すべきです。相続した実家を売却する際、一定の要件を満たせば、譲渡所得(売却益)から最高3,000万円を控除できる「空き家特例」という制度があります。
参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
この特例を利用するには、「1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた建物であること」「耐震リフォームをして売却するか、建物を取り壊して更地にして売却すること」など、細かい適用要件が定められています。実家を売却して手放すことをお考えの場合は、片付けを始める前に、特例が使えるかどうか専門家にシミュレーションしてもらうことを強くお勧めします。
まとめ
実家の遺品整理は、タイミングや方法を間違えると「相続放棄ができなくなる」といった法的なリスクを伴います。また、多額の片付け費用がかかっても相続税からは控除できないため、遺産分割の話し合いの中で「誰が片付け費用を負担するのか」を事前に決めておくことも大切です。
空き家の売却や相続税の申告には専門的な知識が不可欠ですので、一人で抱え込まず、早い段階で専門家へご相談ください。
よくある質問
Q:実家の片付け(遺品整理)にかかった費用は、相続税の計算で差し引けますか?
A:いいえ、遺品整理費用は相続税の「債務控除」の対象外です。控除できるのは葬儀費用(お通夜・告別式・火葬など)に限られており、相続開始後に発生した片付け費用は控除できません。費用は遺産から捻出するか、相続人の自己負担となります。
Q:四十九日前でも実家の片付けを始めて大丈夫ですか?
A:法的な期限はありませんが、遺産分割協議の前や相続放棄を検討している段階で家具・家電などを処分してしまうと、「単純承認」が成立し相続放棄ができなくなるリスクがあります。片付けは相続人全員の同意を得た後に進めるのが原則です。
Q:実家の片付け中に現金(タンス預金)が見つかりました。申告しなくても大丈夫ですか?
A:申告は必須です。税務署は過去の所得や預金の出金履歴から自宅の現金保有額を推計しており、タンス預金を隠しても発覚するリスクが高いです。見つかった現金は必ず相続財産として申告してください。
Q:実家が空き家になる場合、売却すると税金はどうなりますか?
A:一定の要件を満たせば、売却益(譲渡所得)から最高3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除」が使えます。ただし1981年5月31日以前建築など細かい要件があるため、売却前に専門家への確認をお勧めします。
Q:実家に残っていた骨董品や貴金属は相続税の対象になりますか?
A:なります。貴金属・ブランド品・骨董品・美術品は「家庭用財産」として相続税の課税対象です。客観的に価値が高いと判断されるものは専門業者による査定を受け、個別に評価額を算出して申告する必要があります。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
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