厚木市で相続の手続支援をしている、税理士・相続手続相談士の小川正人です。
相続の際に必要な戸籍集めや口座解約、各種名義変更をお手伝いさせていただいております。

 


 

疎遠だったご両親がお亡くなりになり、悲しみに暮れる間もなく、突然クレジットカード会社や消費者金融から督促状が届いて不安と悩む方も多いのではないでしょうか。「親が借金をしていたなんて知らなかった」「自分に支払い義務はあるのだろうか」とパニックになってしまうかもしれません。

結論から言えば、亡くなった方(被相続人)に借金があった場合でも、「相続放棄」という法的な手続きをとることで、借金を背負わずに済む方法があります。しかし、この手続きには厳格な期限とルールが定められており、いざという時に慌てないために知っておくことが大切です。

今回は、親の借金が発覚した際の「相続放棄」の仕組みや、絶対にやってはいけない注意点について分かりやすく解説します。

 

まず大前提として、相続は「プラスの財産」だけでなく「借金」も引き継ぐ

相続というと、実家の不動産や銀行の預貯金といった「プラスの財産」をもらうことばかりをイメージすると思われがちですが、実はそうではありません。民法では、亡くなった方の財産に関する一切の権利や義務を引き継ぐと定められています。

つまり、住宅ローンや消費者金融からの借入、未払いの税金や医療費といった「マイナスの財産(借金)」も、原則として法定相続人がすべて引き継がなければならないのです。

【参考】
我が家は対象?厚木市周辺の一般的な家庭でも相続税がかかる「基礎控除」のボーダーライン
https://stepup-souzoku.com/2026/07/17/2/

 

借金から逃れるための「相続放棄」とは?期限は原則「3ヶ月以内」

「親の借金を代わりに返済する余裕なんてない」という場合、家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを行うのが一般的です。

相続放棄とは、「私はプラスの財産もマイナスの財産も、一切の財産を相続しません」と法的に宣言することです。これが認められれば、初めから相続人ではなかったことになり、借金の返済義務から完全に逃れることができます。

しかし、ここには非常に重要な期限のルールがあります。相続放棄は、「自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申し立てをしなければなりません。この3ヶ月の期間を「熟慮期間」と呼びます。「どうしよう」と迷っているうちに3ヶ月を過ぎてしまうと、自動的にプラスもマイナスの財産もすべて引き継ぐ(単純承認)ことになってしまうというリスクがあります。督促状が届いたら、一刻も早く財産調査と手続きの準備を始める必要があります。

※3ヶ月の熟慮期間内に財産調査が終わらない場合は、家庭裁判所へ「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立てることで、期間を延長してもらえる手続きがあります。期限ギリギリで焦る前に伸長の申立ても検討しましょう。

【参考】
相続の放棄の申述|裁判所
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html

 

意外な落とし穴!実家の片付けや口座解約をすると相続放棄できなくなる怖れも

相続放棄を検討する際、最も注意が必要なのが「単純承認(たんじゅんしょうにん)」とみなされてしまう行為です。3ヶ月の期限内であっても、以下のような行動をとってしまうと、「遺産を自分のものとして扱った」と判断され、相続放棄ができなくなってしまう怖れがあります。

  • 遺産の処分:親の預貯金を引き出して自分の生活費に使ってしまった。
  • 名義変更:実家の不動産や車の名義を自分に変えて売却した。
  • 形見分けの限度を超えた遺品整理:経済的価値のある親の貴金属や骨董品を捨てたり、売ったりしてしまった。

【参考】
遠方の相続人がいる・連絡が取れない家族がスムーズに口座解約や名義変更を進める方法
https://stepup-souzoku.com/2026/07/03/1/

「よかれと思って実家を片付けてしまった」「親の口座から葬儀代を引き出してしまった」というケースも珍しくありません。借金があるかもしれないと分かった時点で、親の財産には一切手を付けず、まずは専門家に相談してください。

 

相続放棄をすると「次の相続人」へ借金が移るため連絡が必要

もう一つ忘れてはいけないのが、あなたが相続放棄をすると、借金が消滅するわけではなく「次の順位の相続人」に権利と義務が移るという点です。

たとえば、第1順位である「子ども(あなた)」が全員相続放棄をすると、次は第2順位である「親(故人の父母)」へ、親が亡くなっていれば第3順位の「兄弟姉妹(故人の兄弟姉妹)」へと相続権が移ります。「自分が放棄して安心していたら、事情を知らない叔父や叔母のところに突然借金の督促がいってしまい、親族間で大きなトラブル(争族)になってしまった」という事態は避けなければなりません。

相続放棄をする際は、次の順位となる親族へ事前に「放棄をするので督促がいくかもしれない。あなたも放棄の手続きをしてほしい」と連絡しておくのがマナーであり、争族を防ぐ重要なポイントです。

※なお、全員が相続放棄して相続人が誰もいなくなった場合でも、不動産等の管理責任(民法第940条)が残る場合があります。管理責任を完全に免れるためには「相続財産清算人」の選任を家庭裁判所に申し立てる必要がある点も覚えておきましょう。

 

まとめ:借金が絡む複雑な戸籍集めや手続きは、早めに専門家へ

親の借金が発覚した場合、3ヶ月という短い期間の中で、戸籍集め、財産と借金の全体像の調査、家庭裁判所への申立てといった複雑な手続きを完了させなければなりません。これを一般の方がお仕事をしながら一人で進めるのは、非常に困難と言えます。

「親に借金があるかどうかわからない」「すでに実家を少し片付けてしまったけれど放棄できるだろうか」と少しでも判断が難しい場合は一人で悩まず、相続専門の税理士にご相談ください。

厚木相続相談センターでは、司法書士や弁護士との強力なネットワークを活かし、迅速な財産調査から相続放棄の手続きまで、あなたをトラブルからお守りするサポートを一貫して行います。期限が迫っている場合は、早めに専門家を頼ることをお勧めいたします。まずはお気軽に、当センターの初回無料相談をご利用ください。

 


 

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よくある質問

Q:親が亡くなってから3ヶ月を過ぎて督促状が来ました。もう相続放棄できませんか?

A:諦める必要はありません。最高裁の判例により「被相続人に借金がないと信じるに足る相当な理由があった場合」は、借金の存在を知った日から3ヶ月以内の申し立てであれば認められる可能性があります。個別判断となるため速やかに専門家へご相談ください。

 

Q:親の葬儀費用を、親の口座から出したり遺産から支払うと相続放棄できなくなりますか?

A:身の丈に合った一般的な葬儀費用であれば、最高裁判例上「保存行為・一般道徳的行為」として単純承認にあたらないとされるケースが多いです。ただし高額すぎる葬儀や個人の生活費への流用は放棄不能のリスクがあるため、できれば自分の資金で立替払いするのが安全です。

 

Q:プラスの財産で借金を返せるか分からない場合「限定承認」という方法は使えますか?

A:使えますがハードルが高いです。限定承認は「引き継いだプラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産(借金)を返す」手続きですが、相続人全員の共同申述が必要で手続きも非常に複雑です。全員の同意が得られない場合は、相続放棄を選択するのが一般的です。