厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。

 


 

厚木市や伊勢原市、海老名市周辺には、豊かな自然とともに昔からの農地が多く残っています。「親が亡くなり、実家と一緒に畑(農地)も相続することになった」というご相談は、この地域にお住まいの方から非常によく寄せられます。「自分はサラリーマンで農業を継ぐつもりはないし、とりあえずそのままにしておこう」「農地なんて価値が低いから、相続税はかからないだろう」と思う方も多いかもしれません。

【参考】
実家を相続したら遺品整理はどうする?片付け費用は相続税から控除できるのか
https://stepup-souzoku.com/2026/06/19/p2847/

しかし、農地の相続は一般的な宅地(家が建っている土地)とは大きく異なるルールがあり、放置していると思わぬトラブルや高額な税金が発生するリスクがあります。いざという時に慌てないために知っておくことが大切です。今回は、農地を相続した際に必要な手続きや、知っておくべき相続税の注意点について専門家の視点から分かりやすく解説します。

 

農地を相続したら、まず「農業委員会」への届出(名義変更)が必要

まず大前提として、日本の法律(農地法)では、日本の食料生産の基盤である農地を守るため、農地の取り扱いが非常に厳しく制限されています。

農地を相続した場合は、名義変更(相続登記)を行うだけでなく、「亡くなったことを知った日から10ヶ月以内」に、その農地がある市町村の「農業委員会」へ届出をしなければなりません。もし、この届出を正当な理由なく怠ったり、虚偽の届出をしたりすると、10万円以下の過料(ペナルティ)を科される怖れがあるため注意が必要です。

【参考】
農地法第3条の3第1項の規定による届出(農地を相続等により取得した場合の届出)|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/nouti/kihon/k_haitou/

 

農地は勝手に売却したり家を建てたりできない?

「農業をやらないから、すぐに売って現金で分けよう」「駐車場やアパートにして活用しよう」と思われがちですが、実はそう簡単にはいきません。農地を「農地以外のもの(宅地や駐車場など)」に変更すること(農地転用)や、農地のまま第三者に売却・貸与するには、農業委員会の厳しい許可が必要になります。

特に「市街化調整区域」と呼ばれるエリアにある農地は、原則として家を建てることができないなど、取り扱いが非常に複雑です。「誰が農地を引き継ぐのか」という遺産分割協議を進める前に、まずはその農地がどのような規制を受けているかを確認することが重要です。

 

農地の相続税は高額になりやすい?評価方法の基本

「うちは農家といっても小さな畑だし、相続税なんて関係ない」というケースも珍しくありませんが、ここにも大きな落とし穴があります。相続税の計算上、農地は一律の評価額ではなく、その農地がある場所(立地)によって以下の4つに分類され、評価方法が大きく変わります。

  • 純農地・中間農地:宅地への転用が難しいエリアの農地。評価額は比較的低くなります。
  • 市街地周辺農地・市街地農地:宅地への転用が許可されやすい、市街地にある農地。

厚木市や海老名市など、駅からのアクセスが良く周辺に住宅が立ち並んでいるようなエリアの畑は、「市街地農地(または市街地周辺農地)」に分類されることがよくあります。この場合、「もしこの農地を宅地(住宅地)として造成したら、いくらになるか」という基準(宅地比準方式)で計算されるため、一般の方が想像している以上に評価額が高騰し、多額の相続税がかかるケースが多々あります。

【参考】
我が家は対象?厚木市周辺の一般的な家庭でも相続税がかかる「基礎控除」のボーダーライン
https://stepup-souzoku.com/2026/07/17/2/

 

農業を続けるなら知っておきたい「農地の納税猶予の特例」

「評価額が高くて相続税が払えない。でも、代々受け継いできた畑を守って農業を続けたい」という方のために、国は強力な救済措置を用意しています。それが「農地等の納税猶予の特例」です。

【参考】
No.4147農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例|国税庁
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4147.htm

これは、農業を引き継ぐ相続人が一定の条件を満たせば、農地にかかる相続税の大部分(または全額)の支払いを「猶予」してくれる制度です。さらに、その相続人が亡くなるまで農業を続ければ、猶予されていた税金は最終的に「免除」されます。

 

適用条件が厳しいため、事前のシミュレーションが必須

この特例は非常に魅力的ですが、利用するための条件が非常に厳格に定められています。「農業を生涯続けること」が大前提となるため、もし途中で農業をやめてしまったり、農地を売却・転用してしまったりすると、猶予されていた高額な相続税に加えて、利息にあたる「利子税」まで一括で支払わなければならないという非常に重いリスクを背負うことになります。

将来、ご自身が体力的に農業を続けられなくなった時のことや、次の世代(お子様など)がどうするかまでを見据えて、この特例を利用すべきかどうかを慎重に判断しなければなりません。

 

まとめ:複雑な農地の相続手続き・税金対策は地元の税理士にご相談を

農地の相続は、一般的な遺産相続に比べて「農業委員会への届出」や「複雑な土地の評価」「納税猶予の判断」など、非常に専門的な知識が求められます。ご自身だけで判断して手続きを進めると、後から「こんなに相続税がかかると思わなかった」「特例が打ち切られて多額の税金を請求された」といったトラブルになりかねません。

「実家の畑をどう相続すればいいか分からない」「相続税がかかるのかシミュレーションしてほしい」と少しでも不安に思われたら、一人で悩まず、地元の事情に明るい相続専門の税理士にご相談ください。

厚木相続相談センターでは、煩雑な戸籍集めから名義変更、農地の評価、そして納税猶予を活用すべきかどうかの的確なアドバイスまで、親身になってサポートいたします。早めに専門家を頼ることをお勧めいたします。まずはお気軽に、当センターの初回無料相談をご利用ください。

 


 

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よくある質問

Q:農業をやらないのに農地を相続した場合、放置しておくとどうなりますか?

A:農業委員会への届出を怠ると10万円以下の過料リスクがあるほか、管理不全で雑草・害虫など近隣トラブルに発展します。さらに固定資産税の負担が継続し、相続登記義務化(3年以内)の違反ペナルティ(10万円以下の過料)も発生するため早めの対応が必要です。

 

Q:相続した農地をすぐに売却したり、駐車場やアパートに活用することはできますか?

A:自由にはできません。農地を売却したり宅地や駐車場に変更(農地転用)するには、農業委員会の許可または届出が必要です。特に「市街化調整区域」にある農地は転用許可のハードルが非常に高いため、事前に行政書士や税理士などの専門家へ相談することをお勧めします。

 

Q:農地の納税猶予の特例を使っていた農地を、途中で売ったり貸したりした場合はどうなりますか?

A:原則として納税猶予が打ち切られ、猶予されていた相続税の全額と、加算される利息にあたる「利子税」を一括で納付しなければなりません。ただし、農地中間管理機構(農地バンク)へ貸し出すなど一定の例外規定もあるため、手放す前に必ず税理士へご相談ください。