法定相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合に覚えておきたいこと
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
相続でよくあるケースは、相続人が故人の配偶者と子供という形ですが、状況によっては故人の兄弟姉妹が相続人になる場合もあります。
故人の兄弟姉妹は相続順位でも第3順位となり、遺産配分目安となる法定相続分や、遺留分が認められていない等の違いがあります。
故人の兄弟姉妹は第3順位
民法では法定相続人となる順番が決められています。この優先順位は相続順位と言われ、第3順位まであります。
第2順位…両親(祖父母)
第3順位…兄弟姉妹(甥・姪)
故人の配偶者は必ず法定相続人になれます。他の血縁者は上記の順位に従って相続人の権利を取得します。
上の順位の方が1人でもいるなら、下の順位の方に相続権は与えられません。順位が移るのは、その方が亡くなっているか、相続放棄などで相続権を失くしている場合です。
なお、該当順位の相続人が亡くなっていても、その方に子供がいるなら「代襲相続」が発生して順位は移動しません。例えば、被相続人の子供が相続開始前に既に亡くなっている場合、その子供(被相続人にとっては孫)が代襲相続人となります。
故人の兄弟姉妹は第3順位となるので、故人に子供も孫もおらず、両親・祖父母も既に他界している場合、相続権を持つこととなります。
兄弟姉妹の法定相続分
前述した通り、ケースによっては故人の兄弟姉妹が法定相続人となるケースもあります。
兄弟姉妹が法定相続人になるのは、相続人が「配偶者と兄弟姉妹」と「兄弟姉妹のみ」のパターンですが、その際の法定相続分は、以下の通りです。
兄弟姉妹のみ…相続財産の全額
※兄弟姉妹が複数人いるなら、取得合計分を人数で分割します。
注意点
第3順位である兄弟姉妹には、被相続人の子供や両親と違って、相続人としての権利にも若干の違いがあります。
(1)遺留分がない
遺留分とは相続財産の最低分を取得する権利です。この権利を有するのは、故人の配偶者と子供および両親です。
故人の兄弟姉妹には遺留分がありません。
そのため、遺言書によって『遺産全額を配偶者に渡す』等の記載があった場合は、兄弟姉妹は遺産を一切受け取れません。
(2)代襲相続は一代のみ
前述した代襲相続は故人の子供の場合は、ひ孫・玄孫(やしゃご)等、直系卑属であれば、何代でも可能です。
しかし、兄弟姉妹は、その子供である甥・姪までの一代のみです。
なお、代襲相続は相続放棄では成立しません。
相続人自ら相続権を手放す相続放棄の場合、最初からその方は相続権を持たなかったことになるので、代襲相続も生じません。
(3)相続税は2割加算となる
相続財産が一定の金額に達する場合=基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えている場合、相続税が生じます。
相続税は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に所定の税務署に申告し、税金を納付しなければなりません。
この時、兄弟姉妹は通常の相続税額の2割に相当する額を加算した金額を納めることになります。
この取り決めは「相続税の2割加算」と言います。
兄弟姉妹に2割加算が適用される理由としては、被相続人と血縁関係が薄いことから、「相続財産の取得が偶発的である」と考えられるからです。
なお、兄弟姉妹だけでなく、故人の孫が相続財産を取得した場合も、2割加算の対象です。その理由は孫が財産を取得する場合、1世代分またいで財産が移動するので、相続税の課税を1回分免れるからです。税金は公平に課税されるべきという考えから、故人の孫にも相続税は多めに加算されるのです。
(4)通常よりも戸籍謄本を集めなければならない
通常の相続手続きの場合、相続人の確定のために、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取得します。しかし、兄弟姉妹が法定相続人になる場合、先の戸籍謄本に加えて、被相続人の両親の戸籍謄本も取得しなければなりません。
これは、兄弟姉妹と被相続人の関係を明らかにし、なおかつ、先の順位の方が不在な事実を証明する必要があるからです。
このように、通常の相続での戸籍収集と比較して、兄弟姉妹が相続人となる相続では、戸籍収集の量が多く、手続きも煩雑となります。
手続きが煩雑になれば、相続手続き完了までに多大な時間がかかります。
従って、専門家に手続きを代行してもらった方が良いでしょう。
まとめ
被相続人の兄弟姉妹が相続人になるかは、ケースとしては少ないものの、状況によってはあり得ます。
兄弟姉妹は、その他の親族と比較すると、保有する権利に違いがあることを覚えておきましょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。