故人が持っていた衣服等はどうやって 相続税評価 するのか
厚木市で相続手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。
故人の遺産では衣服も含まれます。
遺産である以上、相続税計算のために、価額を評価する必要がありますが、それらを一点ずつ行なっていくのは、非常に大変ですし、現実的ではありません。
相続では、衣服などは一般的に経済的価値が低いので、個別に財産評価することはなく、「家財道具一式」としてまとめられます。(遺産分割の対象からも除外されます。)
衣服の中でも、ブランド品など経済的価値が高いものだけは、専門業者の査定等を用いて評価額とします。
衣服は家庭用財産
課税対象の相続財産は、預貯金や不動産はもちろん、事業用の機械設備や、著作権・特許権などの権利も対象になります。
それらに加え、「家庭用財産」も同じく相続税の課税対象です。
家庭用財産とは家庭内の一般動産です。具体的には下記のものがあります。
- 家電…パソコン・スマホ・テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンなど
家具…ソファー・テーブル・椅子・本棚・ベッドなど
衣類…洋服や着物・バッグ・靴など
美術品…絵画や骨董品など
貴金属等…貴金属・宝石・高級時計など
自動車…自動車・自動二輪車など
電話加入権…固定電話の契約形態に係るもの(現在では家庭用財産として評価します)
家庭にある動産は全て含むので、衣類はもちろん、家電、自動車、貴金属や骨董品の他に、書籍や書類等も該当します。
これらのものは、相続税のくくりで言えば、一般的に経済的価値が低いかどうかで分けられます。
自動車や貴金属等は客観的に経済的価値のあるものなので、専門業者に査定してもらって、個別に財産評価をする必要があります。
逆に衣類や家電などは5万円以下の評価になることが大半ですので、「家財道具一式」としてまとめて評価をするケースが多いです。
家庭用財産の評価方法
(1)原則的な評価方法
相続開始時の時価を調べます。
類似している家庭用財産の売買実例価額や、同財産を取り扱う業者や専門家の意見を参考価格とします。
具体的には中古品価格をインターネットで調べるか、買い取り業者に査定価格を出してもらいます。
(2)特例的な評価方法
前述での価格が不明な場合は、新品の価格から、相続開始日までに下がった価格を差し引いて計算します。
価値が下がった金額の基準は、法定耐用年数に基づく減価償却費の累計額です。
家財一式はいくらぐらいになるのか
前述した通り、衣類や家電は1個単位の評価額が安くなります。
ブランド品であっても、5万円を超えるものはそんなに多くないでしょう。
よって、個別に価格を算出していくと、非常に手間がかかります。
故人が大量に衣服を持っていた場合は、相続税申告に間に合わなくなってしまいますから、通常では「家財一式」として概算的に評価します。
民法においても、1個もしくは1組の価額が5万円以下のものについては、一括計上して良いことになっています。
(5万円を超えそうな超高級品だけは個別に評価した方が良いでしょう。)
なお、一般的に家財一式は10万円程度で計上されるケースが多いです。
1人暮らしでつつましく生活している場合は5万円以下でも良いですし、高級家具を多く揃えていた場合であれば多めに申告します。
家庭用財産をゼロで申告する場合
家庭によっては、電化製品や家具を家族が購入し、車の名義も家族のものにしている場合があります。
そうした理由から、家庭用財産を0円申告する方もいますが、見落としがあれば税務署から指摘が入ります。
国税局が公表している『相続税申告のチェックリスト』には家庭用財産の計上漏れに関する項目があり、家庭用財産の評価を軽視していないことがわかります。
そもそも、故人が所有していた家電や衣類が一つもないということも珍しいので、ゼロ申告せずに「とりあえず」計上しておいた方が安心とも言えます。
まとめ
相続では故人の衣服は、「家財一式」として他の家庭財産とまとめて計上されます。
一式の額はケースによって分かれますが、10万円程度が多く、それほど大きな金額にはなりません。
ただし、計上せずに処分等をしてしまうと、財産隠しと判断されることにもなります。
税務署から指摘があれば、ペナルティとして過少申告加算税を納付しなければいけません。
たとえ少額でも、きっちりと申告書に載せて申告を行いましょう。
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1960年東京生まれ 早稲田大学商学部卒業
1989年税理士登録
相続手続きについての執筆活動もしているエキスパート。
複数の事務所勤務を経験後、1995年厚木市に税理士事務所開業。2015年法人設立、代表就任。
税務や会計にとどまらず、3C(カウンセリング、コーチング、コンサルティング)のスキルを使って、お客様が幸せに成功するお手伝いをしています。
■著書
「儲かる社長がやっている30のこと」(幻冬舎)
■執筆協力
「相続のお金と手続きこれだけ知っていれば安心です」(あさ出版)
「事業の引き継ぎ方と資産の残し方ポイント46」(あさ出版)
その他多数。