こんにちは。
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。

相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。

 
 

遺言書は故人の意思を相続に反映するための書類であり、強い効力を持っています。

遺産分割の割合の指定の他、法定相続人以外の方に相続財産を渡す遺贈、戸籍上親子関係ではない子供の認知など、いくつかの事項に対して指定が可能です。

 

具体的には法的な効力がある項目は、大きく分けて以下の三つになります。

  • 身分に関すること…子供の認知や未成年者の後見人・後見監督人の指定
  • 財産処分に関すること…遺贈、財産の寄付、信託の設定
  • 相続に関する項目…相続分の決定、遺産分割の方法の指定、相続人の廃除など
 

逆に言えば、上記以外の事項は指定できません

効力の及ばない範囲のことを遺言書に書いてもその部分は無効となります

 

このページでは遺言書に指定できる事項について詳しくご紹介いたします。是非、ご自身やご家族の遺言書作成に役立ててください。


遺言書の効力発生時期

遺言書の効力が生じるのは、原則として遺言者が亡くなった時です。

ただし、例外として、遺言に停止条件が書かれていた場合は、その条件が遺言者の死亡後に成就された時から遺言の効力が発生します

 

遺言書に条件を定めて、その条件が成就した際に財産を渡すことを「停止条件付遺贈」といいます。

例えば遺言書に「孫が結婚すれば財産を渡す」と書けば、お孫さんは婚姻をした時に遺贈を受けられるようになります。




遺言書で指定可能な事項

(1)相続財産の配分指定

 

各相続人の財産取得分は、遺言者が自由に決めて構いません。

民法では「法定相続分」と言って相続人の順位や組み合わせによって、割合が決まっていますが、これと異なる配分率を指定できます。子供に多く財産を取得させるようなことでも大丈夫です。

 

しかし、遺留分を侵害するような配分はできません

遺留分とは、法定相続人が最低限の財産を取得できる権利です。例えば、配偶者に1円も渡さないような配分指定をしても、無効となります。

強い効力を持つ遺言書であっても、遺留分は相続人の権利として保障されます。



(2)遺産分割方法と分割禁止の指定

 

遺産分割方法には以下の三つがあります。

  • 現物分割…個々の遺産をそのまま分割すること。例えば「自宅は妻に、預金は子供に」といった分け方が該当します。遺産をそのまま残せるというメリットがある反面、公平に分けるのが難しいデメリットがあります。
  • 代償分割…特定の相続人が、特定の財産を相続する代わりに、他の相続人に金銭などを支払う方法。例としては「妻が自宅を取得して子供には500万円支払う」という分け方です。支払う側に資力がないと成立しません。
  • 換価分割…財産を売却してお金に代えた上で、その金銭を分ける方法です。公平性がありますが、現物を処分する手間がかかってしまいます。
 

上記の遺産分割の方法を指定したり、遺言執行者に財産分割を任せることもできます。

なお、遺産分割自体を禁止することもできます。期間は相続開始から五年以下です。


(3)遺贈の決定

 

遺贈とは法定相続人以外の方に相続財産を渡すことです。

例えば、被相続人の友人や介護をしてくれた子供の妻などに財産を渡しても構いません。

 

ただし、遺贈によって遺留分を侵害しないように注意が必要です。

相続でのトラブルに発展しないよう、生前のうちから説明を行うなどしておきましょう。



(4)子供の認知

 

戸籍上で婚姻関係のない方との間にできた子供の認知を遺言書で行うことができます。

 

認知を行えば、その子供は法定相続人となり、相続に参加することができます。

なお、遺言書によって子どもの認知が行われれば、遺言執行者は就任から10日以内に認知の届け出を行う義務があります。



(5)相続廃除等に関する事項

 

相続廃除とは、特定の推定相続人が被相続人に対して虐待や重大な侮辱を行なっていた場合に、相続人資格を剥奪できる制度です。

廃除は遺言執行者が家庭裁判所に「推定相続人廃除審判申立て」を行い、これが受理されれば確定となります。

 

廃除が成立すれば、該当者は相続関係から除外され、財産を受け取れません



(6)後見人・後見監督人の指定

 

未成年者が相続手続きを行うには、代理人を立てる必要があります。

そのため、遺言書で後見人を指定し、該当相続人の手続きを任せることができます。



(7)遺言執行者の指定

 

遺言内容をスムーズに実行するために、遺言執行者を指名し、手続きを委託することができます。



(8)相続人相互の担保責任の指定

 

取得財産が他人のものであったり、欠陥があった場合、他の相続人は担保責任を負います。

遺言者は、この担保責任の負担者の指定や負担の割合を決めることができます。




遺言書の効力が及ばないこと

(1)遺留分の侵害

 

先述したように、民法では、相続人の最低限の権利を保証しています。

これを「遺留分」と言い、遺言によっても侵害することができないことになっています

 

例えば、法定相続人以外の方にすべての財産を遺贈したいと思っても、遺言者の配偶者・子供・父母には最低限の遺産を受け取ることができる権利があるので、その通りにはなりません。

 

もし、遺留分を侵害する内容が記載されていると、その部分は無効になる上、相続人同士の争いを生んでしまうので十分に配慮するべきです。



(2)養子縁組など子供の認知以外に関すること

 

子供の認知以外の身分行為に関しての記載をしても無効です。

例えば、養子縁組に関することや配偶者との婚姻関係の解消等をを記載しても、効力を持ちません。



(3)付言事項

 

付言事項とは、法的効力を持たない事柄について遺言書で付言する事項です。

例えば

  • 相続分指定の理由
  • 葬儀内容の指定
  • 医療への臓器提供

などがあります。

 

付言事項は遺言書としては効力がなく、法的な拘束力もないので従う必要はありません。

しかし、故人の思いとしては相続人に伝わるので、付言事項の内容をできるだけ実行しようとする動きが生まれるでしょう。

 

付言事項を書くかどうかは遺言者の自由ですが、自身の思いを残された家族に明確に伝えられるので、利用価値のあるものと言えるでしょう。




遺言と異なる遺産分割はできるのか

遺言書がある場合、原則として相続ではその内容に従うこととなります。

ただし、相続人全員の合意(遺贈が指定されている場合は受遺者の合意も必要)があれば、遺言書で記載された内容と異なる遺産分割をしても構いません

 

遺言の利害関係人全員が遺言内容と異なる遺産分割を希望するのであれば、これを認めることで利害関係人の利益となるからです。

遺産分割協議が既に完了しており、後から遺言書が見つかった場合でも、相続人全員が合意するなら、遺産分割協議で決めた内容通りに財産を取得しても良いのです。

 

ただし、以下のケースでは、相続人全員の合意があっても遺言内容と異なる遺産分割ができないので注意しましょう。

  • 遺言内容に遺産分割協議の禁止が指定されている
  • 遺言執行者が指名されており、その遺言執行者の同意が得られない



勝手に開けてしまった遺言書は有効か

発見された遺言書は勝手に開けてはいけない決まりがあります。

民法では「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」と規定されており、勝手に開けてしまうと5万円以下の過料に処せられるおそれがあります

 

遺言書は偽造防止などの目的で検認手続きをしなければなりません

検認とは、他の相続人に対して遺言の存在とその記載内容を知らせることに加え、遺言書の形状、加除訂正、日付、署名、押印など、遺言書の内容を明確にして偽造や変造を防止するための手続きです。

 

公正証書遺言以外の自筆証書遺言・秘密証書遺言は、遺言者の死後、遺言書を家庭裁判所に提出して検認が必要です。(自筆証書遺言でも法務局の保管制度を活用すれば、検認は不要です。)

 

では、開けてしまった遺言書は無効かというと、そうではありません。

開封してしまった場合でも、その遺言書は有効ですし、開けた方も相続人の資格を失うことはありません。

ただし、検認を受けなければ、相続手続きにおいて遺言書は使用できないので、遺言書の発見者および保管者は早期に裁判所に申し立てを行い、検認手続きを進める必要があります。




まとめ

遺言書も様々な効力を持っていますが、指定できる事項は決まっています。

また効力の及ばない範囲もあるので、よくよく注意して作成してください。

 

なお、遺言書はいくつかの種類があり、各形式のルールに従って作らないと無効になってしまいます。

手間をかけて作成した遺言書も無効になると、効力を持ちません。よって、確実に有効となる遺言書を作成する場合、相続専門の税理士にご相談ください。

   
 

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