相続放棄を 準確定申告 をする必要はないのか【準確定申告手続きも解説】
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
故人が自営業者であったり、会社員をしながら副業をしていた等、一定条件に該当する場合、遺族が代わりに確定申告をする必要があります。
この手続きは「準確定申告」と言いますが、相続放棄を検討している場合、この手続きはどうすれば良いのか、本記事で解説いたします。
準確定申告とは
準確定申告とは、故人の生前の特定期間内所得に応じて、遺族(=相続人)が税金の申告と納付をする手続きです。
準確定申告における申告義務者は亡くなった人の「法定相続人全員」であり、申告対象となる年の1月1日から亡くなった日までの所得を計算した上で、故人の最後の住所地を管轄する税務署で手続きを行います。
期限は「相続開始を知った翌日から4ヶ月以内」となっています。(申告も納付も同じ日です。)
なお、配偶者・扶養控除といった人的控除判定は準確定申告の場合、亡くなった時点となります。生命保険料や社会保険料といった所得控除の対象費用も亡くなった日までに支払ったものが対象です。
準確定が必要なのは、以下のようなケースです。
- 被相続人が個人事業主で事業所得を得ていた
- 給与2,000万円超、年金400万円超、副収入20万円超等一定の収入があった
- 2箇所以上の事業所から給与収入を得ていた
- 一定額の不動産所得があった
- 株や不動産の売却収入があった
- 保険金を得ていた(相続税、贈与税の対象となる場合を除く)
準確定申告が必要なのに申告期限を過ぎた場合は、加算税(無申告加算税)が課されます。また、税金の納付も遅れた日数に応じて延滞税が課されるので、注意してください。
相続放棄とは
相続放棄とは、財産取得における選択肢の一つです。
相続では財産を全て引き継ぐか、限定的に引き継ぐか、全く引き継がないかの3つの選択肢があります。相続放棄すると、はじめから相続人でなかったものとみなされます。よって、プラスの財産もマイナスの財産も含め一切取得しないことになります。
なお、相続放棄は、「自身のために相続開始を知った日から3カ月以内」に家庭裁判所に申述書を提出しなければなりません。
相続放棄をすると準確定申告はしなくて良い
準確定申告の申告義務者は「法定相続人全員」です。
相続放棄をすれば法定相続人ではなくなるので、準確定申告をする必要はなくなります。
例えば、相続人が子供三兄弟で、長男が相続放棄をすると、法定相続人は次男と三男となり、二人が準確定申告の手続きをすることとなります。
相続放棄前に準確定申告をしてしまった場合
相続放棄を検討中の方が、準確定申告を先にしてしまうとどうなるか。結論を先に言うと、相続放棄が否認される可能性が高いです。
準確定申告はあくまで相続人が行うものなので、準確定申告をしたことによって「財産を取得する」意思表示をしたとみなされるからです。
また、申告により所得税が還付されることがありますが、これらは本来は故人のものであり、それを受け取ることは、相続財産を取得しているのと同じです。よって、準確定申告をすると相続放棄ができないと覚えておきましょう。
準確定申告に限らず相続放棄を検討する場合は、余計な手続きはしない、財産には手を付けないことを念頭に置きましょう。
相続人全員が相続放棄した場合はどうなるのか
遺産の中に借金が多く、相続人全員が相続放棄するケースもあります。
その場合、被相続人の準確定申告は誰が行うのかというと、包括受遺者になります。包括受遺者とは、財産を特定せずに、割合的に遺産を譲り受ける人です。
遺言書で包括受遺者が記載されているなら、包括受遺者が遺贈のあったことを知った日の翌日から4カ月までに準確定申告書を提出しなければなりません。
包括受遺者もいない場合は、相続財産法人の管理人が確定した日の翌日から4カ月までに相続財産法人が準確定申告書を提出しなければなりません。(相続財産法人とは、遺産を相続する人がいない場合に相続財産が法人化することです。相続放棄をした方は準確定申告をする必要はありません。)
準確定申告の手続きについて
(1)申告書類の提出先
準確定申告は被相続人の住所地を管轄する税務署で行います。
該当の税務署が遠い場合は、申告書類を郵送で送っても大丈夫です。2020年度分から、国税庁のe-Taxによる電子申告も可能になっています。
(2)申告は相続人全員で署名
確定申告付表には相続人全員で連署します。特定の相続人が代表となって単独で申告することはできません。
他の相続人の氏名を付記して個別で申告を行うことも可能ですが、この場合には、申告書を提出した相続人は、他の相続人に申告内容を通知しなければなりません。
(3)通常の確定申告と同じ書類を用いる
必要書類は源泉徴収票や医療費領収書、生命保険等の控除証明書です。
ほかに、申告者のマイナンバーや関係書類など、必要書類は通常の確定申告と同じです。
まとめ
相続放棄をした方は準確定申告をしなくて大丈夫です。準確定申告をする義務があるのは、あくまで相続人です。
準確定申告を行う場合、期限が相続税申告よりも早くなっているので、注意しましょう。他の手続きに気をとられて、期限を過ぎないようにしてください。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
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